こちらは相談屋です。 第5話 神事仕るは


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<登場人物>
久世 萌(くぜ もゆる):
 相談屋を営む少年。見た目は実年齢よりも幼く、名前や外見から性別も間違われがち。
 普段は怠惰に生活しており、生活能力はあまりない引きこもり。
 余裕ゆえにまったりした性格と古風な口調で騒ぐのが苦手。

吉川 浅黄(よしかわ あさき):
 特区に住まう女子高生。いつもセーラー服姿で相談屋に通い詰めている。
 いいところのお嬢様だが、口調や嗜好面において庶民派を主張している。
 明るく元気で真っ直ぐな行動派の一般人。

鬼灯 緋凪(ほおずき ひな):
 齢18歳の絶世の美男で、元人間。黒髪と赤い眼を持つ。
 穏やかで優しく押しに弱い性格だが、妖力が枯渇すると静かな狂気を見せる。
 特区に慣れるまで、相談屋で働くことになった。

吉備津 温羅(きびつ うら):
 巫女服を着た女性のような青年だが、正体は妖怪「鳴釜(なりかま)」。
 声や喋り方は男っぽい反面わかりやすいツンデレで、神主のことが好き。
 音を聞き分けて物事の吉凶を占うことが出来る。

神主(かんぬし):
 占い屋を営む主人で、元は神社の息子だった人間。
 面倒見のいいお兄さん気質で、悪戯心も下心もなく純粋に温羅を愛している。
 高い霊力を持つが単独で術を使うことはできず、占いはもっぱら温羅の補助専門。



※タイトルは「しんじつかまつるは」と読みます
 「」:通常セリフ/【】:ナレorモノローグ
 劇中に出てくる難読単語の振り仮名集はこちら

!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



緋凪【万(よろず)商店街、通称『特区(とっく)』。
   専門業を営む店が多く並び、大型スーパーやコンビニ、高層ビル等々、
   現代における都会的な建築物が存在しない。
   全体的に古めかしい外観を持つ店ばかりで、特区内の高低差も殆どない。
   今日は珍しく、萌さんと外出することになった。】


浅黄「『第5話 神事仕るは』」


[万商店街・参−拾捌区。萌と緋凪が歩いている。]

緋凪【万商店街、参−拾捌(さんのじゅうはち)区。
   相談屋からやや離れたこの区画には、妖らしい妖が多く感じられる。
   今まで会った妖は皆、人と変わらない姿だったし、本来の姿を晒していると言えば、
   眠っていることの多い石灯籠の炬炉(ころ)さんだけだったので、
   珍しい光景によく視線が奪われた。】

萌「フッ、楽しいか?」

緋凪「え?」

萌「頭があまり前を向いておらぬゆえ、さぞ愉快なものかと思ってな。」

緋凪「あ、ええと・・・はい。
   妖が気兼ねなく道を歩いていたり、空を飛んでいたりするので、驚きました。」

萌「特区ではよく見る光景だ。だが前を見ておらぬと、危ういのは常(つね)なれば。」

緋凪「え・・・ぅわ!?」

浅黄「ほぁっ!?て、緋凪ちゃん!」

緋凪「あ、浅黄さん!すみません、よそ見をしていて・・・」

浅黄「あははは、ドンマイドンマイ!あ、萌ちゃんも一緒だったんだ」

萌「久々に散歩でもと思ってな」

浅黄「あ〜、緋凪ちゃんにおつかいさせてばかりで、全然外に出てなかったもんね〜。
   引きこもってばっかじゃダメだよ?」

萌「隠居と称してほしいが・・・・・近頃は引きこもりというのか。」

緋凪【装飾屋(そうしょくや)で髪飾りを眺めていた浅黄さんとぶつかってしまった。
   本当に、いろんな場所にいる人だ。
   今日は休日だから、浅黄さんも遠出をしようと思ったのかもしれない。】

