こちらは相談屋です。 第7話 鬼の酒宴


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<登場人物>
久世 萌(くぜ もゆる):
 相談屋を営む少年。見た目は実年齢よりも幼く、名前や外見から性別も間違われがち。
 普段は怠惰に生活しており、生活能力はあまりない引きこもり。
 余裕ゆえにまったりした性格と古風な口調で騒ぐのが苦手。

鬼灯 緋凪(ほおずき ひな):
 齢18歳の絶世の美男で、元人間。黒髪と赤い眼を持つ。
 穏やかで優しく押しに弱い性格だが、妖力が枯渇すると静かな狂気を見せる。
 特区に慣れるまで、相談屋で働くことになった。

大江山 京(おおえやま きょう):
 酒好きの絶世の美男で、正体は妖怪「酒呑童子(しゅてんどうじ)」。
 表向きは酒屋を営んでおり、常に杯と徳利を腰に下げている。
 振る舞いに傲慢や慢心が見られる反面、義理を忘れない精神や同胞思いの一面を持つ。




!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



緋凪【万(よろず)商店街、通称『特区(とっく)』。
   専門業を営む店が多く並び、大型スーパーやコンビニ、高層ビル等々、
   現代における都会的な建築物が存在しない。
   全体的に古めかしい外観を持つ店ばかりで、特区内の高低差も殆どない。
   茨木童子の一件から数日後、俺は萌さんに連れられ、
   相談屋からかなり離れた山奥の方へ足を運んでいた。】


京「『第7話 鬼の酒宴』」


[拾参−参拾弐区、山奥。遠目に中央区の様子が見える。]

緋凪【今回の遠出の理由は、鬼である俺の状態を安定させるため。
   萌さんの知り合いだという鬼が営む店へと向かっていた。
   特区内の山奥にあるその店は、緩やかで長い坂道の先に佇んでいた。
   看板には、『酒屋(さかや)』と書かれている。】

萌「緋凪、貴殿には師が必要だ。
   鬼の力を制御するためにも、先人の教えを乞うことにしよう。」

緋凪「!・・・ということは、ここに鬼が?」

萌「あぁ。それも、貴殿も良く知る鬼がいる。」

緋凪【萌さんは、店の扉を静かに開いた。
   すると、中からは賑やかな様子が聞こえてきた。】

京「ッハッハッハッハ!飲めや歌え、宵の口まで酒も尽きはしない!ハッハッハッハ!」

緋凪【そこには、楽器や徳利を持った美女たちに囲まれた男性が、
   杯(さかずき)を片手に愉快そうに笑う姿があった。
   絶世の美男(びなん)とも言える容姿を持つその人がこちらに気が付くと、
   杯を持っていない方の手を軽く上げ、楽器の演奏を止めさせた。
   そして、やや嬉しそうな笑みを浮かべ、口を開いた。】

京「これはこれは、殆ど隠居の貴様がよくぞここまで足を運んだものよのぅ。」

萌「フッ、貴殿こそ毎日飽きもせず酒宴とは、愉快なものだ。」

京「ようやく我が物となる決心がついたか?」

萌「否、頼みの相談があって参った次第。手土産も持ってきた。」

京「・・・ふんっ、濁酒(どぶろく)か。たまにはいいだろう。
   (周囲に向けて)杯をここへ、客人だ。貴様らは下がってよい。」

緋凪【やや傲慢で、自分に自信があり、その通り実力も権威も持ち合わせている。
   この人からは、そんな印象を強く受けた。
   萌さんに対して敬意を表す人は今までに何人も見てきたけれど、
   この人は決して下手(したて)に出ようとせず、
   あまつさえ萌さんを手中に収めようとしている。
   しかし、それが叶わないとわかるや、深追いをすることなく、
   徳利を手に取って話題を切り替えた。】

