共依存的な。


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<登場人物>
吉良 仁(きら じん):
 29歳。冷静沈着で、実の妹である音湖に家族以上の愛情を注いでいる。
吉良 音湖(きら ねこ):
 21歳。愛想は余りない。周りの非難から自分に自信を失っている。





※仁の台詞はほぼ全てモノローグです。
!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



仁【猫を飼い始めて、もう3年になる。
  猫と言っても、正確には人間だが。
  ただ、名前が音湖と言って、けだるく、都合のいい時だけ甘えてくる仕草が、
  動物のそれと変わらない。
  おまけに毎日ダラダラと家の中で過ごしているもんだから、なおさらだ。】

音湖「吉良さん、お腹空いた。」

仁【パソコンに向かっている俺に向かって、ベッドの上の音湖が言う。
  時計を見れば、午後7時を回っていた。
  普段なら6時には夕食を取っている頃だから、
  音湖は俺の仕事が終わるまで待っていようとしたのだろう。
  だが、どうやら痺れを切らしたらしい。】

音湖「吉良さん、ご飯」

仁【「お前はペットか」。
  以前は何度もそう言っていたが、いい加減こちらも諦めがついた。
  もう少しでキリがいいからと、待てを命じてみる。】

音湖「うぅ・・・・・」

仁【不満そうな声だ。】

音湖「あとどれくらいで終わるの?」

仁【「15分くらいだ」と答えれば、枕にボフッと顔をうずめる音がした。】

音湖「寝てる。」

仁【不貞寝を始めた。
  とはいっても、本当に寝るわけではないだろう。
  しかし、万が一眠ってもらわれては困るため、不意に仕事の手を早めた。
  この猫・・・・・俺の妹のために。】



間。



音湖「いただきます。」

仁【1日1食は必ず一緒に食べる。
  それがこの家での決まり事だった。
  こうでもしないと、音湖が食事を抜くからだ。
  単に料理をするのが面倒という理由もあるのだろうが、栄養失調になられては困る。
  だから、仕事などで家の外に出なければならない時、大抵音湖の食事は作っていく。】

音湖「・・・これ、嫌い。」

仁【今日はパスタを作った。
  が、具材として入れたナスが気に入らなかったらしい。
  トマトソースに混ぜておいたから大丈夫だと思ったが、皿の端に移動させられている。
  ナスの皮を食べたくないようだ。】

音湖「・・・ごちそうさま。」

仁【食事が終わると、音湖は俺の分の食器も一緒に流し台へ持っていった。
  掃除は嫌いでも、食事の片付けだけはしてくれる。
  食器を洗い終わって戻ってきた音湖に、偉い偉いと頭を撫でてやろうとしたが、
  案の定逃げられてしまった。】

音湖「いい子、してない。」

仁【「音湖はいい子だよ」と、めげずに手を伸ばしてみる。
  だが、今度は払いのけられてしまった。】

音湖「私は、なんもできないよ。誰にでもできる事が、ちょっとできるだけ。」

仁【音湖の口癖だ。
  自分は何もできない。
  自分にできる事は誰にでもできて、誰にでもできる事のうち、
  自分ができるのはほんのちょっとだけ。
  俺にはそれで十分だし、やってもらえるだけありがたい。
  ベッドに顔を伏せる音湖の手をそっと押さえてから、その頭を優しく撫でる。】

音湖「・・・ペットなら、もっと可愛いよ。飼う?」

仁【思わぬ提案。
  しかし、「もうネコを飼っている」と返しておいた。】

音湖「私は居候。貧乏神と座敷童を足して割ったようなもんでしょ。」

仁【それはつまり、自分は他人の家に住みつく厄介者、と言いたいのだろうか。
  相変わらず音湖は、自分を卑下するのが得意だ。
  俺がエリートと呼ばれる道を進む一方、音湖は普通の女の子だった。
  けれど、親はそれを容認していなくて、音湖はいつも虐げられていた。
  兄を見習えとか、兄の妹らしくしろとか、お前は出来損ないだ、とか。
  そんな言葉ばかり言われ続けたせいか、音湖は性根からおかしくなっていって。
  人との繋がりを全部遮断していくように、孤独になっていった。】



間。



音湖「・・・・・寝ないの?」

仁【仕事を続けていると、音湖が話しかけてきた。
  時計は午後11時頃を指している。
  音湖のために部屋の電気を消していたが、起こしてしまったらしい
  「まだ仕事が残っているから」と、音湖の布団をかけ直してやる。
  が、音湖は起き上がってしまった。】

音湖「・・・ん。」

仁【音湖がコーヒーを入れてくれた。
  俺を気遣ってくれたのだろうか。
  「ありがとう」と返すと、音湖は静かにベッドに戻った。
  スタンドライトも消した方がいいかと聞いたが、】

音湖「目悪くするよ?」

仁【と返されたため、消さないでおいた。
  変に気遣うと、せっかく布団に入った音湖がまた起きてしまう。
  扱いの難しい妹だ。】



間。



仁【目が覚めると、俺は机に突っ伏していた。
  夕食後に仕事を続けて、そのまま眠ってしまったらしい。
  いつの間にか、タオルケットが掛けられていた。
  ベッドの方を見ると、音湖が本を読んでいる。
  こちらを見る様子がなかったから、「おはよう」と声を掛けた。】

音湖「・・・おはよう、吉良さん。」

仁【それ以上、何も言わなかった。
  「タオルケット、ありがとう」と言うと、】

音湖「・・・寒そうだったから。」

仁【と、少し控えめに言われた。
  まだパジャマ姿の音湖に掛けるよう、そっとタオルケットを返した。
  少しだけ触れられた肌が、冷たく感じた。
  「ずっと起きてたの?」と聞けば、】

