Sham Garden 伍の庭『目的』


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<登場人物>
封夜(ふうや):
 18歳。幼少期に両親を失い、妹とキルと3人で暮らしている。
 日々精進を心掛けており、自分の弱さを素直に認められる。
 勉強は苦手だが、戦闘中は頭が冴える。
 
 能力:召喚系『剣を生成する』、属性系『風を発生させて操る』

萌花(ほのか):
 15歳。封夜の妹で、家事の殆どを彼女が担っている。
 賭け試合を始めた兄を心配しており、帰りが遅くなると兄を叱ることもある。
 夢見子様を信仰し、いつか「ありがとう」と伝えられることを切に願っている。

 能力:特殊系『結界を生成し展開する』、鍵持ち

キルシュ(キル):
 34歳。封夜と萌花の現保護者。
 面倒見がよく、封夜の戦闘スキルを磨いた師でもある。
 冷静さと穏和さを兼ね備え、有事の際には自ら先頭に赴く。

 能力:属性系『炎を発生させて操る』、鍵持ち

空夜(くうや):
 18歳。頭をローブで覆っており、顔が分からない。
 ラボラトリーに所属する、強化実験の成功体らしいが・・・
 
 能力:召喚系『剣を生成する』、属性系『空気を操る』





※特殊な読み方をする用語があります。必ず読み方ページを参照ください。

!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



封夜「失ったものは大きくて・・・でも、泣いてる暇なんかなかった。」

萌花「私たちが得たものは、とても重たいものだった。」

キル「Sham Garden 伍の庭『目的』」

封夜N「カズハが死んだ・・・俺が殺した。
   カズハが死んだから、庭は閉じられ、萌花を拘束していた氷は解けた。」

萌花「お兄ちゃん・・・・」

封夜「・・・わかってる、わかってるよ。わかってるんだ・・・・・」

萌花「・・・・・うん。・・・・っ!?」

封夜「どうした?」

萌花「あの人たち・・・・」

封夜「?・・・あ、アキラ!」

キルN「萌花が気づいた目線の先。そこには、気絶しているアキラを回収する男達がいた。」

封夜「アキラをどうするつもりだ!?」

男「この者はまだ使える。生きている限りは、ラボラトリーの駒となってもらう。」

萌花「そんな・・・そんなに傷を負っているのに・・・・!」

女「傷など治療すればいい。修復不可能であるなら、使い捨ての実験体とすればいいだけ。」

封夜「てめぇら・・・・・アキラを離せぇ!」

空夜「『アリア・ファルチェ』!」

封夜「ぅあっ!?な、なんだ!?」

萌花M「お兄ちゃんがアキラさんを走り出した瞬間、突如カマイタチが襲ってきた。
   風がやってきた方からは、頭と顔が布で覆われた人が現れた。」

空夜「ただの人間はやはり理解できない。
   自分を殺そうと恨んでいる人間を、助けようとするなど・・・・」

封夜「風使い・・・俺と同じ?・・・・・お前、何者だ!?」

空夜「名乗る義務はない。邪魔者は排除する。
   全ては、新たなる夢見子様のため・・・」

萌花「お兄ちゃん、逃げて!」

空夜「遅い・・・『アリア・ティフォーネ』!」

封夜「囲い風?ハッ、風相手なら余裕・・・!」

空夜「・・・・・連れていけ。」

男「よろしいのですか?」

空夜「我々の計画を邪魔する者に制裁を下す。お前たちは実験体の確保を優先しろ。」

女「御意」

封夜「アキラ!待てこのっ・・・・ぐぅっ!?」

萌花「お兄ちゃん!」

空夜「貴様は俺の風に捕らえられたのだ。そのまま切り刻まれるがいい。」

萌花「お兄ちゃん動かないで!今私が・・・・・きゃああああ!」

封夜「萌花!くそっ、萌花にまで風が・・・こうなりゃ、『絶風輪廻』!」

空夜「ふん、内側から逆回転する風をぶつけて、外側を覆う俺の風を止める気か。」

封夜「うおおおおおおおおお!止まれぇええええええええ!」

空夜「無駄だ。俺の風は誰にも・・・」

キル「『フランメ』!」

空夜「なっ、炎・・・!?」

キル「残念でした。増援ってのもちゃぁんと警戒しておかないとなぁ。」

空夜「貴様・・・・・!」

封夜M「キルが敵を攻撃してくれたおかげで、
   俺や萌花の周りを回転していた風の威力が弱まった。
   その隙を突き、俺と萌花はカマイタチの渦から脱出することができた。」

