Arc Jihad(アークジハード) -責めるは相対(あいたい)する片翼-


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・少しでも疑問があれば利用規約を読んで、それでも分からないなら問い合わせください



<登場人物>
[ルシファー(ルキ)]♂
表記:Lucifer
年齢:(外見)20代後半
詳細:魔弾『フライクーゲル』の担い手。
   契約者を罪へ誘う体質を持ち、これに耐えられる者を探して契約を繰り返していた。
   物静かで常に無表情だが、どこか悲しい雰囲気を纏っている。
魔剣の能力:射出した魔弾をコントロールする(代償:1発ごとに消費、継続可能時間63秒)
      魔弾に触れた人間を一時的に支配する(代償:継続可能時間63分)
      ※ルキの能力:血を与えることで、万物の傷を瞬時に癒す

[リーゼロッテ・ローゼンハイン(リズ)]♀
表記:Lieselotte Rosenhain
年齢:24
詳細:ミカエルの契約者で、『ミスティオン』ドイツ支部に所属している。
   冷静な判断力を持つが、堅苦しい雰囲気が苦手で緊張を解きやすい。
   面倒見と物分かりの良さを以て、適合者の理不尽な契約の阻止に奔走している。

[ミカエル]♂ ※ミシェル
表記:Michael
年齢:(外見)20代後半
詳細:聖剣『サン=ミシェル』の担い手。
   ルシファーと瓜二つの顔をしているが、髪と目の色は対照的に白金色をしている。
   根は真面目でリズを心から愛している反面、
悪に加担する双子の兄に怒りと悲しみを向けている。




!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



[夜、日本の公園。リズとミカエルが息を潜めてターゲットを確認している。]

ミカエル「見つけた。こんな見通しのいい場所にいるとは・・・・・・」

リズ「契約者の姿が見当たらないけど、どうしてかしら?」

ミカエル「さぁな。だが、アイツと1対1で話ができるまたとないチャンスだ。」

リズ「!クスッ、久々にお兄さんに会えるのが嬉しい?」

ミカエル「なっ、ち、ちが!」

リズ「わかってる。ミシェルが怒ってることぐらい、わかってるよ。」

ミカエル「り、リズ、その呼び方はやめてくれ。僕はミカエルだと何度言えば・・・・・」

リズ「(食い気味に)ほぉら!早く行くよ、ミシェル!」

ミカエル「リズ!」



間。



[日本の公園。街灯の下、ルキが一人佇んでいる。]

ルキM「月のない空の下、人に作られた光の下に、俺はいた。
   契約者であるアガーテは今頃、マフィアとパーティーを楽しんでいるんだろう。
   魔弾を必要としないということは、俺を必要としないに等しい。
   俺自身、具現化さえできれば契約者と共にいる必要など・・・・・・ない。」

ミカエル「かつての大天使が随分と落ちぶれたものだな。」

ルキ「!・・・・・久しいな。」

ミカエル「元大天使ルシフェル・・・・・いや、堕天使ルシファー!」

ルキM「振り返った先に現れたのは、俺と変わらぬ顔を持つ男。
   漆黒に染まる俺とは対照的に、白金色(しろがねいろ)の髪と眼。
   俺と相対する存在、血を分けた者。」

リズ「わぁ、ホントにそっくり。髪と眼の色を変えただけって感じ。
   ・・・インストールしたパーソナリティも、因果の強いものになった、のかな?」

ルキ「・・・・・契約者も一緒か。」

ミカエル「あぁ。」

ルキM「続かない会話。担い手になる前もこうだった。
   一度険悪になった関係の修復は困難すぎて、繋がりは飾り程度だった。
   もう二度と、会うことはないと思っていたのに。」

リズ「え〜、っとぉ・・・・・は、話が進まないから、私がするわ。
   『ミスティオン』から情報を受けて、私とミシェ・・・ミカエルは、
   魔弾の担い手と契約者を確認しに来たの。
   あなたが『フライクーゲル』の担い手で間違いないかしら?」

ルキ「答える義理はない。」

リズ「って、それが殆ど答え言ってるようなものなんだけど・・・・・」

ミカエル「契約者はどうした?」

ルキ「聞いてどうする?」

ミカエル「繰り返される数多の犯罪。
   それに貴様も加担しているとなれば、看過することはできない。」

ルキ「・・・・・お前には関係ない。」

ミカエル「っ、貴様はいつもそうやって!!!」

リズ「(食い気味に)ミカエル、ちょっと落ち着いて。頭に血を昇らせすぎ。
   私たちはあくまで情報の確認に来ただけでしょ、ね?
   元々仕事の範囲外で行動しちゃってるんだから、戦闘は避けて。」

