Arc Jihad(アークジハード) -貫くは白き宿木-


・男女逆転は絶対にやめてください
・ネットブロードキャスト以外の利用はご一報ください
・少しでも疑問があれば利用規約を読んで、それでも分からないなら問い合わせください



<登場人物>
[ゼラフィーネ・フォン・シュヴァイツァー(フィーネ)]♀
表記:Seraphine von Schweizer
年齢:19
詳細:騎士の家に生まれた才色兼備の女騎士。
   冷静かつ気丈で、あまり感情を表に出さない。
   魔剣側の教団に所属しておらず、担い手を配下扱いにしている。

[ハイディングスフェルト・フォン・シラー(ハイド)]♂
表記:Heidingsfeld von Schiller
年齢:21
詳細:シュヴァイツァー家に仕える心優しい執事。
   幼少の頃からフィーネの付き人であり、フィーネには強く物を言えない。
   執事としての能力は当然高く、聖剣・魔剣なしでもそれなりの戦闘能力を持つ。

[シグルズ]♂
表記:Sigurd
年齢:(外見)20代半ば
詳細:魔剣『ダーインスレイヴ』の担い手で、フィーネの契約者。
   狂信的なまでにフィーネを気に入っており、常に状況を楽しんでいる。
   軽い表現をしても、どこか陶酔しているような、重みや含みのある言い方をする。
魔剣の能力:永遠に癒せない傷を与える(代償:剣が血を浴びるまで鞘に納まらない)
	  ※鞘の能力=全ての聖剣・魔剣が持つ能力による事象を鎮静化・解除する

[ロキ]♀
表記:Loki
年齢:(外見)20代半ば
詳細:魔剣『ミスティルテイン』の担い手。ハイドを適合者と見なし、接触してきた。
   男性のようなやや堅い言動と子供のような悪戯心を持つ。
   時折神話の記述に嫌悪を示している。
魔剣の能力:光・熱・視力を奪う(代償:マージ・ウェイク状態でなければ一瞬のみ有効)

 [レギーナ・ザカリアス]♀
表記:Regina Zacharias 
年齢:20
詳細:勝ち気でお嬢様口調の女騎士。
   騎士の称号を持っていない没落貴族で、フィーネとは祖父の代から顔見知り。
   嫉妬深く、実力もあり騎士の名をも所有しているフィーネを妬んでいる。

[聖ロンギヌス]♂
表記:Longinus
年齢:(人間の方)30代後半
詳細:聖槍『ロンギヌス』の担い手で、レギーナの契約者。
   強力な兵士で、敵を圧倒するような威厳を持つ。
   槍の能力を最大限に発揮させるために数多の人間を殺している。
聖剣の能力:持ち主の傷を瞬時に回復させる(代償:槍で他人の血を流させる必要がある)
      風を操る(代償:室内または屋根のある場所では威力が半減する)




!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



[シュヴァイツァー邸近くの木の上。ロキが息を切らせて木に寄りかかっている。]