京「せっかく来たついでだ、一杯付き合ってもらおう。そっちの貴様もだ、杯を持て」

緋凪「へ?あ、えっと、俺は・・・・・」

京「(食い気味に)なぁに、神酒(みき)の1つや2つ、成人しておらずとも口にしておけ。
   それとも、我の酒が飲めぬと?」

緋凪「い、いえ!あの・・・いただきます。」

京「ふん、それでよい。」

緋凪【用意された杯を慌てて持つと、萌さんの持ってきた徳利からお酒が注がれた。
   俺の知っている日本酒とは違って、白く濁った液体が、
   鮮やかな赤い杯を満たしていく。】

京「萌の酒を振る舞うのはいささか口惜しいが、たまの同胞だ。じっくり味わって飲めよ?」

緋凪【恐る恐る杯に口をつけ、酒をあおる。
   少しずつ喉へ流し込まれるそれに、ほのかな甘みと焼けるような感覚がした。
   飲酒は初めてだったけれど、何とか飲み干すことができた。
   杯が空(から)になったのを確認したその人は納得の笑みを浮かべ、
   自らの杯に酒を注ぎつつ、再び口を開く。】

京「さて、改めて貴様の用件とやらを聞こうではないか。
   我(われ)が同胞へ酒を注ぐことすら予期していたのだろう?
   わざわざ弱い酒を作り、此奴(こやつ)の酔いを抑えたということは、
   言わずもがな此奴が理由と見えるが?」

萌「人から鬼となりし貴殿にこそ、お頼み申したい。
   この者はまだ己の力を制御できていない。
   妖力と生気の区別がついていないゆえ、消耗が激しい。
   本来ならば段階を踏んで覚醒してゆくはずの力は、
   先日、とある事情により暴発を余儀なくされた。
   そこで、貴殿に覚醒の手助けをしてほしい。」

緋凪【妖力と生気の区別がついていない・・・・・だから不安定な鬼。
   萌さん自らが付き添いに出向くということは、それだけ緊急性が高いということ。
   相談屋に勤めて以来、なんとなくそうであるとわかってきた。】

京「・・・ふんっ、我に子守をしろということか。」

萌「小生では生ぬるい。教えを与えるは、同じ性質を持つ妖であるほうがよい。」

京「(緋凪の方を見て)・・・貴様、名は?」

緋凪「っ、は、はい、鬼灯 緋凪です。」

京「緋凪?フッ、名前までひよっこの雛鳥か。良き名をもらったものよ。」

緋凪「?」

萌「緋凪、此奴の名は『大江山 京』。またの名を、『酒呑童子(しゅてんどうじ)』という。」

緋凪「おおえやま、しゅてんど・・・・・えぇ!?」

萌「ククッ、名は知っておろう。貴殿とて、その名で売られてきたのだからな。」

京「何?」

萌「人より鬼となった者。恋文の念を受け、親に売られてここへ来た。」

京「・・・・・。」

緋凪【萌さんが俺の事情を簡単に説明すると、京さんの顔から笑みが消えた。
   特区の内外を問わず有名な鬼が、今目の前にいる。
   それだけでも恐縮してしまうというのに、
   『大江山』と名乗っていることから、茨木童子が言っていた頭領とはおそらく・・・】

京「・・・萌。このような小童(こわっぱ)の面倒を、なぜ我に押しつけようとした?」

萌「先ほど申した通りだが?」

京「そうではない。我が拒絶できぬ理由があるのだろう?そちらを聞いている。」

萌「ククッ、ぬかりないな。」

京「焦らすな、喰らうぞ?」

萌「フッ。貴殿の部下であった鬼が、若い女子(おなご)の血を欲した。
   その過程で、小生らの大切な友人が深手を負ってな。」

京「・・・・・茨木童子(いばらきどうじ)か。ふんっ、勝手なことを。」

萌「元をたどれば、貴殿の不始末とも言える。
   小生が貴殿を復活させた後、彼奴(きゃつ)と接触したはずだが?」

京「あぁそうだ。我の不始末に違いはない。
   ・・・わざわざ理由を付けずとも、我が貴様に逆らえるとでも思ったか?」

萌「ククッ、否。」

緋凪【この二人、仲がいいのか悪いのか、いまいちハッキリとしない。
   萌さんはいつも通り愉快そうなのに、京さんは愉快と苛立ちを交錯させている。
   すると、杯の酒を飲み干した京さんが立ち上がり、
   座っている俺の前へ来た。
   見下ろす視線に威圧を感じ、俺の体は硬直する。】

