Arc Jihad(アークジハード) -降り立つは遥かなる地-


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<登場人物>
 [ゼラフィーネ・フォン・シュヴァイツァー(フィーネ)]♀
表記:Seraphine von Schweizer
年齢:19
詳細:騎士の家に生まれた才色兼備の女騎士。
   冷静かつ気丈で、あまり感情を表に出さない。
   魔剣側の教団に所属しておらず、担い手を配下扱いにしている。

[シグルズ]♂
表記:Sigurd
年齢:(外見)20代半ば
詳細:魔剣『ダーインスレイヴ』の担い手で、フィーネの契約者。
   狂信的なまでにフィーネを気に入っており、常に状況を楽しんでいる。
   軽い表現をしても、どこか陶酔しているような、重みや含みのある言い方をする。
魔剣の能力:永遠に癒せない傷を与える(代償:剣が血を浴びるまで鞘に納まらない)
	  ※鞘の能力=全ての聖剣・魔剣が持つ能力による事象を鎮静化・解除する

[カレン・アブト]
表記:阿伏兎 花蓮(Karen Abt)
年齢:33歳
詳細:落ち着いた雰囲気を持つ看護師。適合者。
   ユリアが入院している病院に勤めている。
   未契約状態のまま、担い手と適合者の行動を監視している。





!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



[日本の空港。フィーネとシグルズがロビーに出てくる。]

シグルズ「ふ〜、長旅だったねぇ〜」

フィーネ「これでも早い方よ。遠回りすれば、プラス6時間だったもの。」

シグルズ「うわっ、だったら半日で済んだだけ良かったってことか。」

フィーネ「機内で襲われる可能性はなかったけれど、
   飛行機そのものを攻撃されていたら危険だった。
   移動時間の短縮は重要よ。」

シグルズ「移動中に襲われるのは辛いね。ただでさえ長旅だったってのに」

フィーネ「何事もなければそれでいい。・・・迎えが来ているから、行きましょう」

シグルズ「誰?」

フィーネ「お祖父(じい)様と契約していたあなたなら、覚えているはずだけど?」

シグルズM「そういって、フィーネはキャリーバッグを引きながら歩き始めた。
   凛としたフィーネの姿に、周りの連中は思わず見惚れているようだった。
   そんな目線を潜り抜けて外に出ると、フィーネの方へ女が歩み寄ってきた。」

花蓮「フィーネ様。ドイツからの長旅、お疲れ様です。」

フィーネ「花蓮、久しぶり。あなたこそ、わざわざ迎えに来てくれてありがとう。」

シグルズ「あぁ〜、花蓮だったか。
   そういえば、こっちにあるバジルの屋敷でお手伝いしてたね。」

花蓮「シグルズ・・・やはりあなたが、フィーネ様と契約を・・・・・」

フィーネ「私が望んだことよ。衝動的だったけれど、後悔はない。」

花蓮「・・・そう、ですか。」

フィーネ「祖父バジリウス・・・バジルお祖父様の、最後の良心を蔑ろにしたのも私。
   魔剣を握り、騎士としての道を選んだのも私よ。
   戦うことに関して、何のためらいも後ろめたさもないわ。」

花蓮「フィーネ様がそう仰られるのであれば、安心します。
   すっかり立派になられて、バジル様も喜ばれているでしょう。」

シグルズM「花蓮は、バジルが日本にいる時に雇っていた家政婦。
   戦いに巻き込まないようにって理由で、まぁほんの数か月程度の雇用だったけど。
   未だに契約をしていないとはね。」

花蓮「それでは、車の方へ。荷物はトランクの方へ積ませていただきます。」

フィーネ「ありがとう」

シグルズ「真っすぐ屋敷に行く?」

フィーネ「いいえ。花蓮、寄ってほしいところがあるの。」

花蓮「かしこまりました。今日一日は休暇を頂いているので、お付き合いしますよ。」



間。



[とある霊園。千という家の墓の前で、フィーネが手を合わせる。]

シグルズM「花蓮の車に乗り込んだ俺たちは、数十分かけてある場所に辿り着いた。
   そこはとても静かで、人気(ひとけ)はあまりない。
   たくさんの似たような四角い石が並んでいる。
   そう、ここは・・・フィーネの叔父と叔母が眠る場所。」