音湖「ん〜・・・5時くらいに起きたと思う。」

仁【・・・時計は今、ちょうど6時半を指していた。
  9時までに出勤しなければならないが、会社は家から車で10分弱の場所にある。
  今からのんびり準備をしても間に合う。
  いや、そんなことはどうでもいい。】

音湖「ぅぁっ・・・!?」

仁【バサッと音を立てて、音湖の持っていた本がベッドの上に落ちた。
  同時に音湖も、ベッドの上に仰向けに倒れる。
  無防備な猫に覆い被さるようにして、俺は音湖の両手を拘束する。】

音湖「っ・・・吉良、さん?」

仁【音湖の身体が強張った。
  次の展開を警戒しているんだ。
  大丈夫、今まで何度もしてきている行為だから。】

音湖「んっ・・・ぅ・・・・っ!」

仁【顎を掴んで、強引に唇を重ねる。
  けれど、抵抗が激しくて、少しの間しか触れていられなかった。】

音湖「・・・っ、こういう、ことは・・・好きな人と、やればいいですよ・・・・」

仁【日本語が少し乱れてる。
  俺は答える。
  「俺の好きな人は音湖だよ」】

音湖「・・・飼い猫、だから?」

仁【「ううん、一人の女性として、愛してる」】

音湖「言葉だけなら、いくらだって・・・・っ!」

仁【ほら、そうやってまた自分を過小評価して、俺の言葉を虚飾だと決めつける。
  二度とそんな言葉を言えないように、こうやって唇を重ねるのに。】

音湖「っは、ぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

仁【酷い男だと、自負できる。
  血の繋がった実の妹に手を出して、力でねじ伏せて。】

音湖「はぁ・・・・はぁ・・・・私なんて、玩具にもならないでしょ?」

仁【自分を物扱いするのは、人間として見られていないと思っているから。】

音湖「吉良さんは、下手に遊び惚けて、世間体を穢す人じゃないですもんね。」

仁【他人をよく見ているのは、人間が嫌いだから。】

音湖「遊び道具にするなら、もっと酷くすればいいのに。」

仁【軽口を叩いているのは、必要として欲しがってる証拠。】

音湖「・・・お腹、空いた。」

仁【不意に話題をそらすのは、気まずく感じたから。】

音湖「吉良さん」

仁【俺を名字で呼ぶのは、俺と距離を置くため。】

音湖「お腹空いた。吉良さん、今日会社でしょ?準備しないと」

仁【全部知ってる、音湖の悪い癖。
  知った上で俺は、自分の都合のいいように音湖を籠絡しようとしている。】

音湖「吉良さん?」

仁【今ではもう、音湖は俺がいないと生きていけない】

音湖「吉良さんってば」

仁【衣食住は全て俺が面倒を見ている。
  時々音湖も食事を作ってくれるし、買い物にも行ってくれる。】

音湖「ねぇ・・・動けないから、手、離して」

仁【俺も俺で仕事があるから、音湖のおかげで家での仕事の負担が減ってありがたい。】

音湖「吉良さん・・・!」

仁【大好きな音湖と一緒に暮らせる、この環境が一番いい。】

音湖「・・・・っ・・・・・仁、にぃ・・・・」

仁【あ、やっと名前を呼んでくれた。
  音湖が取れる唯一の最終手段。
  俺が黙り込めば、音湖は俺の名前を呼んでくれる。
  しばらく呼んでくれていなかった、俺の名前、俺を兄と呼ぶ声。
  気まずくなったら、恐る恐るその唇で俺の名を紡いでくれる。
  それがあまりにも愛しくて、またそっとキスを落とす。】

音湖「んむ・・・っ・・・・・!」

仁【さすがにこれ以上拘束していたら、本格的に嫌われてしまいそうだ。
  音湖のぬくもりを名残惜しく思いつつも、俺は音湖を解放した。
  慌てて起き上がって臨戦態勢を取る音湖。
  「今はもうしないよ」と言っても、まだ警戒を解いてくれない。】

音湖「・・・ごはん。お腹空いた。」

仁【少し膨れてる・・・朝から手を出してしまったせいだろう。
  音湖の機嫌を取るために、今朝はピザトーストを焼いてあげた。
  食べ物に簡単に釣られる音湖ではないけれど、
  空腹が満たされたらしい音湖は、一応機嫌を良くしてくれたようだ。】

音湖「あ、吉良さん忘れ物」

仁【玄関で靴を履いていた俺の元へ、音湖が駆け寄ってくる。
  手には俺のケータイが握られていた。】

音湖「のわっ」

仁【「ありがとう」と、強引に抱き寄せて頭を撫でる。
  本当はたくさんキスをしたいのだが、音湖が嫌がるから撫でるだけ。
  思う存分撫でてから立ち上がり、「それじゃ」と音湖に軽く手を振ると、】

音湖「・・・いってらっしゃい。」

仁【控えめに、そう言われた。
  俺は、「いってきます」と、音湖へ返した。
  何もできないと自負する妹。
  妹を愛しすぎて、妹がいなくなることを考えられない俺。
  お互いがお互いに依存し、片方が欠けると生きていけないと感じる。
  そんな共依存を、周りは理解できないだろう。
  いや、理解される必要なんてない。
  俺と音湖に、他人は要らないから。
  俺には音湖が、音湖には俺さえいれば。
  共依存関係の俺たちに、他のモノは何も要らない。
  そうだろう?俺の愛しい、音湖。】



The End.





〜なんだこれ〜
どうも、犯人です。
共依存をテーマに書いてみようと男の台詞を全てモノローグ風にした結果がこれだよ!
もう少しくらい、甘くしたかったナー・・・・・。
底辺の文才なので仕方ない台本ですが、よかったらどうぞ。
		






   
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