ミカエル「ぐっ・・・・・」

ルキ「戦闘を避ける理由は、そちらの損害を抑えるためか?」

リズ「それもあるけど、魔弾との戦闘は可能な限り避けるよう忠告を受けてるの。
   あなたがどれほど強いかは知らない、報告以上の情報は何もわからない。
   想定外の損害は御免被(こうむ)りたいし、下手にあなたを壊すわけにもいかない。
   契約者のいないところで傷をつけて変な因縁を付けられても困るもの。」

ルキ「・・・その心配は、不要だ。」

リズ「え?」

ルキ「『舞い踊れ その身で咲かせよ罪の華 フライクーゲル』」

リズ「ま、待って、私たちは!!!」

ルキ「『サマエル』」(兵装の銃を召喚し、構える)

ミカエル「下がるんだリズ!
『轟け その身に纏え雷炎(らいえん)の神託 サン=ミシェル』!」

ルキ「『フライクーゲル、アリア』!」

ミカエル「どこを狙って・・・・・ぁ、リズ!」

リズ「ぅわあああああ!あ、危なかった・・・・・」

ミカエル「リズ、ケガは?」

リズ「私は平気、大丈夫!」

ミカエル「(ルキに向かって)貴様・・・・・どこまで堕ちれば気が済む!?」

ルキM「担い手の攻撃は、こちらの世界の人間には無効となる。
   だが、効果がないのは人間だけで、構造物を破壊することはできる。
   街灯を撃ち抜き、契約者を狙って倒したものの、
   間一髪といったところで回避されてしまった。」

リズ「報告通り、召喚されたのは黒い魔弾が2つ。
   それも、銃に装填されるんじゃなくて、担い手の近くで浮いてるだけ。
   あんなに無防備で、あの光邦(みつくに)さんに勝ったって言うの・・・?」

ルキ「ミツクニ?・・・あぁ、先日の聖剣か。」

ミカエル「そうだ。お前の魔弾で殺した、担い手の契約者。あとどれだけ殺すつもりだ?」

ルキ「わからない。アガーテとの契約が切れるまでは、少なくとも。」

ミカエル「殺し続ける、と?」

ルキ「・・・・・。」

ミカエル「わかった・・・わかったよ・・・・・お前は、ここで殺す!」

リズ「ちょっ、ミカエル落ち着いて!」

ミカエル「『高潔なる奇跡を! サンク・クラージュ』!」

ルキM「炎のように波立っている剣身(けんしん)が落雷を受け止め、その身に稲妻を宿した。
   聖剣『サン=ミシェル』の刃先と殺意を俺に向けるミカエルに対し、
   ミカエルの契約者は協力体制を見せていない。
   あくまで、戦闘は担い手同士に行わせるつもりらしい。」

リズ「ミカエル、あんまり無理しないで。
ルシファーとは神話だけの関係じゃないんだから。」

ミカエル「あぁ、わかってる。」

ルキ「気遣いは不要だ。『フライクーゲル、デュオ』」

ミカエル「2弾同時、だが!」

ルキ「鏡合わせの動きをしたのは、先日のこと。」

ミカエル「何!?ぐっ!」

リズ「ミカエル!」

ミカエル「かすっただけだ!ただ、報告とは違う。」

リズ「数が少なくても、バラバラで動かせるってことね。気を付けて!」

ルキ「『シュネル』」

ミカエル「ふっ!報告通りの攻撃パターンなら、当たりはしない!」

ルキ「・・・・・『フライクーゲル、トリオ』」

リズ「3つ目、まだ増えるの!?」

ミカエル「僕に纏わりつくな!この!」

ルキ「そのまま踊り続けろ。」

ミカエル「断る!あまり使いたくなかったが・・・・・
   『来たれ、世界樹の峻厳(しゅんげん) エクゼキューション、ケテル』!」

ルキ「っ、魔弾が、止まって・・・!?」

ミカエル「まずは1つ!せいっ!」

リズ「3時の方向、上から来るわ!」

ミカエル「『エクゼキューション、コクマー』!はぁあっ!」

ルキM「コントロールしているはずの魔弾が、ミカエルの周囲で急に停止してしまう。
   ・・・いや、正確には止まってはいないが、そう見えるほどに動きが鈍る。
   あの技はおそらく、数秒間だけ動きを鈍らせるもの。
   俺がいくら操作しようとも、魔弾はミカエルの近くでほぼ停止状態となり、
   飛行していた3つ全てが薙ぎ払われてしまった。」

