Arc Jihad(アークジハード) -伝えるは咎なき者へ-


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<登場人物>
 [ユリア=セン]
表記:千 柚梨亜/Julia Sen
年齢:16
詳細:フィーネの従妹。フィーネを実の姉のように慕っている。
   入院生活が長かったためか、精神年齢が実年齢よりも幼く感じられる。
   身体こそ弱いが、純粋で健気な性格から勇敢な一目を見せることも。

[ルシファー(ルキ)]
表記:Lucifer
年齢:(外見)20代後半
詳細:魔弾『フライクーゲル』の担い手。
   契約者を罪へ誘う体質を持ち、これに耐えられる者を探して契約を繰り返している。
   物静かで常に無表情だが、どこか悲しい雰囲気を纏っている。
魔剣の能力:射出した魔弾をコントロールする(代償:1発ごとに消費)
      魔弾に触れた人間を一時的に支配する(代償:継続可能時間63秒)
      ※ルキの能力:血を与えることで、万物の傷を瞬時に癒す




!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



[日本にある国立病院。ルキが中庭の木陰から人間たちを見回している。]

ルキ「病院・・・弱った人間が集まっている場所は、本当に静かだ。
   いや、弱い人間の方が、強いのかもしれない。
   生きることへの強い執着が、堕ちた俺の眼には眩しい。」

ユリア「あら?お兄さん、どなたかのお見舞いの方ですか?」

ルキ「?俺が、見えるのか?」

ユリア「え?」

ルキ「そうか。人間であることに変わりがない以上、適合者もまた・・・・」

ユリア「あ、あの」

ルキ「声を大きくするな。今の俺の姿は、お前以外に見えない。不審に思われる。」

ユリア「!・・・・・わかりました。あの、でもどうして・・・」

ルキ「お前もいずれ、戦いに巻き込まれるかもしれない。
   知識を付けておくに越したことはない、説明はさせてもらおう。」

ユリア「は、はい。あ、じゃあ場所を変えましょう。
   今の時間、屋上なら誰もいませんから。」

ルキ「わかった。」



間。



[病院屋上。ルキとユリアが会話している。]

ユリア「ほら、誰もいませんでしたよ。」

ルキ「あぁ。それにしても、よく俺の言葉を信じたな。騙されるとは思わないのか?」

ユリア「私、その人を見れば、大体どんな人なのかわかっちゃうんです。
   嘘を吐(つ)いている人かどうかを見極めるためには、その人の目を見ればいいんです。
   お兄さんは、真っすぐ私を見て話してくださったので、嘘を吐いていません。」

ルキ「・・・ならば、お前の眼に、俺はどう映っている?」

ユリア「どう、と言われると・・・・・そうですね。
   いろんなものに悲しんでいます。
   現状に対する失望・悲観、それから、ほんの少しの安心と、羨望・・・」

ルキ「フッ、羨望か。・・・・・お前、名前は?」

ユリア「千 柚梨亜、ユリアと言います。」

ルキ「ユリア。俺はルキという。これから話すことは、信じがたい事だと思う。」

ユリア「・・・・・なんとなく、恐ろしい事のような気はします。
   でも、私は逃げません。どうか、教えていただけますか?」

ルキM「ユリアは、見るからに弱い人間だった。
   にもかかわらず、その強い眼差しは、どこか惹かれるモノがあった。
   そう、あの美しい魂を持った騎士・・・ゼラフィーネのように。」

ユリア「・・・では、その聖剣と魔剣の担い手たちが、戦いを?」

ルキ「担い手だけじゃない。担い手は、この世界の人間と契約しなければ、戦えない。」

ユリア「それは、どうしてですか?」

ルキ「未契約の担い手は、この世界に干渉することができない。
   他の担い手と適合者以外の人間には、見ることも触れることもできない。
   だが、契約済みの担い手は、未契約の担い手を攻撃できる。
   だから担い手は、一方的にやられないためにも、契約者を求めている。」