フィーネN「月明かりの差し込む路地に、負傷した未契約の担い手が逃げ込んでいた。
   追手は、担い手とマージ・ウェイク状態にある契約者、レギーナ・ザカリアス。」

ロキ「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・!」

レギーナ「全く、逃げ足の速い狡猾神ですこと。」

ロンギヌス「だが、これ以上泳がせるつもりもない。その命、絶たせてもらおう!」

ロキ「貴様らなんぞに、やられる、ロキではない・・・!」

レギーナ「ふふっ、その威勢もおしまいですわ!『アハト・ヴィント』!」

シグルズ「クククッ、『蔓延るは霧 その身へ絡む無形の鎖 シュヴァルツ・ニーベル』」

ハイドN「聖槍より放たれた斬撃の風がロキに襲いかかった時、
   その場に黒い霧が立ち込めた。
   黒い霧に触れた斬撃は、一瞬でそよ風に変わる。」

ロンギヌス「何!?」

ロキ「ふっ、これは好機。おさらば!」

レギーナ「ぁ、待ちなさい!・・・・・逃げられましたわね。」

ロンギヌス「先ほどの黒い霧、ロキのものではないな。
   ということは・・・・・そこか!『ゼクス・ジーベン』!」

シグルズ「無駄だよ。その霧の中に触れてる間はな。」

レギーナ「っ、何者ですの?」

シグルズ「ふっふ〜ん、ちょっとお散歩していた契約済みの担い手だったりして。」

ロンギヌス「その声・・・・・『ダーインスレイヴ』の担い手か。」

シグルズ「あれ、バレちゃった?まぁ、覚えられただけ光栄だねぇ。」

レギーナ「『ダーインスレイヴ』・・・ゼラフィーネの契約相手ですわね?」

シグルズ「まぁそんなところだよ。んじゃ、俺はこれで。」

ロンギヌス「逃がすか!」

シグルズ「おおっと!ケッ、一人で戦うつもりなんざねぇよ!じゃあな!」

ロンギヌス「・・・ふんっ、逃げ足の速い奴らよ。狡猾神といい、奴といい・・・」

レギーナ「いかがしたしまして?わたくしはまだ行けますわ」

ロンギヌス「一度引くぞ、レギーナ。
   月明かりの下(もと)とはいえ、闇に包まれていては奴らの優勢よ」

レギーナ「承知しましたわ、ロンギヌス。支部に戻って、今夜は休息を。」

ロキN「逃げ行くロキ、去りゆくレギーナとロンギヌス。
   双方の様子を眺めたシグルズは、怪しく目を光らせていた。」

シグルズ「ククッ、明日は愉しくなりそうだなぁ。ヒャハハハハ!」



間。



[シュヴァイツァー邸。フィーネが起床してくる。]

ハイド「フィーネ様、おはようございます。」

フィーネ「おはよう。」

シグルズ「おはよ、フィーネ。」

フィーネ「昨晩は随分楽しそうだったわね、シグルズ?」

ハイド「え?」

シグルズ「ありゃりゃ、やっぱ気づかれちゃったか。」

ハイド「・・・どこかへ、行っていたんですか?」

シグルズ「まぁな〜。とはいえ、屋敷の近くだよ。ちょっと見回りをさ。」

フィーネ「騒がしくしていなかったということは、まともな戦闘はなかったようね。
   知人でもいたのかしら?」

シグルズ「まぁね。そんな感じだよ、フィーネ。」

フィーネ「・・・そう。」

ハイドM「フィーネ様は、それ以上言及されなかった。
   フィーネ様が気になさっているのは、シグルズの安否の先にあるもの。
   魔剣『ダーインスレイヴ』の消失。
   フィーネ様の知らぬところでシグルズが死に、
   戦う力が消えてしまうことを恐れている。
   それが、余計な戦闘は避けるようにとシグルズに言いつけている理由でもある。」

フィーネ「・・・少し外に出るわ。ノエルから連絡があったら受け取っておいて」

ハイド「はい、了解しました。留守をお預かりいたします。」

シグルズ「俺はついていくべき?」

フィーネ「ノエルが言っていた情報が気になる。
   どちらの担い手もまだそう遠くへは行っていないはず、荒らされては困り物よ。」

シグルズ「んじゃこっちにも魔剣が必要だね。俺も行くよ。」

フィーネ「朝食を済ませたら、すぐに出るわ。屋敷をよろしく」

ハイド「かしこまりました。」



間。



ロンギヌスN「屋敷を離れるフィーネとシグルズを見送ったハイドは、
   花壇の水やりや庭の掃除などに勤しんだ。
   しかし、何をしていてもハイドは、どこか虚ろな顔をしていた。」

ハイドM「私には・・・戦う力があっても、この戦いにおいては微力でしかない。
   聖剣も魔剣も持たない私では、フィーネ様を守る事など・・・・・
   っ、無力な自分が、酷く憎い!」