京「少し痛いぞ?」

緋凪「え・・・・・ぅぐっ!?ぁ・・・ぁあ・・・・・」

京「耐えろ。この程度、まだ序の口だぞ?」

緋凪【不意に屈んだかと思えば、俺の腹部へ掌底打ちを繰り出された。
   しかし、俺を襲ったのは腹部を殴られた痛みではなく、
   強烈な喉の渇きだった。
   視界がグラグラする、少しでも気を抜くと意識が飛んでしまいそうだ。】

萌「荒療治だが、致し方ない。」

緋凪【萌さんの声・・・・・甘い香りがする。
   あれがほしい、甘い、萌さんの・・・!】

京「貴様は贅沢だ。萌の妖力をさぞじっくりと味わってきたことだろう。
   だが、本来妖力の欠損程度で、良質な妖力を分け与えてもらうものではない。
   その勘違いを、根底から覚え直せ。」

緋凪【呼吸が荒くなる、妖力の不足した身体が、俺に飢えを訴える。
   けれど、ここで理性を飛ばしてしまえば、また萌さんを襲ってしまう。
   それは・・・それだけは・・・・・!】

萌「京」

京「あぁ、一度休め。」

緋凪「っはぁ!はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・!」

京「意識を保っていたその根性は褒めてやろう。初めてにしては上出来だ。」

緋凪【京さんの手が離れると、あれだけ苦しかった飢えが嘘のように消え去った。
   俺は水を得た魚のように必死に呼吸を繰り返し、
   肩を上下させて息を吸い込み、吐き出す。
   何が起こったのか全く理解できずにいると、
   萌さんが俺の背中をさすりながら説明してくれた。】

萌「緋凪の妖力を一時的に奪ったのだ、貴殿を無理やり飢えさせるためにな。
   一度京の腕に緋凪の妖力を移動させ、また戻してやった。
   唐突ではあったが、ただの乱暴ではない。」

緋凪「はぁ、はぁ・・・・・俺、また、萌さんを襲おうとして・・・・・」

京「貴様は、無機物を祖とする付喪神とは違う。
   妖力の枯渇が直接生命の危機になるわけではない。
   小腹が空(す)いたくらいで正気を失うな、小童が。」

緋凪【これをまさに、スパルタというのだろうと思った。
   まだ呼吸が乱れている俺に、京さんは追い打ちをかけるように叱責する。
   でも、紡がれた言葉が正論であると納得することは、なぜか容易だった。
   だいぶ落ち着いてきた頃、萌さんがいつも通りの笑みを浮かべたまま口を開いた。】

萌「付喪神は、その殆どが無機物に宿る念より生まれしモノ。
   彼らにとって、妖力とはすなわち生命力にも代わる糧といえよう。
   反して貴殿らのような鬼は無機物が由来ではない。
   元来生き物として存在している貴殿らは、妖力が枯渇しようと容易く死にはしない。
   最も簡単な言葉で表すならば、体力と生命力は違うモノ、ということだ。」

緋凪「つまり俺は、その区別ができて、いないんですね・・・・・」

萌「言葉や理念は、賢い貴殿のことだ、すぐに理解できよう。
   ただ、問題は感覚、貴殿の身体だ。
   頭でいくら理解しようと、身体が言うことを聞かねば意味がない。
   小生には体感まで教えることはできない。
   己の身に起こる不具合は、己が認識するもの。
   緋凪、これは貴殿が少しでも長く生きるための術(すべ)であるゆえ、
   乗り越えねばならぬ試練といえる。」