ユリア「ルキさんには、契約者がいらっしゃるんですか?」

ルキ「あぁ。だが、今は別行動を取っている。ここには来ていない。」

ユリア「クスッ、いいなぁ。誰かと一緒に居られるなんて。」

ルキ「・・・ユリアは、一人なのか?」

ユリア「はい、今は一人です。父も母も昔、病気でこの世を去りました。
   2年ほど前には、祖父も亡くなられて・・・・・」

ルキ「そう、か。」

ユリア「でも、親族は一人だけいます。もうすぐ日本にいらっしゃるんです。」

ルキ「ほう?」

ユリア「私、もう少しで退院できるんです。
   そしたら、フィーネお姉様と一緒に暮らせるんです。」

ルキ「フィー、ネ・・・!?」

ユリア「はい。ゼラフィーネ・フォン・シュヴァイツァー。
   ドイツに名を馳せる、騎士の名家の当主にあらせられます。
   私の憧れの姉様なんです!」

ルキ「ゼラフィーネ・・・・・妹、なのか。」

ユリア「あ、いえ、正確には、私は従妹です。
   でも、本当の姉様のように慕わせていただいています。」

ルキ「・・・・・・そうか。」

ユリア「姉様は、本当に素敵な方です。
   常に堂々とした振る舞いで、強く気丈で凛としていて。
   私は、見ての通り小柄で弱いので、姉様のような騎士にはなれません。
   それでも、歪むことのない真っすぐとした意志は、私も見習いたいんです。」

ルキM「憧れを語る少女の姿は、俺の眼には眩しすぎた。
   かつては光をもたらす者と言われしルシファーも、今は闇に堕ちた身なれば。
   相次ぐ真意の発覚に、納得と罪悪感だけが俺の思考を埋め尽くしていた。」

ユリア「ルキさん?どうされました?」

ルキ「・・・俺が償うべき相手は、1人ではなかったようだ。」

ユリア「え?」

ルキ「ゼラフィーネ・・・咎負いし騎士の運命を狂わせたのは、魔弾。」

ユリア「ま、だん?ルキさん、フィーネお姉様を知って・・・・?」

ルキ「俺の契約者は、殺人を愉快に思っている。
   一度契約した以上、俺が逆らうことはできない。
   ・・・俺がゼラフィーネを求めたから、老騎士(ろうきし)は魔弾を受けた。」

ユリア「!で、では、お祖父(じい)様は・・・」

ルキ「魔弾の射手、アガーテ・クラインハインツの手により、射殺された。」

ユリア「・・・・・。」

ルキ「・・・驚くのも無理はない。俺のせいで、ユリアの祖父は死んだ。
   それは紛れもない事実であり、俺によって贖(あがな)われるべき・・・」

ユリア「(食い気味に)3つ、私の問いに、答えてください。」

ルキM「不意に発せられた声の主は、その瞳に俺の姿を真っすぐ捉えていた。
   わずかに揺らぐことも、躊躇いを感じさせることもない。
   俺はユリアの方へ身体を向き直し、対峙した。」

ユリア「(一呼吸)・・・担い手は、この世界の人間を殺せますか?」

ルキ「場合によっては、可能だ。
   『マージ・ウェイク』、契約者と一体化することで、
   この世界の人間に危害を加えることができるようになる。」

ユリア「お祖父様が亡くなられる前後、ルキさんはマージ・ウェイクを?」

ルキ「否。よほどのことが無い限り、マージ・ウェイクは拒絶している。」

ユリア「では・・・魔弾が込められた銃の、引き金を引いたのは誰ですか?」

ルキ「・・・・・アガーテ・クラインハインツ。我が契約者。」

ユリア「・・・・・。」

ルキ「・・・・・。」

ユリア「・・・そうですか。なら、よかった。」

ルキ「!?」

ユリア「今ここにいらっしゃる方は、フィーネお姉様の怨敵(おんてき)ではないのですね。
   とっても安心しました。」

ルキ「なぜ、俺を責めない?俺は、魔弾『フライクーゲル』の担い手。
   ゼラフィーネとユリアの祖父の命を奪った、憎まれるべき仇・・・」

ユリア「(さえぎるように)それは違います」

ルキ「何?」

ユリア「私には、当時の状況は全くわかりません。
   ルキさんが仰られた情報以外、殆ど知り得ません。
   私が知っているのは、フィーネお姉様の信念くらいです。」

