Sham Garden 参の庭『神子守様』


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<登場人物>
封夜(ふうや):
 18歳。幼少期に両親を失い、妹とキルと3人で暮らしている。
 日々精進を心掛けており、自分の弱さを素直に認められる。
 勉強は苦手だが、戦闘中は頭が冴える。
 
 能力:召喚系『剣を生成する』、属性系『風を発生させて操る』

萌花(ほのか):
 15歳。封夜の妹で、家事の殆どを彼女が担っている。
 賭け試合を始めた兄を心配しており、帰りが遅くなると兄を叱ることもある。
 夢見子様を信仰し、いつか「ありがとう」と伝えられることを切に願っている。

 能力:特殊系『結界を生成し展開する』、鍵持ち

キルシュ(キル):
 34歳。封夜と萌花の現保護者。
 面倒見がよく、封夜の戦闘スキルを磨いた師でもある。
 冷静さと穏和さを兼ね備え、有事の際には自ら先頭に赴く。

 能力:属性系『炎を発生させて操る』、鍵持ち





※特殊な読み方をする用語があります。必ず読み方ページを参照ください。

!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



キル「人に課せられた運命は、あまりにも残酷だ。」

萌花「それを神様のせいにするなら、誰にだってできる。でも、夢見子様は・・・」

封夜「Sham Garden 参の庭『神子守様』」

キルN「萌花の庭である、美しい森の中。封夜は、萌花の突然の告白に愕然としていた。」

封夜「どういう、ことだよ・・・・萌花が、神子守様って・・・・・」

萌花「・・・お兄ちゃんが帰ってくる前に、私は神子守様として覚醒した。」

封夜「覚醒?じゃあ、今まで眠ってたってことなのか?」

萌花「違う。神子守様は世界に一人しか存在しない、できない。
   だから、前の神子守様が死ぬと、次の神子守様が現れる。
   それは、新生児である必要はなくて、女性なら誰でも可能性のあることで・・・
   今回は、私がその役目を負ったの。」

封夜「っ・・・じゃあ、ラボの奴らに見つかったら、萌花は・・・・・!」

萌花「たぶん、庭の中で、殺されちゃうと思う。私が、扉を出現させない限り。」

封夜「・・・なんで・・・・なんで萌花が・・・やっぱ夢見子様なんて!」

キル「そこまでにしておけ、封夜」

封夜「なっ、キル!?なんでお前、萌花の庭に・・・まさか、鍵持ち?」

キル「あぁ。萌花が庭を展開してるもんだから何かと思えば・・・そういうことだったか。」

萌花「キルおじさん・・・・・」

キル「安心しろ、俺がなんとかしてやる。まずは、封夜を諭さないといけないからな。」

封夜「なん、だよ・・・・」

キル「お前は明らかな勘違いをしている。
   夢見子様は確かに存在する。俺はこの眼で見た」

萌花「え・・・!?」

キル「・・・それと、夢見子様は神様なんかじゃない。
   俺たちと同じ、ただの人間だ。」

封夜「けど、神話じゃ、この世界を維持しているんだろ!?だったら、俺たちのこと・・・」

キル「夢見子様は世界を維持することしかできない。
   人の運命を操れるほどの力なんざ持っていない。
   俺たちが生きている世界は、夢見子様の庭だ。
   夢見子様が消失すれば、庭も消える・・・世界が消えることと同じ意味を持つ。
   世界が夢見子様の庭である以上、
   夢見子様によって庭を動かすことはいくらでもできる。
   だが、所詮は庭、人間まで動かすことはできない。
   せいぜい、自然災害や超常現象と呼ばれる類のものぐらいだ。
   それがどういう意味か、分かるな?」