花蓮「ユリアさんのご両親が亡くなられたのは、10年も前のことだと聞いております。」

フィーネ「えぇ。従妹であるからと、責任を持って引き取りたかったのだけれど。」

花蓮「身体が弱っておりましたし、無理もさせられません。
   国籍の取得等、手続きも多数あります。」

フィーネ「日本の医療でも十分治療できる病だったもの、
   慣れた環境下での治療が最も効果的だわ。」

シグルズ「ユリアちゃん、元気してっかな〜」

花蓮「もうじき退院予定です。念のため、やや入院期間を長くされておりますが。」

シグルズ「へぇ〜?・・・なぁ花蓮。さっきから何か言いたそうだなぁ?」

花蓮「っ・・・・・」

フィーネM「シグルズに指摘された花蓮は、わずかに動揺を見せた。
   シグルズは、決して悪行を見い出したわけではない。
   彼が気づいたもの、それは。」

シグルズ「何か伝えづらい、嫌な情報がある、とか?」

花蓮「・・・・・。」

シグルズ「フィーネに言いにくい事情だろ?けど言わないわけにもいかない。
   黙っていたところでいつかはバレる。
   けれど言葉を紡ぐのが怖い。
   自分の言葉で、フィーネを傷つけてしまうかもしれな・・・」

フィーネ「(さえぎるように)シグルズ」

シグルズ「おっと。喋りすぎちった?」

花蓮「いえ、シグルズが言った通りです。
   フィーネ様には、必ずお伝えしなければならないことがあります。
   ・・・ユリアさんのことです。」

フィーネ「体調でも崩したかしら?それとも、養子縁組を望む連中でも?」

花蓮「いいえ。ただ・・・・・ユリアさんは、適合者です。」

フィーネ「!」

シグルズM「フィーネは不意に驚愕を露わにした。
   怒りや不快感、苛立ちといった負の感情以外はめったに表に出さないのに、
   唯一の親族のこととなると、驚きは隠せないらしい。」

花蓮「先日、周囲から認識されていない男と対話しているのを目撃しました。
   場所は病院の中庭、後ろ姿でしたが、黒髪で長身の男でした。
   状況的に、担い手である可能性が高いです。
   男は病院を去ったようでしたので、契約はされていないと思います。」

フィーネ「・・・・・そう・・・ユリアも、適合者・・・・・」

花蓮「職務中でしたので、ろくに観察もできませんでしたが・・・
   入院されているユリアさんと契約したならば、病室にいてもおかしくありません。」

シグルズ「いなかったわけだから、契約はされなかった、ってことだな。」

フィーネ「・・・引き続き、ユリアを頼むわ。看護師の職務を怠らない程度に」

花蓮「御意にございます。」

フィーネM「両親も、叔父様も叔母様も亡くなられて、お祖父様も亡くして。
   肉親は、もうユリアだけになってしまった。
   私が守らなければ、騎士である私が。
   ・・・・・そのためにも、私は剣を握り直す必要がある。」

シグルズ「フィーネ、そろそろ行こう?ノエルたちが愚図っちゃうよ」

フィーネ「花蓮。もう1つ、行ってほしい場所があるの。」

花蓮「はい、どちらでしょうか?」

フィーネ「かつて、お祖父様が剣を振るっていた場所。あそこなら、誰も来ない。」

花蓮「!・・・・わかり、ました。」

シグルズ「ん?今度はどこ行くの?」

フィーネ「あなたも覚えていると思うわ。お祖父様が個人的に作らせたものだから。」

シグルズM「そう言って、フィーネは車へ乗りこんだ。
   どこか様子がおかしいフィーネを不思議には思ったけど、俺はあえて何も言わず。
   なんとなくだけど、言葉で聞いちゃいけないような気がしたから、ね。」



間。



[円形の決闘場。決闘場の奥へ進むフィーネの後を、シグルズと花蓮がついていく。]