萌花「キルおじさん!」

封夜「助かったぜ、キル!」

キル「全く、俺だって忙しいってのに。
   ま、家からそれほど離れてなくて正解だったな。」

空夜「キル?・・・・どこかで・・・・」

女「空夜様」

空夜「なんだ?」

女「実験体の確保及び搬送が完了しました。空夜様も退却を」

空夜「そうか。・・・・おい、あの男を知っている者はいるか?」

男「あの男?・・・もしや、ロータフォルタナエの・・・・」

空夜「ほう、通りで・・・資料で見たことがある。
   かつて神子守を守っていた騎士が、
   こんなところで子守とは・・・」

萌花「え?」

空夜「今日のところは見逃してやる。こちらの目的を遂行せねばならないからな。」

封夜「て、テメェ待・・・・」

キル「やめろ封夜」

封夜「キル!でも!」

キル「・・・お前、強化実験の成功体だな?」

萌花「強化、実験?」

空夜「よくわかったな。さすがはロータフォルタナエの犬と言ったところか」

キル「ただの犬じゃねぇさ。夢見子様に心奪われた、忠犬だ。」

空夜「フッ、まぁいい。
   お前らの目的と、俺たちの目的は相反するものだ。
   ・・・次は殺す。」

キル「覚悟しておけ、ってか?だったら、そちらさんもな。」

空夜「・・・・行くぞ。」

女「御意」

封夜M「敵はキルと睨み合った後、風と共に去って行った。
   結局、俺が守れたのは、妹の萌花だけだった。」

キル「ケガはないか?」

萌花「あ、うん、大丈夫。」

封夜「・・・・・。」

キル「封夜」

封夜「俺・・・一人しか、守れなかった・・・・・」

キル「・・・封夜。1つ教えてやる」

封夜「?」

キル「守るってのはな。救うよりも難しいんだ。
   もちろん、救うことだって難しい。
   だが、守ることの大前提は、守る対象には『自分』も含まれていること、だ。」

封夜「自分・・・?」

キル「そうだ。今のお前で言うなら、守るべきは妹の萌花だ。
   これから何度も敵が襲ってくるだろうが、もしその途中でお前が死んでみろ。
   その後、誰が萌花を守る?」

封夜「それは・・・・・」

キル「まぁ、俺っていうのもありっちゃありだが、
   俺だってお前よりは長く生きられない。
   一時的に守ることは守るとは言わない。
   ただ凌いでいるに過ぎない。」

封夜「・・・・・。」

キル「何人も守りたいなどと欲張っていたらキリがない。
   自分がどれくらいの力を持っているのか、よくわかっただろ。
   お前は、萌花を守ることを選んだ。
   そして、萌花も、お前自身も守ることができた。
   それは、誇っていいことなんだ。
   満足しろとは言わないが、悔いることじゃない。」

封夜「・・・・・うん。」

キル「それより今は、今後のことを考えて、
   お前たちに話さなきゃならないことがある。」

萌花「今後?・・・・ぁ、神子守様の、こと?」

キル「そういうことだ。
   とりあえず、今は家に入れ。
   適当に腹ごしらえしてから、な?」

萌花「はーい」

封夜N「キルに促され、俺たちは家に戻った。夕食後、キルから今後の目的を教えられた。」

キル「俺が朝から出ていたのは、ある団体に連絡を取るためだ。」

萌花「団体?」

封夜「そういや、敵の一人がキルのこと知ってるみたいだったな」

キル「あぁ。どうやら、向こうにも情報はあるらしい。」

萌花「その団体って、どんな団体なの?」

キル「ロータフォルタナエ。
   神子守様を保護する、夢見子様を信仰する団体だ。」

封夜「ロータフォルタナエ・・・・って、それ、どこぞの慈善団体じゃ・・・・・」

キル「表向きはな。
   ロータフォルタナエのトップが、そういう活動を推進しているんだ。」

萌花「し、知らなかった・・・・・」

キル「話を戻すが、こちらで神子守様を保護していると伝えておいた。
   準備ができ次第、俺たちはロータフォルタナエの本部を目指す。
   長い旅になるぞ。」

萌花「・・・街を・・・この家を、出なくちゃいけないんだ・・・・」

封夜「あ・・・・そっか。」

キル「名残惜しいとは思うが、萌花が神子守様となった以上、
   ロータフォルタナエにいた方が安全なのは確かだ。
   敵の目的は、神子守様を殺すことだからな。」

萌花「・・・そう、だよね・・・・・もう、戻って来られない、のかな・・・?」

キル「おそらくはな。
   なるべく早めに街を出たいところだが、迂闊に動くわけにもいかない。
   いつでも出られるようにしておいてくれ。」

萌花「・・・・うん。」

封夜M「萌花は、涙を必死に堪えていた。
   俺たちにとっては、
   両親との最後の思い出であるこの家を離れることは、本当に辛かった。
   家を取り壊すと言われた時だって、
   キルがここに住んでくれるって言ってくれたから、なんとかなったのに。
   運命は、やっぱり俺たちに酷いことしかしてくれないらしい。」