ルキ「・・・・・どういう、ことだ?」

ユリア「ルキさん、もう1つだけお伺いしてもいいですか?」

ルキ「っ、なんだ?」

ユリア「お祖父様が殺された時、姉様はきっと、剣を握ったと思います。
   その時姉様は、あなたに刃を向けましたか?」

ルキ「・・・!」

ユリア「ふふっ、やっぱり。姉様は、ルキさんには剣を向けなかった。それが答えです。」

ルキ「俺は、フィーネに恨まれていない、と?」

ユリア「はい。姉様が恨んでいるのは、あくまでルキさんの契約者です。
   魔弾は、お祖父様を殺した道具にすぎません。
   武器が憎いなら、この世にある全ての拳銃、銃弾を憎んでいるはずです。
   でも、私は知っています。
   フィーネお姉様は、私怨(しえん)に囚われて本質を見失うような方ではありません。
   本当に恨むべきは、意志を添えた、引き金を引いた人間。
   道具の持ち主ではなく、実際に扱った人間こそが怨敵(おんてき)であると、
   姉様ならお気づきになられているでしょう。」

ルキ「・・・・・不思議だな。まるでゼラフィーネと対峙しているように思える。」

ユリア「えっ?」

ルキ「目が泳ぐこともなければ、動揺を表に出すこともなく。
   一切の迷いもなく魔剣を握ったゼラフィーネを思い出した。
   ユリアは、ゼラフィーネによく似ている。」

ユリア「わ、私は、ね、姉様の、受け売りに過ぎません!
    姉様がカッコよくて、その、真似をしているだけ、です。」

ルキ「・・・・・フッ、そうか。」

ユリア「ふふっ、はい。」

ルキM「愛らしく笑みを零すユリアは、まるで天使に思えた。
   放たれる光はあまりにも甘美で、あらゆる穢れを浄化してしまうようだった。」

ユリア「あ、いけない!もうすぐ検査の時間!病室戻らなきゃ!」

ルキ「・・・また」

ユリア「?」

ルキ「また、話をしに来ても、いいだろうか?」

ユリア「お話、ですか?」

ルキ「あぁ。ユリアとは、また話がしたい。」

ユリア「クスッ、もちろんです。私も、もっとルキさんとお話したいです。」

ルキ「では、これを」

ユリア「?お守り、ですか?」

ルキ「63ある魔弾の1つが入っている。
   俺がこの世界にいるための、命に等しいものだ。
   再会の約束をする証に、持っていてほしい。」

ユリア「ルキさんの、命・・・。」

ルキ「俺が生きていれば、必ずユリアの元へ行こう。
   これは、ユリアを探すための道しるべになる。」

ユリア「わかりました。大事にします。それと」

ルキ「っ!?」

ユリア「指切りと言って、この国では約束をする時、小指と小指を結ぶんです。
   また会いましょう、ルキさん!」

ルキ「!・・・・・あぁ、また。」


ルキM「魔弾に、俺に触れたのに、ユリアは罪に誘(いざな)われなかった。
   ゼラフィーネと同じ、強い意志を持った少女。
   もし、ゼラフィーネの仇討(あだうち)が叶い、アガーテとの契約が解かれたら。
   ・・・いや、考えてはならない。
   ユリアの運命まで、俺の欲望で変えるわけには、いかない。」

ユリアM「私の知らないところで、たくさんの人が戦って、傷ついて、咎を負う。
   咎を負わず、無垢なままでいることすら咎だというなら、
   私もまた咎人なんだと思う。
   フィーネお姉様にも、終始悲しい目をしていたルキさんにも。
   どちらにも生きていてほしいと願う私は、欲張りでしょうか?」



To be continued.
		



こちらの台本は、コンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて書かせて頂いたものです。
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