萌「浅黄は買い物か?」

浅黄「うん!あと、占い屋にも寄って行こうかな〜って思って」

萌「丁度いい。様子見がてら、そちらへ行くとしよう。」

緋凪「占い屋、ですか?」

浅黄「鳴釜(なりかま)の温羅ちゃんがいるんだ!可愛いんだよ〜♪」

緋凪「なり、かま・・・?」

萌「見ればわかる。行くぞ緋凪」

緋凪【浅黄さんと萌さんに連れられ、足は自然と占い屋の方へと向けられた。
   聞き慣れない妖の名前に、自然と心が弾む。
   今度会う妖は、どんな妖なんだろう?】



間。



[占い屋。神社のような外観の店の前で、温羅が竹箒を持っている。]

浅黄「う〜らちゃ〜ん!」

温羅「ん?あぁ、浅黄。それに相談屋の主人と・・・・・・誰だ?」

緋凪【神社のような店の前には、竹箒で掃除をしていたらしい巫女さんがいた。
   可愛らしいその姿とは打って変わって、ややぶっきらぼうな口調をしている。】

萌「小生が雇っている鬼の子。人より鬼となった者だ。」

緋凪「鬼灯緋凪です。以後お見知りおきを」

温羅「人間から鬼に、ね。まぁよろしく。」

浅黄「ふふ、相変わらず巫女服似合ってるね、温羅ちゃん♪」

温羅「ううううううるせぇ!好きでっ、着てるわけじゃ!」

浅黄「じゃあなんでいつも巫女服着てるの?」

温羅「それは、その、か、神主が、こっちの方が、似合うって言うから・・・・・・」

緋凪「?・・・よくお似合いだと思いますが。」

温羅「は、はぁ!?おまっ、じょ、じょじょじょ女装が似合うとか、バッカじゃねぇの!?」

緋凪「えっ」

温羅「え?」

浅黄「(大笑い)ぷっはははははははは!
   ひ、緋凪ちゃん、温羅ちゃんが男の子って、気付いてなかったんだ!はははは!」

緋凪「え?え!?」

温羅「(涙目で怒りながら)くっそ・・・そんなに俺が女に見えるかよ・・・・・!」

萌「ククッ、やれ愉快。」

緋凪【少々荒っぽい喋り方とは思った。
   声も低めではあると感じてはいたが、その身なりは本当に女性そのものだった。
   性別まで惑わされるとは思っておらず、ただただ開いた口が塞がらない。】

萌「吉凶を占う付喪神、吉備(きび)の鬼『温羅』の念が宿った妖。
   妖としては、『鳴釜』と呼ばれることが多い。
   かの吉備津(きびつ)神社では、鳴釜神事なるものが行われている。
   神事は当初巫女が行(おこな)っていたらしいが、いつのまにやら、
   女装した神官が神事を執り行うようにもなった。
   温羅は人の姿を取る際に、世俗の影響を少なからず受けたのだろう。」

神主「なるほど〜、それで温羅はこんなに可愛くなったのか〜」

浅黄「あ、神主さん!こんにちは!」

神主「やぁ、浅黄ちゃんじゃないか。こんにちは。
   温羅、お客さんが来たなら呼んでくれればいいのに。」

温羅「っ、そ、それどころじゃなかったんだよ。
   ・・・相談屋も来てるよ。従業員連れて」

神主「おっと、これは失敬。ご隠居がいらっしゃっていたとは。」

萌「たまの外出だ。温羅の様子も見たかったのでな。」

浅黄「私がこっちに寄るついで、でしょ?」

萌「はて、そうだったか?」

神主「クスッ、相変わらず面白い人たちだ。
   ええっと、初めましての人もいるし、一応自己紹介した方がいいかな?
   僕は占い屋を営んでいる・・・・・まぁ、神主とでも呼んでくれ。
   訳あって昔の名前は名乗っていないんだ。」