緋凪「・・・・・・わかりました。いつまでも、萌さんに頼ってばかりいられません。」

萌「うむ、やる気はあるようだな。やれ幸い。」

緋凪【今までの俺は、本当に甘やかされていたんだと思う。
   これは萌さんなりの厳しさで、俺が変わるための数少ない機会。
   自分でどうにかしなければ、絶対に次は・・・・・!」

萌「京、もう一度。」

京「ふんっ、言われずとも・・・・・ふっ!」

緋凪「っぐ!?・・・くぅ・・・・・」

京「その状態で力を引き出してみろ。鬼の力自体は、妖力など必要ない。」

緋凪「ぁ・・・ぁぐ・・・・・!」

京「堪(こら)えるだけでは何も変わらん、その間に貴様の大事なものはいくらでも奪われる。
   たとえば・・・・・萌。」

緋凪「!?」

京「貴様程度の小童、我の前には障壁にもならん。
   白く柔らかいその肌に喰らいつき貪るも良し、
   内側からジワリジワリと味わうもまた一興。
   萌の力など関係ない、貴様が動かぬゆえに萌へ危害が及ぶのだ。」

緋凪「もゆ、るさん・・・・・!」

京「どうした?もっと抗ってみせよ。
   よもや人間ごときの力で、我を退けられるとは思うまい!」

緋凪【俺のグラつく視界は、京さんの目つきだけはハッキリ捉えていた。
   萌さんに危害が及ぶと言われた瞬間、
   手放しかけていた意識が少し戻ってきた。
   俺の腹部に拳を入れた京さんの左腕を掴む。
   ダメだ、上手く力が入らない。
   相手は片手、それも、右手には杯を持っている状態なのに。】

萌「京」

京「否、まだだ。今まで散々甘やかしてきたツケと思え。」

萌「・・・あいわかった。」

緋凪「ぁ・・・はぁ・・・・・ぅぐ・・・・・!」

京「ハッハッハッハッハッ!萌の妖力を喰らっていながらこの程度か!
   我の杯に入った酒を波立たせることすらできぬとは、笑止千万!
   同胞ゆえにと情けをかけたつもりであったが・・・・・貴様には失望した。」

緋凪【すると、一度殴られただけだった腹部に、京さんの拳がめり込んでくる。
   強すぎる力を押し返すこともできず、内臓が悲鳴を上げる。」

京「元は所詮人間、柔らかいものだ。」

緋凪「ぁが、ぁぁああああああああああ・・・・・・!!!」

京「手に入れた幸せも守れずに逝くか、哀れな小童よ!ふっ、はははははははは!!!」

緋凪【嫌な笑い声が耳を劈き、俺の意識をハッキリとさせていく。
   この人を、止めなければ。
   萌さんを襲わせるわけには、いかない!】

京「ん?どうした、もう事切れたか」

緋凪「(さえぎるように)ぅあああああああ!!!」

京「っ!?」

萌「緋凪!」

緋凪「はぁ・・・はぁ・・・・・っはぁ・・・!」

京「・・・・・ふんっ、やるではないか。」

緋凪【我に返ると、俺は京さんの眼前に拳を突き出していた。
   その光景を認識すると同時に、カランと音を立てて、
   京さんの持っていた杯の落ちる音がした。
   俺は、いったい・・・何を・・・・・?】

萌「ククッ、一本取られたか。」

京「うるさい。おかげでせっかくの酒をこぼしてしまった。」

萌「『油断大敵』『窮鼠猫を噛む』貴殿はネズミを追い詰めたはずの猫だったな。」

京「・・・・・ふんっ」

緋凪「あ、あの、その、俺・・・すみません・・・・・・」

萌「何を謝っている?それより、飢えはどうだ?」

緋凪「え?あ、そういえば・・・・・少し、空腹感を感じるくらい、です。」

萌「ようやっと覚えたか。物覚えが早くて助かった。」

緋凪【安堵の笑みを浮かべる萌さんを見て、俺も思わず安心感を覚える。
   一方で、不機嫌そうな京さんは落とした杯を拾い、
   最初に座っていた場所にドカッと座り直し、再び酒を注ぎ始めた。】