フィーネN「ハイドが憤りと悔しさを噛みしめていたその時。
   突如、何かがドサッと落ちる音がした。」

ハイド「ん?今の音は・・・・」

ロキ「ぐっ・・・思いのほか、追い掛け回されたな・・・・・・」

ハイド「人?一体どこから・・・ご婦人、大丈夫ですか?」

ロキ「あぁ、問題は、な・・・っ!?」

ハイド「出血!?すぐに手当てを!」

ロキ「お前、やはり私が見えるようだな」

ハイド「え?」

ロキ「時間がない。敵はすぐそこまで来ている。
   私はロキ、魔剣『ミスティルテイン』の担い手。
   お前に私の姿が見えているということは・・・・・」

ハイド「担い手!?未契約の、担い手・・・私が、適合者だと・・・・・!?」

ロキ「そうだ。やはり、シグルズが出入りしているだけのことはあるな。情報が早い」

ハイド「し、しかし、未契約にもかかわらず、なぜケガを・・・?」

ロキ「それは・・・・」

レギーナ「こういうことですわ。『アハト・ヴィント』!」

ロキ「伏せろ!」

ハイド「ぅぁっ!?」

フィーネN「慌てて伏せたハイドの頭の上を、風の太刀が通り過ぎた。
   ハイドが頭を上げると、そこには、見覚えのある武器を携えた女性が立っていた。」

ハイド「あれは、レギーナ様・・・・・なっ、聖槍『ロンギヌス』!?」

レギーナ「ふふっ、ゴメンあそばせ。そこに魔剣の担い手がいたモノだから、つい。」

ロキ「チッ、もう追手が来たか。」

ハイド「前に会った時と適合者が違うだと・・・どういうことだ!?」

ロンギヌス「なぁに、切り捨てたまでよ!
   決して治らぬ傷を負った身体など、もはや使えん。
   それに、適合者ならば他にもいるのでな。」

ロキ「この世界の人間を使い捨てにするつもりか!」

レギーナ「あら、貴女だって同じ立場ではなくて?狡猾神ロキ。」

ロキ「っ・・・」

レギーナ「貴女は魔剣の担い手、適合者が居なければこの世界に干渉できない。
   いくら狡猾神と言えど、適合者を殺されたら、戦う力があっても持て余すだけ。
   だから、一方的にやられてしまわないよう、適合者という駒を用意する。
   自らの隠れ蓑としても有用な、ね。」

ロキ「違う。私は、貴様らなどとは・・・!」

ロンギヌス「神話に語られる中でも、同族や周囲の者共を騙してきたではないか。
   そうして、この世界の適合者をも欺き、幾人もの人間を生贄に・・・・」

ロキ「違う!!!」

フィーネN「傷を押さえて立ち上がったロキは、
   空いている右手をハイドの目の前へかざした。」

ロキ「『貫け その身に誓わぬ命を絶て ミスティルテイン』!」

ハイド「!?こ、これは・・・魔剣・・・?」

ロキ「未契約の状態では、どちらにせよ私は一方的にやられてしまう。
   魔剣を手に取れ!私と契約し、共に戦え!」

ロンギヌス「ハッ!魔剣を召喚するとは、愚かな。
   模造品を破壊されれば、貴様の命も潰えよう!」

レギーナ「ロンギヌス、特攻しますわ」

ロンギヌス「然らば!」

フィーネ「させると思う?」

ロンギヌス「何っ、ぐあぁっ!?」

ロキN「レギーナとマージ・ウェイク状態のロンギヌスを、大剣が吹き飛ばした。
   飛んできた大剣は、ハイドも知っているものだった。」

シグルズ「間に合ったっぽいね〜。」

ハイド「フィーネ様!」

フィーネ「何をしているの?
   敵も魔剣も目の前にしているというのに、悠長なものね。」

ハイド「え?」

ロキ「あの人間の言うとおりだ。
   お前は適合者。魔剣を手に取り、私と契約しろ。」

ハイド「契約・・・・っ・・・・・・」

シグルズN「ハイドは強いられた決断に頭を抱えていた。
   欲していた力が目の前にあるというのに、なぜかハイドの手は地面から離れない。」

フィーネ「・・・臆病者。」

ハイド「!」

フィーネ「力を得る覚悟を決めかねているくらいなら、
   いつまでもそのまま地に伏していなさい。
   所詮あなたは、聖剣と魔剣の戦いに干渉しない立場がお似合いよ。」