封夜「・・・俺たちの両親は、人に殺された。
   だから、夢見子様のせいじゃない、だろ?」

キル「そうだ。」

封夜「信じられるわけ、ねぇだろ。
   見たこともないやつを、信じるなんて・・・!」

キル「・・・・・それもそうだな。
   萌花、神子守様の力は使えそうか?」

萌花「え、あ、えっと・・・・やって、みます。」

封夜「?何をする気だよ?」

キル「黙って見てろ。
   まずは、萌花が確かに神子守様であるってことの証明だ。」

萌花「(深呼吸)『夢見し神子の庭深く 神子の森へ至る扉よ 我が眼前にその姿を現さん。』」

封夜N「萌花が静かに唱えると、地面から大きな両開きの扉が現れた。」

キル「ほう。やはり神子守様の力は、バッチリ継承されるんだな。」

萌花「そうみたい。誰に教えられたわけでも、ないんだけどね。」

キル「ほら、何ぼさっとしてんだ封夜。行くぞ」

封夜「ぅぁっ、い、行くって・・・?」

キル「夢見子様の森に、だ。扉の向こうには、夢見子様が眠っていらっしゃる。」

封夜「ほ、ホントに、いるのか・・・?」

キル「あぁ。ほら、さっさと行くぞ。
   本当なら、ガキはもう寝る時間なんだからな。」

萌花N「扉を開けると、そこはとても綺麗な森だった。
   私が物語で読んだ、夢見子様の森。
   私の庭はきっと、その物語に影響されていたんだと思う。
   でも、それよりもずっとずっと綺麗な場所で。
   私たちはキルおじさんのあとを歩き、夢見子様の伝承を聞かされた。」

キル「お前たちには教えただろう、『リバース・オブ・ラグナロク』の話を」

萌花「うん。」

封夜「・・・・・なんだっけ?」

萌花「お兄ちゃん、勉強しなさすぎ!」

封夜「うっ・・・」

キル「かつて、世界は秩序を失い、人間たちは自らが定めた法すら守らず、
   破滅の一途を辿って行った。
   終焉を迎えんとする世界を救うべく、
   ある少女が、『世界全体』を対象に庭を展開した。
   それが、『リバース・オブ・ラグナロク』。」

封夜「あー思い出した。それで今の世界があるって話だろ?」

キル「本来『庭』というのは、世界全体を包めるほど広く展開することはできないはずだ。
   だが、少女の理想と願いを以てすれば、奇跡的にもそれが可能だった。
   しかし、少女が消えてしまえば世界は再び崩壊してしまう。
   少女は、協力者のとある能力により、永遠に等しい命を得た。
   さらに、少女は庭の中に庭を形成し、眠りにつくことで外界から隔離され、
   半永久的に世界を守ることにした。
   ずっと、夢を見て生きる子供、夢見子様。」

萌花「夢見子様は、神様ではないの?」

キル「神様の定義がないから上手く否定できないが、全知全能でないのは確かだ。
   実際、彼女がしているのは、この世界の維持。
   知能を持った生命体を操作する力はない。」

封夜「・・・本当に、ただの人間だって言うのかよ・・・」

キル「俺たちと変わらない、人間だ。
   ただ、人よりほんの少しだけ特別だっただけ。」

封夜N「しばらく歩いていると、開けた場所に出た。
   俺たちの前方には、透明な結界に包まれた少女が、
   宙に浮き、うずくまって眠っている。
   その美しさに、俺は心臓が止まったかのような感覚を覚えた。」

萌花「あの人が・・・・夢見子様・・・・・」

キル「あぁ。俺たちの生きる庭を守り続ける、世界そのもの。」

封夜「・・・・・。」

キル「フッ、見惚れるのも無理はないな。眠っている姿も美しい。」

封夜「なっ、み、見惚れてなんてねぇよ!」

キル「ハハハ!ガキには刺激が強すぎたか?」

封夜「うっ、うるせぇー!」

キル「ふぅ。さて、そろそろ出るぞ。夢見子様を起こすのは気が引ける。」

萌花「夢見子様が目覚めることはないの?」

キル「あるさ。俺がまだガキの頃に迷い込んで、起こしちまったことがあるから」

封夜「え」

萌花「え?」

キル「あ、やべ・・・・」

封夜「キル、お前・・・・・」

キル「さ、さー帰るぞーお前らー(棒読み」

封夜「待てキル!どういうことだよ!?」

萌花「おじさん!」

キル「知〜らない、俺知〜らない!」

封夜N「結局、その日は大人しく休むことになった。
   次の日、外は妙にぎこちなさを漂わせていた。
   神子守様探しが行われる以上、外に出る女性は少ないせいだろう。」