花蓮「こちらでお間違いないですか?」

フィーネ「えぇ。察してくれてありがとう。」

花蓮「バジル様が日本にいらっしゃる間は、私も何度も訪れた場所ですから。」

シグルズM「あれからまた数十分かけて辿り着いた場所は、人里離れた決闘場。
   あぁ、ここなら俺も覚えてる。」

フィーネ「お祖父様が残された、心置きなく剣を振るえる場所。
   大きな決闘になる時は、いつもここを使っていた。」

シグルズ「クスッ、そうだったね。フィーネも、この場所でバジルの戦いを見ていた。」

花蓮「フィーネ様、一体何を・・・?」

フィーネ「・・・花蓮。悪いけれど、下がっていて頂戴。」

花蓮M「決闘場の中央へ進んだフィーネ様は、
   後をついてきていたシグルズと距離を置き、静かに振り返る。
   そして、嵌めていた手袋を外すと、対峙したシグルズの方へと投げた。」

シグルズ「っ、フィーネ?」

フィーネ「取ったわね」

シグルズ「え・・・ぁ、まさかこれ・・・!?」

花蓮「手袋を相手に投げる行為は、決闘の申し込み・・・フィーネ様・・・・・」

フィーネ「魔剣を。」

シグルズ「ちょっと待てフィーネ!まさか俺とやり合う、なんてことは・・・」

フィーネ「戯言は不要。さっさと剣を出しなさい。」

シグルズ「・・・本気なんだな。」

花蓮「フィーネ様!なぜ担い手と決闘を・・・」

シグルズ「(さえぎるように)黙ってろよ、花蓮。これは、フィーネなりのけじめだ。」

花蓮「シグルズ、あなた!」

シグルズ「『揮(ふる)えよ その身で刻みし鮮血を喰らえ ダーインスレイブ!』」

花蓮M「半ば自棄(やけ)になったように、シグルズは二振りの魔剣を召喚した。
   コピーをフィーネ様に投げ渡すと、フィーネ様はなんのためらいもなく鞘を抜き、
   その刃先をシグルズへ向け構えた。」

シグルズ「珍しく積極的だねぇ。フィーネから決闘の申し込みなんて」

フィーネ「・・・『咎を負うは騎士。握りし剣に命を捧ぐ。』」

シグルズ「!」

フィーネ「『悠久なる時を経てなお、我が命、折れることなく』」

シグルズ「・・・『下賤を払い、悪を切り伏せ、聖者を守りし刃なれば』」

フィーネ「『騎士もまた、贖(あがな)いの意を以(もっ)て罪を振るう』

シグルズ「『黒き闇満(み)つ道なれど』

フィーネ「『我が正義ゆえ』」

シグルズ「『咎を負うは誉れなり。』」

花蓮M「彼らが唱えるように紡いだのは、生前のバジル様が、
   決闘の直前に、相手に必ず言っていた言葉。
   騎士は咎人であると、自らに再認識させるための、儀式のような行為。」

フィーネ「(軽く息を吸って)・・・いざ、参らん・・・っ!」

花蓮M「先手を打ったのは、フィーネ様だった。
   魔剣の刃が、シグルズを狙って振り上げられる。
   咎の黒に染まった剣の太刀を受け止めたのは、同じ色に染まった魔剣。」