ハイド「フィーネ、さま・・・・」

シグルズ「クククッ、そういうこと。お前じゃやっぱ、楽しめねぇや。」

レギーナ「あらあら、貴女がお相手だなんて、なんの因果ですの?
   ・・・ゼラフィーネ・フォン・シュヴァイツァー。」

フィーネ「あなたこそ、他人の領地に入る礼儀がなっていないんではなくて?
   ・・・レギーナ・ザカリアス。」

レギーナ「貴女っていつもそう、常に優雅で余裕があって。
   わたくしがいくら貴女を陥れようとも、貴女は決して挫けなかった。」

フィーネ「姑息な真似をする割に、あなたは決して頂点に立つことはなかった。
   剣術においても、あなたの剣は簡単に折ることができた。」

レギーナ「っ・・・騎士の名を持つからって、驕り高ぶるのはよろしくなくってよ!」

フィーネ「あなたこそ、騎士の名を持たずして騎士を名乗るのは、どうかと思うわ」

レギーナ「・・・・ムカつきますわ、貴女。」

フィーネ「奇遇ね。私もよ」

ロンギヌス「レギーナよ。」

レギーナ「えぇ、良いわ。やってしまいなさい!」

シグルズ「あーあ、敵さん怒っちゃった。んじゃこっちも、『マージ・ウェイク』!」

ハイド「あ・・・フィーネ様・・・・・」

ロキ「魔剣の力の差を気にしているのか?
   確かに『ミスティルテイン』は、論述ではただの宿木の枝にすぎなかっただろう。
   だが、魔剣としての『ミスティルテイン』は違う。
   お前は、欲しがっていたモノを、私の命を、主君の安寧を、
   覚悟と共に捨てるか!?」

ハイド「!!!」

ロキ「決めろ。蛇のように地を這うか、龍のように空を翔けるか。
   私は神を騙す神なれど、人間に騙ることはない。
   真実を告げ、この世界の者と共に戦うことを望む。」

ハイド「・・・戦わねば、フィーネ様を守れない・・・・・・っ!」

シグルズ「んじゃ、ちゃっちゃと片づけようか、フィーネ。」

ハイド「お待ちください、フィーネ様!」

フィーネM「ハイドの声に振り返ると、そこには、
   魔剣『ミスティルテイン』を握ったハイドの姿があった。
   覚悟を決めたハイドの目は、わずかな揺らぎすら見せていない。」