京「己が意志を以て力を発揮したのは、此度が初めてだったようだな。
   ゆえに、身体が妖力と生気の違いを理解した。
   その空腹感は妖力の欠損によるもの。
   現に我は、貴様に妖力を返しておらぬ」

緋凪「えっ?」

京「ふん、青臭い妖力だ、酒の肴にもならん(杯の酒をあおる)」

萌「濁酒は悪酔いしやすい。たまには控えたほうが良いぞ?」

京「ふんっ、このような弱い酒では酔いたくとも酔えぬ。
   ・・・貴様が酒の肴とあらば、ほろ酔いくらいはできそうだがな。」

萌「ふむ、さすがに血肉は分けてやれん。これでも痛いのは苦手だ。」

京「痛みは伴わん。我に気づかれぬと思い込んでいる貴様が、実に腹立たしいだけ、だ!」

萌「っ、んむ!?」

緋凪「もも、萌さん!!!」

萌「ん・・・・・っふ、ぁ・・・んん・・・・・」

緋凪【不意に萌さんを引き寄せた京さんは、強引にその唇を奪って見せた。
   人前でもお構いなく萌さんを貪るその様子に、
   俺は恥ずかしさのあまり硬直してしまう。
   萌さんも余計な抵抗をしておらず、かといって完全に許している様子はない。
   ひとしきり口を吸ったらしい京さんがやっと離れた頃には、
   萌さんは京さんの腕に力なく寄りかかっていた。】

萌「ふぅ・・・やれやれ、やはり貴殿との接吻は苦手だ。酒の味がする。」

京「自業自得だ。貴様に蘇生された我が、貴様の負傷に気づかぬと思うてか。」

萌「治ったばかりゆえ、血の匂いが残っていたか。
   今はもう塞がっている、痛みもない、心配はいらぬ。」

京「ふんっ、心配などと。貴様への恩を忘れられぬだけだ。」

萌「然様(さよう)か。ん?どうした緋凪?」

緋凪「へ!?なな、何が、ですか?」

萌「なぜ貴殿が顔を赤らめているのか」

緋凪「そ、そそそ、それ、は・・・あの・・・・・」

京「我と萌の接吻を見て恥じらうか。
   初心(うぶ)なやつよのぅ、ハッハッハッハッハッ!」

緋凪【京さんの高らかな笑い声が、俺に絡みついていた緊張を解いていく。
   掴みどころのない、少し傲慢でお酒が好きな強い鬼。
   特区の外で『鬼』というと、悪さばかりする、
   先日会った茨木童子(いばらきどうじ)のようなイメージが強かった。
   けれど、京さんは・・・・・】

京「おい小童。」

緋凪「っ、はい」

京「今掴んだ感覚、忘れるなよ?
   『驕れることなかれ』、理由なき慢心こそ己の破滅を招く。
   『されど恐れることなかれ』、己を信じずして力は操れない。」

緋凪「・・・・・はい。」

萌「ふっ、今日(こんにち)は随分饒舌だな、京。
   たまの同胞がそれほど愛しかったと見える。」

京「うるさい。先ほどは味見程度で済ませてやったが、
   次は腰を抜くまで犯してやろうか。」

萌「それは極めて困る。小生は中身こそ老輩だが、
   見た目はただの子供同然、貴殿とて二度も首を切られたくはないだろう?」

京「(緋凪のほうを見て)・・・・・緋凪だったか。
   貴様の名は覚えといてやる、次は強い酒を持ってこい。」

緋凪「えっ?」

萌「やれやれ、機嫌を損ねるのが早いな。」

京「うるさい。貴様の頼みは聞いてやった、さっさと失せろ。」

萌「あいわかった。小生とて喰われたくはない、急ぎ立ち去ろう。
   緋凪、すまないがおぶってくれ。酒のせいで足がおぼつかぬゆえ。」

緋凪「は、はい。っしょ、と。」

萌「ふぬ・・・やはり甘酒にするべきだったな。」

緋凪【酔いが回っているのか、クタクタになっている萌さんを背負い、
   酒屋の入り口付近まで行く。
   最後にお礼を言おうと振り返ると、京さんが見送りのためか、立ち上がっていた。】