シグルズ「フッ、全然容赦ないなぁ。だったらこっちも!」

フィーネ「はあぁっ!」

シグルズ「よっと!そぉらっ!」

フィーネ「隙だらけよ!」

シグルズ「見せてるだけだ、っての!」

フィーネ「甘いっ!」

シグルズ「ちぃっ、『シュヴァルツ・フルーフ』!」

花蓮M「魔剣から生み出された斬撃が、フィーネ様を襲う。
   しかし、フィーネ様は慌てる様子もなく、ひらりと回避してみせた。」

シグルズ「クククッ、今日のフィーネは積極的だなぁ。
   ガンガン攻めてくれちゃう辺り、俺興奮しちゃいそう。」

フィーネ「シグルズ」

シグルズ「ん?」

フィーネ「・・・・・茶番は、そこまでにしなさい。」

シグルズ「!?」

花蓮「フィーネ様!この決闘は無意味です、お体に触ります!」

フィーネ「あなたは黙っていなさい、花蓮。これは、私の問題よ。」

花蓮「フィーネ様・・・・・!」

シグルズ「ククッ、わかったよフィーネ。俺はフィーネの望む通りにしてあげる。」

花蓮M「恍惚的な笑みを浮かべたシグルズは、片手で持っていた魔剣を両手で握り直す。
   その手を深く後ろへ下げ、一呼吸置いた後、ゆっくりと口角を上げた。」

シグルズ「フィーネ・・・愛してるよ・・・・フィーネ!!!」

フィーネ「ぐっ!?」

シグルズ「ヒャハハハハ!よく防いだねフィーネ!そぉら!」

フィーネ「っぁ!?」

シグルズ「ほらほらぁ!休む暇なんて無いよ、フィーネ!!!」

フィーネ「愚問、よ!」

シグルズ「ふっ!はあっ!」

フィーネ「っ!」

シグルズ「あっれぇ〜?今の蹴りは奇襲のつもりだったんだけどなぁ〜?
   なんで避けられんのォ、フィーネ?」

花蓮M「こちらが一呼吸するまでの間に、シグルズはフィーネ様に何度も斬りかかった。
   担い手の攻撃が契約者に通らない以上、シグルズは魔剣を折ろうと攻撃するはず。
   しかし、その斬撃は、明らかにフィーネ様の身体を狙っていた。
   驚異的に飛躍したシグルズのスピードと重い斬撃を、
   フィーネ様はかろうじて防ぎ、避けているようだった。」

シグルズ「フィーネ・・・フィーネフィーネフィーネ、フィーネぇ!」

花蓮M「狂気に満ちたシグルズが、フィーネ様へ襲いかかる。」

シグルズ「ねぇフィーネ!俺は手加減なんてしてないよ!?容赦もしてない!
   担い手と契約者じゃ、圧倒的な力の差があるはずなのに、なのに!
   なんでフィーネは、俺の攻撃を全部防げるんだよォ!?」

花蓮M「まるで弾丸のように、目で追うのもやっとの速さの斬撃が、
   フィーネ様に降りかかる。
   決して余裕はないが、フィーネ様は必死に攻撃を防いでいた。」

シグルズ「何度愛を囁いても、その体に刻み込もうとしても、その心を奪おうとしても!
   フィーネはいつだって堅牢で!どんなものでも拒絶してきた!
   いつになったら、どうすればフィーネを侵せるんだ!?」

フィーネ「はぁ・・・はぁ・・・っ!」

花蓮M「容赦のない、黒い斬撃の雨。
   フィーネ様の魔剣が折れるか、フィーネ様がシグルズを切り伏せるか。
   狂気と愛情が入り混じったシグルズの言葉は、さらに高らかに紡がれる。」

シグルズ「あぁ、愛しい愛しいゼラフィーネ、俺の契約者にして最高の騎士!
   どんな対価を以てしても、無条件で譲られることのないその存在を、我が手に・・・」

フィーネ「ふんっ、戯言を。狂言は、聞き飽きた。
   ・・・私は誰のモノにもならない、誰にも屈しない、騎士の剣を、折らせはしない。」

シグルズ「ククッ、そっかぁ・・・それじゃあ・・・・・誰にも渡さない。
   フィーネの心も、身体も、剣も何もかも全て!
   俺が手に入れる前に、よそ者なんかにフィーネは渡さない!
   渡すくらいならいっそ、俺が・・・俺が全部壊してやんよ!」

花蓮M「シグルズが、斬撃の雨と共にフィーネ様へ突進する。
   一方でフィーネ様は、剣を地面に向け、その場に立ち尽くしていた。」

シグルズ「愛してるよ・・・フィーネぇ!!!」

フィーネ「・・・黙れ、下郎。」

シグルズ「っ!?」

花蓮M「・・・・・瞬きをする時間すら、与えられなかった。
   突進してきたシグルズは、フィーネ様の前で急停止した。
   そして、その首元には、フィーネ様の持つ魔剣の刃が。
   やや首を傷つけたようで、魔剣には一筋、血が滴っている。」

フィーネ「泣き喚くくらいなら・・・吼えるくらいなら、もがきなさい。
   地を這う蛇だろうと、空を舞う鳥だろうと、もがくことはできる。
   それが悲願であるならば、嘆くことなく、その命尽きるまで、戦いなさい・・・!」

花蓮M「それはまるで、フィーネ様が、フィーネ様自身へ向けているように聞こえた。
   いや、実際にそうなのだろう。
   フィーネ様を手に入れられないシグルズの嘆きを、
   バジル様を失ったご自身に重ねられて・・・・・。」