ハイド「レギーナ様は・・・聖ロンギヌスは、私がお相手仕(つかまつ)ります。」

レギーナ「執事が相手?ふざけてますの?」

ロンギヌス「誰が相手であろうと構わん。突き立てばよい。」

フィーネ「・・・・・敗北は許さない。レギーナ・ザカリアスを、討ち取りなさい。」

ハイド「御意。」

ロキ「生憎、私はこの傷ゆえに戦えん。
   しかし、魔剣の力を解放することはできる。
   決して気を抜くな。」

ハイド「はい・・・!」

フィーネN「ハイドが前に出ると、レギーナが聖槍を構えた。」

シグルズ「相手はマージ・ウェイク状態、ちょっと厳しいかもね。」

レギーナ「たかが執事ごとき、切り刻んで差し上げますわ。『アハト・ヴィント』!」

ハイド「先ほどの突風と同じ・・・ならば!」

ロンギヌス「甘いな。ふんっ!」

ロキ「ハイド!」

フィーネ「集中しなさい。あの魔剣の担い手はあなた。」

ロキ「っ・・・・あぁ、そうだ。」

レギーナ「もっと、もっと逃げなさい!『ゼクス・ヴィント』!」

ハイド「っ!?」

ロンギヌス「捉えた。レギーナ!」

レギーナ「わかってますわ!はぁぁぁあああああ!!!」

ロキ「『宿木よ 穿(うが)たれし者より光を奪え リヒロス・バルドル』!」

レギーナ「きゃあっ!?な、なんですの、これは・・・・!?」

ハイド「動きが、止まった?」

ロキ「一時的なものだ。一度下がれ!」

シグルズ「ん〜なるほど。ありゃ失明させたね。」

フィーネ「バルドル・・・放たれた宿木によって絶命した、盲目にして光の神。
   かの命を奪いし宿木の名は、『ミスティルテイン』。」

レギーナ「ぐっ、小賢しい真似を・・・」

ロンギヌス「視界はすぐに晴れる。槍を下げてはならぬ」

レギーナ「えぇ、言われずとも!」

ハイド「相手は風使い。ロキ、対抗手段は・・・・・」

ロキ「・・・私を使え。」

ハイド「!?」

ロキ「お前ならできるだろう。もっとも、私が負傷している分、負荷は重いぞ」

シグルズ「え、いきなりマージ・ウェイクなんてしちゃうつもり?」

フィーネ「覚悟があるなら、するべき状況でしょうね。」

ハイド「覚悟は、魔剣を握った時に決めております。ロキ」

ロキ「思いのほか事の進みが早くて助かる。では・・・『マージ・ウェイク』!」

シグルズN「ロキがハイドの手を取った瞬間、ロキがハイドの身体に宿った。
   が、その時すでに、レギーナの視力は聖槍の力により回復していた。」

レギーナ「全く、失明だなんて嫌な体験をしましたわ。
   ロンギヌスの治癒能力がなかったら、いつまで失明していたことか。」

ロンギヌス「洗礼を受けたこの目を濁した罪・・・・・その血を以て償うがいい!」

フィーネ「だそうよ、ハイド?そろそろ動けそうかしら?」

ハイド「(深呼吸)・・・はい。お待たせして申し訳ありません。」

ロキ「初めてにしては上々。さぁ、本番はこれからだ。」

ハイド「えぇ。・・・ハイディングスフェルト・フォン・シラー、いざ参らん!」

ロンギヌス「そのような棒切れで、我らに刃向うなど!」

レギーナ「呆れて笑いが漏れてしまいますわ。『ジーベン・ヴィント!』」

ロキ「飛べ、ハイド!」

ハイド「っ!」

フィーネN「地を這う風の刃を避けようと、ハイドが地を蹴った。
   すると、まるで空に道があるかのように、ハイドは宙を駆けている。」

レギーナ「な、なんですの!?風もないのに、宙を・・・!?」

ロキ「私の兵装である靴を履かせた。
   空も海も関係ない、足をつく場所は全て地となる。」

ロンギヌス「宙に浮けども、逃げ場はあらず!『ノイン・ヴィント』!」

ハイド「アハトは中段、ゼクスは上段、ジーベンは下段。
   ノインで竜巻・・・されど!」

レギーナ「風を切るおつもり?そんなことで、わたくしは止められませんわ!」

ハイド「っ、突進か、ぅぐっ!?」

シグルズN「風に乗ったレギーナが、ハイド目がけて槍を振り下ろし、
   ハイドは地面へ落下した。」

ロキ「ハイド、立てるか!?」

ハイド「っ、はぁ・・・はぁ・・・・なんとか。」

ロンギヌス「終焉を・・・『ツェーン・ヴィント』!」

ロキ「来るぞ!」

ハイド「負けるわけには・・・いかない・・・・・!」

フィーネ「目を開けなさい。敵はまだそこにいるでしょう?」

ハイド「フィーネ様・・・!?」

フィーネ「嵐ごときに、立ち止まらせはしない。
   『蔓延るは霧 その身へ絡む無形の鎖 シュヴァルツ・ニーベル』」

シグルズN「フィーネが携えていた魔剣『ダーインスレイヴ』の鞘から、
   黒い霧が漂い始める。
   霧は、聖槍より放たれた風に流されるどころか、
   烈風をそよ風に変えてしまった。」

ロンギヌス「我が風が・・・まさか、その霧は!!!」

フィーネ「『ダーインスレイヴ』は、抜かれれば血を吸うまで治まらない凶暴な魔剣。
   それを納めている鞘は、どんなに荒ぶるモノでも鎮めてしまう。」

シグルズ「聖剣だろうが魔剣だろうが、担い手の能力ごと鎮めちまうってわけさ。
   もっとも、敵味方の区別ができないってのが難点だがな。
   昨晩もこの霧でお前らの風を殺してやったんだけど〜?ヒャハハハハハ!」

レギーナ「これでは、風が使えない・・・!」

フィーネ「何をしているの?とっとと片付けなさい、ハイド。」

ハイド「っ、はい!」

レギーナ「ロンギヌス!」

ロンギヌス「力で我に勝とうなどと、笑止千万!」

ハイド「はぁぁぁあああああああああああ!」

ロキN「ミスティルテインを構えたハイドが、一直線に突進していく。
   それに対し、ロンギヌスは聖槍を大きく引き、突きの体勢を取る。」

ロンギヌス「直線上での一騎打ちなれば、槍の方が有利・・・!」

フィーネ「距離を目測でき、タイミングさえ合わせることができればね。」

レギーナ「ぁ、ロンギヌス!下がりなさい!」

ロキ「遅いわ!『常闇に落ちよ リヒロス・バルドル、ツァイロス』!」

ロンギヌス「ぐっ!?また視界を、ぐぁああああああああああああああああああ!!!」

ハイドN「全ての能力を封じていた黒い霧が、いつの間にか晴れていた。
   魔剣『ミスティルテイン』の能力によって視力を奪われたロンギヌスは、
   反撃のタイミングを完全に崩され、レギーナと共に地に伏している。」