ミカエル「はぁ、はぁ、飛んでいた魔弾は全て落としたぞ。」

ルキ「そのようだな。『フライクーゲル、アリア』」

リズ「いつの間に生成と装填を・・・・・・」

ミカエル「たかが1発で僕を仕留めるつもりか!舐めた真似を!」

ルキ「聖剣の間合いに入らなければ、お前の攻撃は届かない。」

ミカエル「それはっ、どうかな!?『飛べ、烈火の如く フィー・デ・エクレール』!」

ルキ「っ!『レオパルト・デア・ブルート』!」

ミカエル「捉えた!はぁああああああああああああああああ!!!」

ルキM「聖剣に宿った稲妻が、魔弾を伝って俺の方へ飛んできた。
   慌てて防御壁を展開するも、その隙にミカエルが距離を詰めてくる。」

リズ「この間合いなら魔弾よりミカエルの方が速い、行ける!」

ミカエル「うぉおおおおおおおおおお!ルシファアアアアアアアアアアア!」

ルキ「っぐぅ!?」

リズ「やった・・・・・嘘、銃身で受けた!?」

ミカエル「少しは、丈夫な兵装を持っているよう、だなっ・・・!」

ルキ「咄嗟の、防御程度なら、十分だ。
『楽園を這う蛇絡(だらく)に呑まれよ シュランゲ・ディー・ブルート』!」

ミカエル「なっ、しまった!くそ!」

ルキ「そのまま動いてくれるな。蛇は絡みつくが、お前を殺しはしない。」

ミカエル「戯言を、ほざくなぁ!『リベラシオン・リュミエール』!!!」

ルキ「衝撃波・・・・・いや、光で蛇を跳ね除けたか。」

ミカエル「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・!」

リズ「ミカエル下がって。感情的になって消耗しすぎてる。」

ミカエル「(食い気味に)いいや!今距離をとれば、僕の間合いじゃなくなる。」

リズ「近すぎても回避できない!それに、私たちの目的はルシファーを倒すことじゃ・・・」

ルキ「契約者の意志に反するか。『シュターブ・デア・ヴィーナス』!」

ミカエル「くっ、な、なんだ!?」

リズ「眩しいっ・・・!」

ルキ「もう、俺に構うな。」

ミカエル「ぁ、逃がすか!『リベラシオン・リュミエール』!」

ルキ「光で光を押し返せるとでも?」

ミカエル「貴様のような、一方的に眩しいだけの光では、ないっ!」

ルキ「・・・お前は知らなくていい。光の儚さも、闇の深さも。」

ミカエル「うぉおおおおおおおおお!!!」

ルキM「相手の目を奪うための光を退けようと、ミカエルが必死にもがいている。
   もしこれがただの光と光だったら溶け合ってしまうだけだというのに。
   光が消えれば、待っているのは・・・・・」

ミカエル「はぁあああ!っ、どこだ!?」

リズ「目が暗闇に慣れてない、ミカエル!」

ルキ「『フライクーゲル、アリア』」

ミカエル「しまっ!?」

リズ「いやあああああああああああ!!!」

ルキ「・・・・・『アウフーレン』。」



間。



[同公園。ルキの放った魔弾が、ミカエルの目の前で静止している。]

ミカエル「・・・・・・・・・どういう、つもりだ?」

リズ「ミカエル・・・」

ミカエル「なぜ、なぜ魔弾を止めた!?なぜ僕を殺さない!?
   貴様はいつも、いつもいつもいつもいつもいつも!そうやって!!!」

ルキM「激昂のあまり声を荒げるミカエルの眼前には、
   宙に浮いて静止した状態の魔弾があった。
   再び動くことのないそれを掴みとったあたりで、
   ミカエルの契約者が間に割って入る。」

リズ「聞きたいことがあるの、2つだけ。答えて。」

ルキ「・・・・・。」

リズ「答えてくれたら、今日のところは見逃してあげる。」

ミカエル「リズ!」

リズ「ミカエルは黙ってて!私たちの任務は、魔弾の担い手及び契約者の監視。
   深追いは避けるように言われてるし、ミカエルも消耗してる。
   (ルシファーに向かって)・・・お互いのためにも、私の質問に答えて。」

ルキM「俺と対峙するその女は、恐怖を必死に隠しつつ、
   決して自らを不利に陥らせないよう慎重に言葉を紡いでいた。
   恐怖は俺に対してではなく、おそらくは、ミカエルの喪失に対するものだろう。
   初めから、ミカエルを殺すつもりなど、俺にはないのに。」

