Sham Garden 拾弐の庭『外の世界』


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<登場人物>
空夜(くうや):
 18歳。頭をローブで覆っており、自分でも自分の顔を知らない。
 強化実験の成功体で、どこか特殊な扱いを受けている。
 妹の密姫を外に出すため、新世界創造計画に加担している。

 能力:召喚系『剣を生成する』、属性系『空気を操る』

弄嵐(ろうらん)♂:
 46歳。浮嵐の実父であり、10年前に妻を殺している。
 浮嵐と同じ褐色の肌と銀髪を持つ、ラボラトリーの幹部的存在の1人。
 普段は冷静沈着だが、興味を抱いた存在を研究するまで追い求める執着心を持つ。

 能力:召喚系『植物を召喚し操作する』、特殊系『記憶の限定改変』

サラ♀:
 29歳。ラボラトリーの実質的な統率者で、『先生』と呼ばれている。
 常に煙管を咥えており、やや艶やかな喋り方をする。
 人体改造等は彼女の発案であり、弄嵐はそれを実現させているに過ぎない。

 能力:特殊系『魂を別の身体に入れ替える』

密姫(みつき)♀:
 10歳。ラボラトリーの被験体で、新たなる夢見子様の最有力候補。
 ラボの外に出たことがなく、純心無垢で人を疑うことを知らない。
 時折超人的な能力を発揮することがあり、サラによって洗脳教育が行われている。

 能力:???

モマリ:
 性別・年齢共に不詳。弄嵐の手により、巨大な魔石に命が宿った生命体。
 魔石と同じ効力を持つが、見た目がマリモのように毛むくじゃらで、体は柔らかい。
 サラを酷く嫌悪しているが、基本は好奇心旺盛で人懐っこい性格。

 能力:『魔力を貯蔵する』『魔石を作り出す』





※特殊な読み方をする用語があります。必ず読み方ページを参照ください。

!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!