シグルズ「フィーネ・・・・・クスッ、そうだね。」

フィーネ「っ、ぁ・・・・・」

シグルズ「おっと。長旅の後にあれだけ動いちゃ、さすがにお疲れだろうね。」

花蓮「フィーネ様!」

フィーネ「・・・屋敷へ向かうわ。車を」

花蓮「は、はい。」



間。



[日本にあるシュヴァイツァー邸、フィーネの部屋。フィーネがベッドに腰掛けている。]

フィーネM「屋敷へ向かう道中は、やけに長く感じられた。
   慣れない長時間の移動と、直後の激しい運動を伴う戦闘による疲労の影響だろう。
   結局、屋敷に着いてからも、私の身体の疲労は取れず、
   シグルズによって運ばれなければならなかった。」

花蓮「フィーネ様。以前にもまして、ご自分を大事にされていない気がします。
   甘やかせとは申し上げませんが、もう少し自分を労わって差し上げて下さい。」

フィーネ「・・・考えておくわ。」

花蓮「フィーネ様!」

シグルズ「無駄だって、花蓮。これがフィーネの、不器用なやり方なんだからさ。」

花蓮「シグルズ・・・あなたとて、なぜ止めなかったんですか!?」

シグルズ「止めることは、フィーネの意思に背くことになる。
   不安・動揺・躊躇(ちゅうちょ)・憤り、そういったものを放置していたら、
   フィーネが本気で戦えなくなる。
   あれは、一種のストレス発散だよ。」

花蓮「そんな、こと・・・・・」

フィーネ「花蓮。」

花蓮「っ、はい、なんでしょうか?」

フィーネ「・・・・・心配してくれるのはありがたいけれど。
   私は、立ち止まるわけにはいかない。
   お祖父様の跡を継ぎ、シュヴァイツァーの当主である以上、
   最も大きな咎を断ち、背負う必要がある。
   お祖父様の仇を討つ覚悟は、わずかに揺らぐことさえ許さず、決して忘れず。」

花蓮「!・・・バジル様の、仇討(あだうち)を・・・・・」

フィーネ「尊敬していたお祖父様を殺され、残されたのはユリアだけ。
   あの子の安寧を守るためにも、奴を、アガーテ・クラインハインツを、
   この手で断罪する必要がある。
   それだけは、何としても成就されなければならない、私の悲願よ。」

花蓮「・・・・・わかりました。私は、これ以上フィーネ様を止めはしません。
   しかし、これだけは覚えていて下さい。
   あなたが傷つくことで、悲しむ方がいらっしゃる、ということを。」

フィーネ「・・・えぇ、肝に銘じておくわ。」

花蓮M「疲れ切った表情のフィーネ様を心配しつつも、私は屋敷をあとにした。
   今後は、まだ入院しているユリアさんの監視を続けなければならない。
   恩人であるバジル様の残された、大切な親族、後継者。
   やや危なっかしくも思える行動の真意を知れば、誰もが心を痛めることだろう。」

フィーネ「・・・・・・はぁ。」

シグルズ「おろ、やっと横になったね、フィーネ。
   疲れてるんだから、大人しく寝ちゃえばいいのに。」

フィーネ「ノエルたちがいなかったわね。どこかに遊びに行ってるのかしら?」

シグルズ「あ〜、そうっぽい。さっき書き置き見つけたよ。はい」

フィーネ「・・・・・『遊びに行ってきます。暗くなる前には帰ります。』」

シグルズ「へぇ〜、そう書いてあるんだ。俺には読めないよ」

フィーネ「フランス語よ。隣の国だもの、慣れてる。」

シグルズ「クスッ、そっか。
   それにしても、やっぱフィーネの剣は折れなかったな〜。
   手ぇ抜いたらフィーネに怒られるから本気出したってのに。
   斬撃は防がれるし、蹴りは避けられちゃうし、しまいにゃ俺首切られちゃうし。
   フィーネ、もしかしてそこらへんの担い手なら一人で・・・」

フィーネ「・・・・・。」

シグルズ「フィーネ?あぁ、やっぱ思いっきり疲れちゃってたんだね。
   今まで我慢しすぎたんだよ。
   しょうがないなぁ・・・・・ゆっくりおやすみ、フィーネ。」



To be continued.
		



こちらの台本は、コンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちらへ


   
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