リズ「現在の契約者、アガーテ・クラインハインツとの契約が解除された場合、
   他の適合者と契約するつもりは?」

ルキ「・・・アガーテが死ぬとすれば、それだけ強い敵に遭遇するということ。
   アガーテより先に死ぬことはないと思うが、その場で始末される未来しか見えない。」

リズ「もし、生き残ったら?」

ルキ「誰かが消してくれるまで、彷徨うだろうな。」

ミカエル「ルシファー・・・・・・」

リズ「わかった。じゃあもう1つ。あなた、『3つ目の魔弾』はどこにやったの?」

ルキ「!?」

ミカエル「リズ?何を言って・・・」

リズ「昔、ドイツのオペラに連れて行ってもらったの。
『デア・フライシュッツ』、悪魔の魔弾・フライクーゲルが作られるストーリー。」

ミカエル「!」

リズ「ある男が、悪魔の力が宿った魔弾を63発鋳造した。
   すると悪魔が現れ、こう言った。『そのうちの3発は自分のものだ』。」

ルキ「・・・この世界にも、魔弾の伝承は残っていたか。」

リズ「あなたが召喚し、常に自分の周囲に浮かべていたのは、2発の黒い弾丸。
ミカエルに向かって撃っていたのは銀色の弾丸。
弾丸は使用すれば壊れたと判定されてもおかしくない使い捨ての武器。
ということは、使用していない黒い弾丸が本体とみて間違いない。
伝承通りなら、悪魔の魔弾は全部で3発あるはずよ。」

ルキM「随分と聡明な女だ、怯えているだけではないらしい。
   だが、そんな情報を聞いて何をするつもりか。
   魔弾の在り処はハッキリと覚えている。
   彼女を、巻き込みたくはない。」

リズ「さぁ答えて、『本体である3つ目の魔弾』はどこ!?」

ルキ「・・・・・咎無き者へ渡した。約束の証(あかし)に。」

リズ「咎無き者?」

ルキ「・・・これ以上、答える義理はない。」

ミカエル「っ、待てルシファー!僕はお前を殺す!絶対に!」

ルキ「!・・・フッ、お前は本当に、嘘が下手だな。」

ミカエル「なっ・・・・・」

ルキM「『嘘をついているかどうかを見極めるには、目を見ればいい』。
   それを教えてくれたのは、再会を約束したか弱き少女。
   久しく引き金を引いたのも、教えられたことを実践したのも、
   相対(あいたい)する存在に対して、か。
   答えるべき問いに答えた俺は、ミカエルたちに背を向け、その場をあとにした。
   一瞬、ミカエルが俺を引き留めようとした様子だったが、
   契約者が止めたらしい。
   それ以上のことは、闇夜の静寂に飲まれた俺が知る由もなく。」


[同公園。残されたミカエルとリズが警戒を解く。]

リズ「ミカエル、大丈夫?ケガは?」

ミカエル「無傷だ。ゴメン、つい感情的になってしまった。」

リズ「ううん、これぐらい予想済み。
今から日本支部に連絡しても怒られるだけだし、一度ホテルに戻ろう?」

ミカエル「あぁ。・・・・・リズ」

リズ「ん?何?」

ミカエル「どうして、3つ目の魔弾の在り処を聞いていたの?」

リズ「あ〜それね。念の為、ってやつかな。」

ミカエル「どういうこと?」

リズ「私たち適合者と、ミカエルやルシファーみたいな担い手が契約するには、
   聖剣や魔剣に直接触れなくちゃいけないでしょ?
   ミカエルの持ってる『サン=ミシェル』だったら1つしかないけど、
   ルシファーの『フライクーゲル』は3つで1つ、つまり分散可能な武器。
   仮にアガーテが死んだとして、3つ目の魔弾を別の適合者が持っていた場合、
   実質的にルシファーは、間髪(かんぱつ)入れずに連続して契約ができる。」

ミカエル「まさか、僕たちの把握していない適合者に渡して、逃げ場を確保している?」

リズ「あくまで可能性だけどね。・・・・・理不尽な契約なんて、させたくない。」

ミカエル「うん。そのために僕とリズがいる。」

リズ「ふふっ、ありがと、ミシェル。」

ミカエル「っ、だからその呼び方は・・・!」

リズ「ほぉら!数日後にはヤバイの控えてるんだから、
   ホテル戻って早く休むよミシェル!」

ミカエル「リズ!もう、君は強引だな。・・・・・・昔のお前みたいだよ、リュカ。」



To be continued.
		



こちらの台本は、コンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちらへ


   
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