京「『鬼に横道(おうどう)なし』。我より授けし教訓だ。ゆめゆめ忘れてくれるな。」

緋凪「っ?は、はい、覚えておきます。ありがとうございました。」

京「・・・・・ふんっ。」

緋凪【一礼して、俺と萌さんは酒屋をあとにした。
   『鬼にオウドウなし』。
   京さんは、最後に何を言いたかったんだろう?
   相談屋への帰り道に歩きながら考えていると、
   背中のほうから声が聞こえてきた。】

萌「『鬼に横道(おうどう)なし』、か。実に彼奴らしい教えだ。」

緋凪「ぁ、気になっていたんですけど、どういう意味なんですか?」

萌「横道(よこみち)と書いて、オウドウと読む。
   いかなる悪さをしようとも、嘘や裏切りといった卑怯を絶対に嫌う。
   鬼は道理に適わぬ行いはしないという意味だ。
   鬼となった貴殿が、人間のような非道な行いをせぬようにと、
   緋凪に教えを説いたつもりなのだろう。」

緋凪「へぇ・・・鬼って、悪というイメージが強かったので、意外です。」

萌「元来、鬼といえば目に見えぬもの、国を治める者にとっての邪魔者を指した。
   ゆえに山賊や厄介な人間を鬼と称し、悪者(わるもの)としてこれを退治したという。
   すなわち鬼とは、単に外道や妖怪を指した言葉ではないらしい。」

緋凪「なんだか、想像しづらいですね。鬼が、本当は悪者じゃなかったなんて。」

萌「悪の象徴たる鬼を一方的に責め立て、これを打ち倒す。
   緋凪は『桃から生まれた太郎』の話を知っているか?」

緋凪「はい、桃太郎のことですよね。
   桃太郎が大きくなった後、鬼を退治しに行く。
   子供のころから聞かされていた、有名な話です。」

萌「あれには、人々を困らせ、悪さをする鬼を退治しに行くとある。
   はてさて、鬼はどのような悪さをしたか?」

緋凪「ええっと・・・・・・あれ?そういえば、具体的には・・・・・」

萌「そういうことだ。真偽は定かではないがな。
   ゆえに、鬼の本質は悪いほうに捉えられてしまいやすい。」

緋凪【『鬼に横道なし』。
   どれだけ悪者と蔑まれても、決して人の道を外れてはならない。
   その言葉は、力を手に入れた俺への戒めに思えた。
   覚えていよう。
   喉が焼けるような、あの感覚と共に。】



萌「こちらは相談屋です。次回は、『第8話 蠱毒(こどく)と犬神』」

京「萌。酒を持ってくるのはいいが、如何せん徳利が小さすぎる。」

萌「酒を醸造して商(あきな)う貴殿とは違う。
   あまり量も作らぬゆえ、持ち運ぶのにちょうど良い。」

緋凪「京さんは、本当にお酒が好きなんですね。
   俺はまだ成人していないので、お酒の味はよくわかりませんが・・・」

京「ふんっ、酒という道楽は人も妖も相通じるものがある。
   萌の作る酒には、萌の妖力も込められるゆえ非常に美味だ。
   だが、あのように少量ではな。」

緋凪「あぁ、ええっと・・・・・」

萌「此度の事、『酒は天の美禄(びろく)』。
   美味なるモノは、少量であれ満足するものだ。」

京「貴様の妖力のようにな。」

緋凪「・・・・ハッ!?」



To be continued.





〜苺のタルトが食べたい(´・ω・`)〜
どうも、犯人です。
夏です・・・・・・いよいよ暑くなって参りましたorz
今年の目標は、扇風機の不使用!夜風で頑張る!←無理でした
果たして、道産子は夏に勝てるのか(勝てませんでした)
ただの人間どころか女性キャラすら登場してない今回ですが、よかったらどうぞ。
		






   
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