緋凪「わかりました。俺は緋凪と言います。よろしくお願いします、神主さん。」

神主「ん、よろしく〜」

緋凪【占い屋のご主人の神主さんと、付喪神の温羅さん。
   神主ということは、どこかの神社の生まれだろうか?
   それと、萌さんが「温羅さんの様子を見に来た」と言っていたのも気になる。
   ・・・ふと湧き上がってきた疑問は、俺が口を開く前に、
   萌さんとの世間話で話題に上がった。】

萌「相も変わらず、貴殿の家は文(ふみ)をよこすのか?」

神主「ここのところ毎週だよ。まったく、温羅のことを傷つけたくせに。」

浅黄「『今までの事は水に流して、跡を継げ』だっけ?」

神主「うん。とても水に流せるようなことじゃない。」

緋凪「あの、特区の外かどこかで何かあったんですか?」

温羅「神主の家の神社の話だよ。
   掘り出し物の中から、神主が俺を見つけた。
   俺はまだ人の姿になんてなれなくて、見た目はただの大釜だったんだけど、
   神主には高い霊力があったから俺の声を聞くことができたんだ。
   けど、神主の家の人たちはそれを気味悪がって、俺を壊そうとしてさ。」

緋凪「釜の姿だった、温羅さんを?」

浅黄「ひっどい話だよね〜、ず〜っと大切に使われていたからこそ付喪神になれたのに」

神主「温羅が痛がっている声を聞いて、思わず神社を飛び出しちゃってさ。
   とはいっても、近所に金物屋(かなものや)なんてないから、
   きっとここなら!って思って特区に駆け込んだんだ。
   右も左もわからなくって、新参屋に『温羅を直せる店』を聞いたら、
   相談屋を紹介されてね。」

温羅「特殊な案件、って言われたっけ。何せ付喪神の本体だしな。」

神主「その後は、温羅の静養と実家との縁切りも兼ねて、
   占い屋を営むことにして、晴れて特区永住決定!ってね♪」

浅黄「壊れたって、どれくらい壊れてたの?」

温羅「釜口(かまぐち)が歪んで、底にヒビが入った。
   見た目は大したことないけど、ヒビから妖力ダダ漏れで死ぬかと思った・・・・・」

神主「ご隠居に直してもらって人の姿をとるようになってからは、
   しばらく俺の霊力吸って回復してたもんな♪」

温羅「ばっ、よよよ余計なこと言うな!」

緋凪「人から力を、吸う・・・・・ハッ!?」

温羅「へへ、変な妄想すんなよ!?あああああああれだ、その、俺はただ、
   そ・・・・・添い寝、してもらった、だけ・・・だし・・・・・・・」

萌「高い霊力を持つ神主の傍に居れば、長期的な治療が容易だった。
   なるべく触れてやれとは言ったが、密着を命じた覚えはないぞ?」

温羅「え・・・じ、じゃあ、毎晩添い寝されてたのって・・・・・」

神主「ん〜?寝ている間も一緒にいれば、時間効率もいいし、
   俺も幸せだしで一石二鳥だt」

温羅「(食い気味に)バカ!神主のバーカ!お前の嗜好だったとかふざけんなバカ!
   2か月もあんな恥ずかしいこと続けさせやがって!!!」

神主「そんなこと言われても・・・・・それに、今も温羅の方から一緒に寝ようっt」

温羅「(さえぎるように)わああああああ!言うな、言うなああああああ!!!」

萌「ククッ・・・ん?どうした緋凪?」

緋凪「ぁ、い、いえ、その、力を吸うと聞いて、少し頭痛が・・・・・」

浅黄「あ〜、緋凪ちゃんはそういう能力、だもんね。」

緋凪「はい・・・。」



間。



[占い屋・店内。掘り炬燵のある部屋で、机を囲むように座る。]