レギーナ「わた、くしの・・・体に、傷を・・・・!」

フィーネ「先に武器を構えたのはあなた。
   どのような処遇を受けても、文句を言える立場ではない。」

シグルズ「さて、回復できないように、と。『シュヴァルツ・ニーベル』!」

ロンギヌス「我が瞬間回復まで封じたか・・・・くっ、
   もはや・・・これまで・・・・・マージ・ウェイク、解除!」

レギーナ「ロンギヌス!?どういうことですの!?」

フィーネ「逃げるつもり?」

ロンギヌス「使えぬ適合者など、引きとめる必要もなし。
   再び新たな契約を望めばいいだけのこと。」

シグルズ「だったらこっちも!マージ・ウェイク、解除!」

ロンギヌス「何!?」

シグルズ「今度はお前自身に刻みつけてやるよ!
   『放たれるは闇 その身を蝕む悠久の呪い シュヴァルツ・フルーフ』!」

ロンギヌス「ぐぉおおおっ!?貴様ァ・・・!この借りは、必ず!!!」

フィーネ「・・・逃げられたわね。」

シグルズ「追いかけちゃう?」

フィーネ「面倒は増やさないで。それより」

ハイド「あの車・・・もしや、教団の?」

フィーネ「お迎え、みたいよ?レギーナ」

ロキ「担い手が切り捨てた適合者であっても、
   この世界に顕現するのに必要な存在ではある。
   おそらくは、次の適合者が見つかるまで、生け捕りにされるだろうな。」

レギーナ「そんな・・・わたくしは、わたくしは騎士よ!
   決して折れることのない、洗礼を受けし聖槍の・・・」

フィーネ「(さえぎるように)あなたの刃は、元々鈍らだったようね。
   それと、使い慣れない武器は、扱うべきではない。」

レギーナ「いや・・・わたくしは・・・っ、ゼラフィーネ!!!」

シグルズN「敵対していたフィーネへ救いを求めて手を伸ばすレギーナだったが、
   傷ついた身体を教団の人間に運ばれ、シュヴァイツァー邸をあとにした。
   車を見送った後、ロキはハイドとのマージ・ウェイクを解除し、
   その場に膝をついた。」

ハイド「ロキ、傷は・・・」

ロキ「問題ない。やや深いが、私の身体は傷の塞がりが早い。」

ハイド「そうですか。しかし、後できちんと手当てをしましょう。」

ロキ「あぁ、よろしく頼む。」

フィーネ「ハイディングスフェルト」

ハイド「・・・フィーネ様。」

フィーネ「疲れたわ。さっさと片付けて、お茶の用意を」

ハイド「はい、すぐに・・・」

フィーネ「・・・・・晴れて魔剣の契約者になったのだから、
   もう下を向くのはやめなさい。」

ハイド「!・・・っ、は、はい!」

シグルズ「ニシシッ、これでや〜っと、ハイドも楽しくなってきたな〜」

ロキ「お前はいつでも退屈そうだな。私としては、見ていて非常に愉快だが」

シグルズ「・・・それ、嘘だよな?真実しか言わないんじゃなかったか?」

ロキ「ふっ、人間を誑かすことをしないだけだ。
   もっとも、神を欺くのは非常に恐ろしかったがな」

シグルズ「ケケッ、『面白かった』の間違いだろ?」

ロキ「そうとも言えないかもしれんな」

シグルズ「・・・お前、ホンット性格悪い。」

ロキ「貴様よりもな。」


ハイドM「魔剣『ミスティルテイン』と、その担い手ロキ。
   望んでいたモノを手に入れられた私は、やっと前を向けた気がした。
   やっと、やっと・・・フィーネ様を守ることができる。
   今度は、フィーネ様の力をお借りせずとも、勝利を、フィーネ様へ・・・!」





To be continued.
		



こちらの台本は、コンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちらへ


   
 台本まとめに戻る     TOPに戻る


PAGE TOP