(ドアをノックする音)

キル「入るぞ」

封夜「キル?なんだよ」

キル「お前が自責の念に打ちひしがれていないかと思ってな」

封夜「打ちひしがれてねぇよ、おっさん」

キル「お兄さんだ(怒)・・・・封夜は、大丈夫か?」

封夜「何が?」

キル「ここを離れるってこと」

封夜「・・・いつかは離れなきゃいけないって、わかってたさ。
   ただ、それが思いのほか早かっただけ。
   そう割り切れば、なんとか。」

キル「フッ、そういうとこは成長したか。」

封夜「俺だって、いつまでもガキじゃねぇよ」

キル「俺にしちゃあ、まだまだガキだよ」

封夜「ちぇっ」

キル「・・・・・お前は、戦いを身につけるのが早い。
   正直、萌花のサポートがあったとはいえ、
   庭での戦闘でお前がここまでやれるとは思っていなかった。」

封夜「それって、俺が弱いってことだろ?」

キル「まぁな」

封夜「てんめぇ・・・・自覚は、あるけどよぉ・・・・」

キル「相手側が庭の改変をしてこなくてよかったな。
   お前の戦い方は、自分の足で動き回るのが主体だから、
   足場の悪い地形は不利だ。
   ましてや、足場が動くようならなおさら、な。」

封夜「足場に頼らない戦い方も、覚えなきゃってことか?」

キル「そういうことだ。
   しばらくは実践から学ぶことが多くなるだろうが・・・
   ロータフォルタナエの本部に向かう間でも、訓練が必要になるだろう。」

封夜「・・・萌花を守るためだ。俺、もっと強くなりたい。」

キル「強くなる気があるならしてやるさ。但し、覚悟しておけよ?」

封夜「キルには散々叩きのめされてきたから、絶対追い越してやる・・・!」

キル「ハハハハ!その意気だ!」

封夜「そういや、萌花は大丈夫なのか?いざ戦闘ってなったら・・・」

キル「萌花は大丈夫だ。現実では攻撃手段の殆どない萌花でも、
   自分の庭の中ではかなり強い。
   お前と違って、萌花は庭の改変能力が高い。
   フィールドに翻弄されるのは、誰だって辛いだろ?」

封夜「あー・・・・そう、だな。
   カズハの水場も、足が持っていかれて戦いにくかった。」

キル「それだけじゃない。固定されてるならまだしも、その庭が動いたら?」

封夜「動く?」

キル「たとえば、植物が急成長して体に絡みついてくるとか」

封夜「げっ」

キル「たとえば、地面が急に突き出てくるとか」

封夜「め、面倒な・・・・」

キル「庭の改変ってのは、主に自然を動かすのと同じようなものだ。
   戦闘を有利にするだけでなく、時には攻撃手段にもなる。
   だから、萌花は自分の庭にいれば安全だ。」

封夜「ま、マジか・・・・・・じゃあアイツ、一人でも・・・・」

キル「だが、庭の改変だけで戦闘を行うには限界がある。
   それに、萌花が戦術に用いることのできる能力は、現実では結界のみだ。
   攻撃力ほぼ0の状態で逃げるってのは難しいだろう。
   萌花はお前ほど戦い慣れしていない。
   相手の隙なんて、サポート役でない限り見つけにくいもんだ。
   封夜、『自分は要らない』とか思うなよ?」

封夜「わわ、わかってるよ!萌花は、俺の妹なんだから、おおお俺が守らねぇと!」

キル「しっかり頼んだぞ」

封夜「おう!」

萌花M「今まで、私たちには敵なんていなかった。
   いや、逢わなかっただけかもしれない。
   それでも私たちは、今まで平和に暮らしてきたつもりだった。
   ・・・その日私たちは、初めて敵に遭遇した。
   敵と戦わなければならない日々が、訪れてしまった。」


空夜「次回予告」

キル「ロータフォルタナエへ向かうため、準備を始める封夜たち」

封夜「そんな中、萌花は目の前で倒れてしまった女を保護する。その女は・・・・」

空夜「次回、Sham Garden 陸の庭『褐色の女』」

萌花「ひ、人が、倒れ、て・・・え・・・えぇ!?」



To be continued.
		






   
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