萌「さて温羅。貴殿の様子窺いも兼ねて、1つ占ってもらおう」

温羅「ん、なんだよ?」

緋凪【十数分後、痴話喧嘩のようなものを繰り広げていた神主さんたちに招かれ、
   占い屋の店内に移動した。
   店内も神社のような木造建築で、風通しも良く、
   特区の外の訝(いぶか)しげな占い屋とは打って変わった雰囲気だった。】

萌「近々の状況は、平穏か否か。先見えぬ災いに覚悟はしておきたいものだ。
   そうだな・・・・・特区では広すぎるゆえ、緋凪の身の回りとでもしてもらおう。」

緋凪「え、俺ですか?」

温羅「いいけど、相談屋当人にしないのか?」

萌「緋凪にはまだ妖になったばかりともあって心配の種が多い
   今は小生の妖力、もとい霊力を吸わせてやっているが、
   腹を空かせた際にいつでも小生が傍に居る保障はない。
   ゆえに、少々の心配の種と言える。」

神主「妖力を、ねぇ。緋凪くんも妖力が枯渇しやすいのかな?」

萌「否、緋凪はまだ、妖力を奪われることに対する抵抗を覚えていない。
   持っていかれる時は、一気に持っていかれてしまう。」

浅黄「少なくとももう、3回は・・・えっと・・・・・・」

緋凪【必死に言葉を濁している浅黄さん。
   俺の顔はおそらく、必要以上の熱を帯びて赤くなっていることだろう。
   忘れようとも忘れられないあの感覚が蘇り、つい視線を下げてしまった。】

萌「緋凪の能力ともいえる妖力の吸収方法は、場合によっては多方面の協力を要する。
   小生や神主のように、高い霊力を持つ者ばかりではないということだ。」

神主「安定した補給路が絶たれた状態で大きな災厄に見舞われる可能性があるか否か。
   聞きたいことはそういう感じでいいかな?」

萌「うぬ。」

温羅「わかった、占ってやる。将来的なことだから、1回千円な。」

緋凪【萌さんがお金を支払うと、神主さんと温羅さんはすぐ準備に取り掛かった。
   簡単に組まれた薪(たきぎ)を囲う支えの上に、
   釜が置かれ、樽のようなもので蓋をされた釜が乗せられる。
   やがて薪に火がくべられ、その熱は徐々に空気までも温め始めた。】

温羅「緋凪。髪一本よこせ」

緋凪「はい。・・・・・っ、どうぞ。」

温羅「ん。じゃ、始めっぞ。」

緋凪【全員、火にかけられた釜を囲むように座り、その様子を見守る。
   温羅さんがそっと、俺の髪の毛を火へと投げ入れる。
   その様子を見て、神主さんが手を合わせながら、静かに口を開いた。」

神主「吉備津彦命(きびつひこのみこと)に討たれし鬼の首より、畏(かしこ)み畏み申す。
   かの者に響くは吉か凶か、釜鳴(かまなり)を以て伝えませ。
   いざ占わん、吉備の鬼『温羅』の耳へと聴かせませ。」

浅黄「(小声)・・・あ、鳴り始めた!」

緋凪【すると、釜から空気を震えさせる重低音が響き始めた。
   萌さんは変わらず笑みを浮かべて様子を眺めている一方、
   温羅さんは目を閉じてその音に集中しているようだった。
   しばらくして音が鳴り止み、神主さんがふっと安堵の息を漏らした。】