萌花「いつもなら、にぎわってる街なのに・・・・」

キル「仕方ないさ。
   ラボのやつらに捕らえられれば、神子守様の疑いをかけられ、
   疑いが晴れるまで拷問やら凌辱やらをされる可能性は否めない。」

封夜「そんなこと・・・・早く止めないと!」

キル「一先ず、街にやってきたラボのやつらを片付けねぇと」

封夜「・・・・カズハ・・・・」

キル「・・・俺は数を減らしてくる。お前らはできるだけ外に出るな。」

封夜「でも!」

キル「封夜。萌花が神子守様である以上、萌花を守るのはお前の役目だ。
   神子守様はな、危機的状況に陥ったら最後、自害の道を辿ることも少なくないんだ。」

封夜「っ!?」

キル「神子守様は、現実で死ねば扉を出現させずに済む。
   そして次の神子守様へ力を継承させる。
   だが、そうやって命を落とす神子守様を、俺は何人も見てきた。」

萌花「おじさん、他の神子守様にも会ったことあるの?」

キル「あぁ、お前らより長く生きてるせいで、そういう経験は豊富なんだ。」

封夜「萌花を守れなければ、萌花は死ぬしかないのか?」

キル「最悪の場合な。
   もし庭の中で死なれたら、夢見子様にまで危険が及ぶ。
   夢見子様の消失は、世界の崩壊。
   なんとしてでも、萌花を守るんだ。いいな?」

封夜「・・・・・わかった。」

封夜N「俺の返事を聞いて、キルは外に出て行った。
   萌花を守れ。キルはそう言っていた。」

萌花「おじさん、大丈夫かな・・・・」

封夜「心配ないだろ。キルだぞ?俺、まだアイツに一度も勝てたことねぇし」

萌花「でも、ラボラトリーって、だんだん勢力を拡大してきてるって、聞いたことある」

封夜「・・・・・じゃあ、カズハやアキラも・・・・・」

萌花「たぶん、影響を受けたんだと思う。」

封夜「・・・・なんとしても、止めねぇと」

萌花「ねぇ、お兄ちゃん」

封夜「ん?」

萌花「今言うのもあれだと思うけど・・・・・夢見子様のこと、信じてくれた?」

封夜「あー・・・・・微妙。」

萌花「えぇ!?」

封夜「遠目から見ただけだし、実際にその能力を見たわけじゃないし。」

萌花「もう・・・・」

封夜「まぁでも、神話は信用できたよ。なんか、すっげぇオーラ感じたし!」

萌花「そりゃあ・・・・夢見子様だもん。本当に綺麗な人だったなぁ〜。」

封夜「なんだかんだで、お前の夢、叶ったな」

萌花「え?」

封夜「『夢見子様に逢いたい』って」

萌花「あ・・・・でも、完全じゃないよ」

封夜「なんで?」

萌花「だって、『ありがとう』って、まだ伝えてないもん」

封夜「だぁかぁら、夢見子様が守ってくれたわけじゃないって・・・・・」

萌花「それはもうわかってる!
   ・・・おじさんの話聞いたから、それはわかってるよ。
   だから、今は別の意味で感謝したいの!」

封夜「・・・どんな?」

萌花「私たちが生きていられる世界を守ってくれて、『ありがとう』ってこと!」

封夜「!・・・・・そう、か。」

萌花「ラボラトリーの人たちは、そんな夢見子様の恩を仇で返そうとしてる。
   そんなの、絶対に止めなくちゃ!」

封夜「あぁ、そうだな。・・・けど、今は目の前の問題を片付けねぇとな。」

萌花「?」

封夜「・・・・・カズハを、止める。」



キル「次回予告」

萌花「仲良しだったのに、どうして戦わなくちゃいけないの?」

封夜「ガキの頃からつるんできた、そんなお前が敵だなんて・・・・」

キル「分かり合わなければ、戦いは回避できない。分かり合えなければ、戦うしかない。」

萌花「次回、Sham Garden 肆の庭『すれ違い』」

封夜「気が付けば・・・俺は、弱かった。」



To be continued.
		






   
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