モマリ「カダーウェルの身体に宿っていた弄嵐がジャンシーに倒され、
   弄嵐の魂はラボラトリーに保管されていた元の身体へ戻った。」

弄嵐「そして再び、ある女の手によって、魂は移され、使い捨ての身体に宿る。」


密姫「Sham Garden 拾弐の庭『外の世界』」

モマリN「ラボラトリー主要拠点、最深部。
   新たな体を得た弄嵐が、不機嫌そうに起き上がる。」

弄嵐「っ、はぁ・・・・相変わらず、不快な感覚だ。」

サラ「ごきげんよう、弄嵐。どう?新しい身体の調子は」

弄嵐「ふんっ、まだ追加調整を施したな?」

サラ「まぁね。カダーウェルの肉体を構成する分子をちょっと変えたのよ。」

弄嵐「・・・金属か。耐久性の増強、といったところか。」

サラ「あの爆発は厄介だわ。今まで直接戦ったことはなかったけれど、今後は厄介。」

弄嵐「駒の殆どは、アイツに消されたんだったな。
   全く、たかが爆発1つで、資金の荒削りとはいったものだな。」

サラ「お金だってそう容易く手に入ってるわけじゃないんだから、大事に使わないと。
   特に、『あの子』の教育には。」

弄嵐「・・・・・密姫はどうだ?」

サラ「フフッ・・・最高よ。最近じゃ、治癒の魔術が使えるようになったわ。」

弄嵐「ほう。ということは、魔力も・・・・」

サラ「いいえ、まだ自分の体内から魔力を引き出す技術はない。
   代わりに、モマリが魔力を与えることで、術を発動しているわ。」

弄嵐「なるほど。では、自律はほぼ不可能ということか。」

サラ「なおさら都合がいいじゃない。新世界創造計画には、ね。クスッ」

弄嵐「今はどこにいる?」

サラ「中庭のほう、空夜と一緒にいるはずよ。仲がいいわね、あの二人」

弄嵐「・・・・・。」



間。



モマリN「ラボラトリーの中庭。人工的に作り出された明るい空間に、空夜と密姫がいる。」

空夜「・・・っと。これでよし。」

モマリ「なんぞ〜?」

密姫「わぁ!お花のかんむり!」

空夜「ほら、密姫にあげる。」

密姫「ありがとう!兄様!」

モマリ「いいないいな〜!モ〜マ〜リ〜も〜!」

空夜「え、モマリも?しょうがないな・・・・」

密姫「モマリの分も兄様が作ってくれるって!よかったね♪」

モマリ「わ〜い♪」

空夜「ったく。」

密姫「・・・ねぇ、兄様」

空夜「ん?どうした、密姫。」

密姫「密姫は、いつになったら外の世界に出られるの?」

空夜「っ!?」

密姫「外は、怖い人がいっぱいいて、まだ密姫は子供だから、外に出られないって・・・。
   博士も兄様も外に行けるのに、密姫だけお外に出られない・・・・・」

モマリ「ム〜?」

空夜「・・・ゴメンな、密姫。頑張って、悪い人を退治してるんだけど、
   次から次へと襲ってくるんだ。
   本当は早く密姫を外に連れ出してやりたいけど、もう少しだけ、我慢、な?」

密姫「うん・・・・。」

モマリ「ムゥ・・・モマリも密姫とお留守番〜」

空夜「そうだな。密姫と一緒に遊んでやってくれ、モマリ。」

モマリ「おうともさ!」

空夜「密姫。絶対に俺が、外の世界に出してやるから。もう少し、もう少しで・・・」

サラN「空夜が密姫に手を伸ばした時、何者かが近づいてくる気配がした。
   地面に座っている空夜は、その振動で、近づいてくる存在の正体を把握した。
   博士・・・弄嵐。」

弄嵐「楽しそうだな、空夜、密姫。」

密姫「あ、博士!」

モマリ「博士だ博士だぁ〜!」

空夜「・・・・・任務、か?」

弄嵐「いいや、ただの話だ。密姫、そろそろ検査の時間だ。先生が呼んでいたぞ」

密姫「いけない!モマリ、行ってくるね!」

モマリ「また先生のところに行くの・・・?」

密姫「うん。だから、モマリは兄様と一緒にいて?」

モマリ「ム〜・・・モマリ、先生きら〜い。密姫行っちゃヤダ〜〜〜!」

弄嵐「我儘を言うな。ほら、これをやろう」

モマリ「ムムッ!よもぎ餅!まぐっ(食いつく)!」

弄嵐「フッ・・・・さぁ密姫。」

密姫「はい、博士!兄様、いってきま〜す!」

空夜「あぁ・・・行っておいで。」

サラN「悲しみを笑顔で隠し、空夜は密姫に手を振って見送った。」

空夜「・・・何の話だ?」

弄嵐「そう急くな。敵の情報を伝えに来た。」

空夜「戦えばいいんだろ。俺は、そのためにいるんだから・・・・」

弄嵐「いや、まだ情報収集を続ける」

空夜「え?」

モマリ「何々〜?難しい話〜?」

弄嵐「神子守一行が、ロータフォルタナエの支部の1つに到着した。
   戦力は神子守を除いて4人、属性系が2人と、事象系が2人。
   うち、お前が相手できそうなのは、2人。」

空夜「属性系・・・・前に見た、風使いか。」

弄嵐「そうだ。だが、アレが本気とは思えん。まだ何か隠している。」

空夜「それを見て来いって?」

モマリ「ムムム・・・・・何言ってるかわかんないや・・・・」

弄嵐「新型のカダーウェルの耐久度の確認。
   それと、第3強化実験後に洗脳した被験体の小手調べ。
   お前には、敵・味方のデータ採取と、命令違反者の殲滅を命じる。」