神主「どうだったかな、温羅?今日の結果は。」

温羅「ん・・・極端で分かりやすい結果だった。んでもって疲れた。」

浅黄「お疲れさま〜温羅ちゃん。」

神主「おつかれ。はい、リカバリー」

温羅「ん〜・・・って待った!待て待て待て、抱き寄せんなバカ!」

神主「こらこら暴れちゃダメだろ?今ので結構妖力使ったんだから。」

温羅「だからって人前でっ、抱きしめんな、この!」

神主「いってててて、痛、痛いって!」

萌「やれやれ。『地に伏すは腕 預けるは親しき者へ』」

温羅「っぁ!あ、あれ、力、入んな、い・・・・・」

萌「調子は悪くないと見えたが、うかつに調子づくのは良くないな。」

神主「そうだよ〜温羅?消費した妖力はちゃんと回復しなくちゃ。」

温羅「ぐぬぬぬ・・・・・」

緋凪【萌さんがトンと肩を突(つつ)くと、
   温羅さんは神主さんの腕の中へ倒れこんでしまった。
   何かの術でも使ったのだろうか、温羅さんは身動きできず、
   不機嫌そうに唸り声を上げている。
   心なしか、具合が悪そうにも見える。】

浅黄「それでどうだったの?緋凪ちゃんの今後の状況は」

温羅「あ〜・・・・・」

神主「その様子だと、あんまり良くないみたいだね。」

浅黄「え゛」

温羅「あんまりどころか・・・・・ホント良くない。ぶっちゃけ良くない。」

緋凪「そんなに、ですか?」

神主「温羅が言うくらいだ、間違いないね。
   彼自身に悪いことが起こるのかな?」

温羅「ん〜・・・そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。」

浅黄「曖昧だね温羅ちゃん・・・・・」

温羅「なんかこう、波が2つあった。
   後の方が津波みたいにでっかくて、怖かった。
   お前、絶対相談屋から離れんな。
   少なくとも『今のまま』のお前だけじゃ、確実に悪い方向にしかいかない。」

緋凪「今の、まま・・・」

萌「転機が訪れる可能性は否定されなかったな。」

浅黄「希望はあるってこと?」

温羅「うん。俺の性質上、詳しい事はわっかんないけど、
   デカい方の波を堪え切るには、緋凪が変わるしかない。
   わかったのは、それくらい。」

神主「っ、温羅?大丈夫?結構妖力使っちゃった?」

温羅「悪いもん聞きすぎた・・・気持ち悪い・・・・・」

神主「これはちょっと、良くないね。
   ご隠居、妖力を緊急で回復させる方法ってありませんか?」

萌「あるにはあるが、温羅が全力で拒絶しかねぬ方法だぞ?」

浅黄「ハッ!?ももももももも萌ちゃん!
   それは駄目、絶っっっ対ダメ!神主さんならホントにやりかねないから!!!」

緋凪【温羅さんの非常事態に険しい表情の神主さん、そして大慌ての浅黄さん。
   妖力不足によって、温羅さんは体調不良を起こされているらしい。
   そして、萌さんが提示しようとしている妖力の回復方法。
   心当たりがありすぎたため、俺は思わず口に手を当ててしまった。】

神主「ご隠居、どうかご教授願えませんか?」

浅黄「だぁめだって神主さん!温羅ちゃんは緋凪ちゃんと違うんだから!」

神主「緋凪くんとは違う?・・・ということは(緋凪の方に向き直す)」

浅黄「あ、マズっ・・・」

神主「緋凪くん、君はどうやって妖力を補給できるの?
   なるべく早く温羅を回復させてあげたいんだ、教えてくれないか?」

緋凪「ぅえええっ!?」

浅黄「あっちゃー・・・・・・」

緋凪「そ、それは、その、あの・・・えっと・・・・・」

萌「伝えなければ、温羅が苦しみ続けるらしい」

温羅「(気怠そうに)別に、これぐらい、どうって、こと・・・ない・・・」

神主「緋凪くん、頼む。」

緋凪【なんという無茶振りだ。
   この方法を教えるべきか否か、占ってもらえるなら占ってもらいたいほど。
   苦しそうな温羅さんの横で、愉快そうに笑みを浮かべる萌さん。
   そんな状況で、至って真剣な神主さんに嘆願され、絶体絶命。
   俺には・・・・・・良心を裏切ることが、できなかった。」

