微妙な距離


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<登場人物>
小太郎(こたろう):少年。同じクラスになった実衣耶が気になって、後を追いかける。
実衣耶(みいや):少女。少し変わった口調。騒がしいのは苦手で、屋上へ逃げる。





※【】はモノローグっぽい台詞です。
!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



小太郎【今日も俺は、屋上へ向かう。】

実衣耶【そこには何がある?】

小太郎【そこには、彼女が待っている。】

実衣耶【もしいなかったら?】

小太郎【絶対に逢いたくて、とにかく探し回る。】

実衣耶【でも、彼はいつも屋上へ行く。】

小太郎【そこにはいつも、彼女がいるから。】



間。



小太郎「実衣耶、起きて。」

実衣耶「ん・・・・ぁ、コタ・・・・・」

小太郎「おはよう、実衣耶。」

実衣耶「うん、おはよう。」

小太郎「俺が来なかったら、ずっと寝たままなんじゃない?」

実衣耶「たぶん、そうだろうね。」

小太郎「夜更かしでもしたの?」

実衣耶「ちょっと夢中になって小説を読んでいただけさ。」

小太郎「結局夜更かしじゃないか」

実衣耶「細かいことは気にするでない」

小太郎「学校で昼寝なんて、無謀にもほどがあるよ」

実衣耶「小太郎が来るから、呑気に昼寝ができるのだよ」

小太郎「他力本願」

実衣耶「そうだろうな、アハハハハハ!」

小太郎「笑い事じゃないって!」


実衣耶【屋上は人気(ひとけ)がなかった。静かな場所を求めて、私は屋上に通った。】

小太郎【ふらりと教室を出ていく彼女を見て、思わずあとをつけてしまった。】

実衣耶【彼がついてきていることに、私は気づかなかった。】

小太郎【彼女に声を掛けることを、俺は忘れていた。】

実衣耶【屋上に来て初めて、私は後ろを振り返った。】

小太郎【屋上に来て初めて、俺は彼女と目が合った。】

実衣耶【それから私たちは、何度も屋上に通うようになった。】



間。



小太郎「実衣耶」

実衣耶「お、りんごジュース」

小太郎「飲む?」

実衣耶「うん。・・・・ぬ、ストローぐらい自分で・・・・」

小太郎「はい。零さないようにね」

実衣耶「子ども扱いするな」

小太郎「してないよ。実衣耶の手間を省いてるだけ。」

実衣耶「むぅ・・・・」

小太郎「飲まないの?」

実衣耶「飲む」

小太郎「クスッ、なんだかんだいって飲むんだね(笑)」

実衣耶「それとこれとは別だ。」

小太郎「そっか。」

実衣耶「ん〜・・・・ん?小太郎の分は?」

小太郎「え?」

実衣耶「ジュース」

小太郎「あぁ、すっかり忘れてた」

実衣耶「大ボケ」

小太郎「あははは・・・・」

実衣耶「・・・はい」

小太郎「え?」

実衣耶「飲め」

小太郎「い、いいの?」

実衣耶「コタが買ってきたんだから、コタが飲む権利くらいあるさ」

小太郎「・・・・うん、ありがとう実衣耶。」

実衣耶「どういたしまして。」


小太郎【この時間が、一番楽だった。】

実衣耶【遠いような、近いような、微妙な距離。】

小太郎【俺はずぅっと、彼女に見惚れていた。】

実衣耶【私はずぅっと、彼に甘んじていた。】

小太郎【彼女の表情が、俺の感情にリンクしていた。】

実衣耶【彼の習慣が、私の習慣とリンクしていた。】

実衣耶【だけど、よくわからなかった。】

小太郎【この気持ちは、この感情は・・・・一体なんだろう?】



間。



実衣耶「・・・・やぁ、コタ。」

小太郎「今日は起きてたんだね。」

実衣耶「風が冷たくて、眠っていられん」

小太郎「上着は?」

実衣耶「教室に置いてきた」

小太郎「はぁ。女の子なんだから、身体冷やすのは良くないよ?」

実衣耶「それは女でなくとも、万人に言えることではないか?」

小太郎「屁理屈言わないの。・・・ほら、これ着てて。」

実衣耶「それではコタが寒い」

小太郎「俺はいいから。実衣耶が風邪引いちゃう」

実衣耶「ふむ・・・・では、しばし借りておこう。」


小太郎【その頬に、手を伸ばしたかった。】

実衣耶【このぬくもりを、愛しいと思った。】

小太郎【けれど彼女は、ここを去ってしまう。】

実衣耶【私も彼も、離れてしまう。】

小太郎【ここで会えるのも、あとほんの数回だけ。】

実衣耶【当たり前だった時間も、あと少しで、おしまい。】

小太郎【この時間を失ったら、俺は・・・・・】

実衣耶【このぬくもりを失ったら、私は・・・・・】

小太郎【きっと、悲しい。】

実衣耶【きっと、寂しい。】



間。



小太郎「・・・・実衣耶。」

実衣耶「やぁ、コタ。」

小太郎「・・・・もうすぐ、卒業、だね。」

実衣耶「あぁ、そうだな。」

小太郎「ここに来るのも、あと、数えられるくらい。」

実衣耶「・・・そうだな。」

小太郎「・・・・・もっと、こうしていたかったな。」

実衣耶「時間の流れは止められない。いつか終わりが来ることくらい、わかっていた。」

小太郎「そうだけど、さ。」

実衣耶「留年でもするつもりか?」

小太郎「そうじゃなくて」

実衣耶「・・・終わりがあるなら、始まりがあってほしいものだな」

小太郎「始まり?」

実衣耶「高校に入って、私とコタが屋上で会うようになって。
   卒業するから、もうここに来られない。だから、会わなくなってしまう。
   それは、とても悲しくて、寂しい。」

小太郎「・・・・・。」

実衣耶「お互い、大学に進学したら、それぞれ忙しくなるだろうし。」

小太郎「・・・それでも、俺は実衣耶に会いたい。」

実衣耶「小太郎?」

小太郎「休日だけでも、実衣耶に会いたい。会えなくても、せめて声を聞きたい。」

実衣耶「・・・・・そうか。」

小太郎「このまま離れるのは、嫌だよ。」

実衣耶「じゃあ、どうする?」

小太郎「・・・・・・実衣耶を、俺の彼女にする。」

実衣耶「!クスッ、そうかそうか。では・・・・私は小太郎を彼氏にしよう。」

小太郎「そしたら、毎日電話したって、何もおかしくない。」

実衣耶「時々会ったって、何もおかしくはない。」

小太郎「もっと近づいても、許される?」

実衣耶「いくら触れても、許される。」

小太郎「・・・・実衣耶。」

実衣耶「ん?」

小太郎「・・・・愛してる、実衣耶。」

実衣耶「あぁ。私も、愛してるよ、小太郎。」


小太郎【この場所とは、もうお別れ。】

実衣耶【ここにはもう、思い出しか残っていない。】

小太郎【でも、俺は構わない。】

実衣耶【思い出はそこに置いていく。】

小太郎【これからもよろしく、俺の大好きな実衣耶。】

実衣耶【これからもよろしく、私の大好きな小太郎。】



終了と書いてゴメンなさいと読む。





〜 な に が あ っ た 〜
どうも、犯人です。
恋愛ネタが書きたかっただけなのです、しかも相変わらず思いつき\(^o^)/
感覚でカタカタとタイピングしまくるだけの簡単で複雑で怠惰なお仕事デス☆
ちょっぴり甘いぐらいになってると信じてますが、よかったらどうぞ。
		






   
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