空夜「・・・・わかった。」

モマリ「ねぇ〜、モマリにもわかるように言ってよ〜!」

空夜「お前は外に出ないから、関係ないよ。」

モマリ「ム〜!モマリに秘密事〜!!!」

空夜「ゴメンな。けど、お前が密姫に喋っちまったら、密姫も心配するだろうし・・・」

モマリ「ムムム・・・・プンスカプンスカッ!」

弄嵐「では、準備ができ次第改めて伝達する。・・・これでも与えて宥めておけ。」

空夜「あぁ、助かる。」

モマリ「ム?・・・ムー!もち!おもち!餡子の入ったおもち!!!
   空夜!頂戴!おもち頂戴!」

空夜「フッ、あぁ。味わって食べるんだぞ?」

モマリ「わ〜い!まぐまぐっ!」



間。



弄嵐N「一方、ラボラトリー中枢、サラの研究室。
   揺り籠のような診療台に横たわる密姫と、椅子に座ってカルテを書いているサラ。」

密姫「ねぇ、先生」

サラ「何?密姫」

密姫「密姫は、いつになったら外の世界に出られるの?」

サラ「そうねぇ・・・・具体的な日付はわからないわ。外に出たい?」

密姫「うん!お外に出たら、兄様といっぱい遊ぶの!」

サラ「そう。何をして遊びたいの?」

密姫「えっと、えっと・・・・・追いかけっことか、かくれんぼとか!」

サラ「クスッ、楽しそうね。」

密姫「でも、兄様が言ってた。お外にはまだ、怖い人がたくさんいるって。」

サラ「そうよ。密姫にとって、本当に怖い人ばかり。
   空夜は今怖い人を退治するために戦って、密姫が外に出られるように頑張ってるの。」

密姫「博士も?」

サラ「えぇもちろん、博士もよ。
   だから密姫も、外で思いっきり遊べるように、病気を治さなくちゃね。」

密姫「うん!密姫も頑張る!兄様が頑張ってるんだもの!」

サラ「フフッ、えぇ。頑張りましょう・・・・・フフフ。」

モマリN「純心無垢な密姫は、人の陰謀など知らない。
   不敵に笑んだサラの表情に裏があることなど、知る由もなかった。」



間。



弄嵐N「数日後、ラボラトリー最深部、作戦司令室。」

サラ「伝達・・・というよりは、出動命令ね。
   被験体1名と、ピュロボルス1体、カダーウェル2体の耐久度実験。
   空夜の仕事はコイツらの監視と、データ採取。
   なお、被験体またはピュロボルスが命令に従わなかった場合、
   あるいは洗脳が解けた場合は、真っ先にこれを撃滅すること。
   以上、質問は?」

空夜「俺が戦う必要はないんだな?」

サラ「そうね。戦力は省きたくないもの。ま、お遊び程度なら許してあげる。」

弄嵐「データを持ち帰ることを最優先にしろ。でなければ・・・・・」

空夜「わかってる。・・・密姫だけは、絶対に実験に使わせない。」

弄嵐「お前には期待しているぞ。」

空夜「・・・・・。」

モマリN「無言で指令室を出ていく空夜。
   怨みで握った右手が微かに震えていたのを、弄嵐とサラは気づいていた。」

サラ「哀れな子ね。密姫を強化実験の被験体にさせないために言いなりになって。」

弄嵐「全くだ。思い込みとはかくも恐ろしい。必要以上の洗脳をせずに済むからな。」

サラ「クスッ、そうね。もうすぐ・・・もうすぐ密姫は、完成する。」

弄嵐「あれはいずれ、新たな夢見子になるだろう。その時、我々は・・・・」

サラ「神の手を離れ、神を殺し、全ての主導権を握るわ。
   そのためにはまず、今の夢見子を殺さないと。
   ・・・ホント、あの子たちはラボラトリーの計画をよく動かしてくれるわ。」

弄嵐「都合のいい駒には、しっかりと手綱を引かねば。
   最終段階までは、使わせてもらうぞ、空夜・・・・・ククッ。」


空夜M「俺は戦う。ただひたすら、密姫を外の世界へ連れ出すために。
   空に浮かぶ太陽も、月も、星も、流れる風も、溢れる光も、密姫は知らないから。
   いつか、必ず、俺が・・・・・。」


密姫M「密姫は、空を知らない。朝も昼も夜も、風も雨も雪も知らない。
   お兄ちゃんが約束してくれた。いつか密姫に、お空を見せてくれるって。
   外の世界・・・密姫にとって、夢の世界に、連れて行ってくれるって。
   だから密姫は、ず〜っと待ってる。」

モマリM「哀れな青年と少女の運命を変える力を、モマリは持ってない。
   いろんなことを知ったり、いろんなことが分かったりしても、モマリは言わない。
   その日が来るまで、モマリはわからない振りをします。」



サラ「次回予告」

空夜「弄嵐を退け、ロータフォルタナエの支部に着いた神子守一行」

弄嵐「上層部の人間であるジャンシーから伝えられる、
   ロータフォルタナエとラボラトリーが求める魔力とは?」

密姫「次回、Sham Garden 拾参の庭『ツァウバラー』」

モマリ「モマリの存在意義も、全て魔力に依存する。魔力がなければ、モマリは要らない。」



To be continued.
		






   
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