緋凪「お、俺は・・・吸血鬼に、限りなく近い、らしくて。」

神主「うんうん、それで?」

緋凪「〜〜〜〜〜〜、き、キスすることで、妖力を、吸収、できますっ!」

温羅「ふぁっ!?」

浅黄「あ〜言っちゃったぁ・・・」

萌「ククッ、顔がイチゴのように赤いぞ、緋凪。」

浅黄「元凶は萌ちゃんでしょうに!」

萌「緋凪を巻き込んだのは貴殿であろう?」

浅黄「う゛っ・・・仰る通りデス。」

神主「そうか、キスをすればいいのか。」

温羅「かか、か、神主?じょ、じょうだん、だよ、な?な!?」

神主「温羅。すぐ良くなるから、じっとしてるんだよ?」

温羅「ゃだ・・・いやだ、来るな、近づくな神主!!!」

神主「そう言えばさっき、ご隠居に動けないようにされてたっけ。
   んじゃ、遠慮なく・・・・・!」

温羅「んむっ!?んー!んんー!」

緋凪【『問答無用』という言葉がとても似合うように、神主さんは温羅さんと口を合わせた。
   強行されたキスを拒むことができず、温羅さんは顔を真っ赤に染め上げる。
   それを間近で見せられた俺や浅黄さんも同様で、平常心を保っているのは、
   実際にキスを敢行している神主さんと、変わらず愉快そうな萌さん。】

神主「ん・・・温羅、少しは良くなったかい?」

温羅「・・・・・・しの・・・」

神主「ん?」

温羅「(思いっきり息を吸って)神主のっ、バカ!変態!色魔!恥知らず!爆ぜろぉおおお!」

神主「ふぶぉっ!?」

緋凪【こうして、俺の近未来に関して占ってもらった話は、
   顔を真っ赤にした付喪神・温羅さんによる、
   羞恥心のあまり繰り出した回し蹴りによって幕を閉じた。
   ・・・この時は、こんな平和が続くものだと信じて、誰も、疑うことはなかった。】



浅黄「こちらは相談屋です。次回は、『第6話 鬼の慟哭』」

緋凪「あ、あの、温羅さんはどちらに・・・?」

萌「先ほど、神主が奥に運んで行った。かなり蹴られていたが」

緋凪「蹴られ・・・・・あぁ、足は自由なままだったんですね。」

萌「そろそろ小生の言霊(ことだま)の力も切れる頃合いと見える」

浅黄「萌ちゃん、言霊で温羅ちゃんをおとなしくさせてたんだね〜」

緋凪「温羅さんに術のようなものをかけていたと思いますが、あれが言霊・・・・・」

萌「言葉は誰にでも扱える。人はおろか、妖であってもな。」

神主「そうですね〜。おかげでうちの温羅も、だいぶ社交的になりましたし。」

緋凪「わっ、か、神主さん!温羅さんを奥に運んだのでは?」

神主「うん、そうしたよ。緋凪くんが妖力の回復方法を教えてくれたおかげで、
   温羅もすっかり・・・」

温羅「くたばれバカんぬし!!!(枕を投げる)」

神主「あでっ・・・・・ね?」

緋凪「・・・はい。お元気そうで、ナニヨリデス・・・・・」

萌「此度の事、『背に腹は代えられぬ』。」

神主「温羅を愛して生きられるなら、多少の痛みは、ね。」

温羅「は、恥ずかしいことサラッと言うな!このバカ!」



To be continued.





〜恥ずかしいのはこっちだバカ〜
どうも、犯人です。
神事らしいことやってないですが、なんちゃって神事です。
鳴釜神事を検索⇒実物発見(動画)⇒再現不可能⇒オリジナルでわっふ〜ぃ\(^o^)/
大丈夫、「神事」とは言ってないし、正式なものではないからな!←
話的には微妙に悪いフラグが残ってますが、よかったらどうぞ。
		






   
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