Arc Jihad(アークジハード) -守るは望みしモノ-


・男女逆転は絶対にやめてください
・ネットブロードキャスト以外の利用はご一報ください
・少しでも疑問があれば利用規約を読んで、それでも分からないなら問い合わせください



<登場人物>
[ノエル・シルヴェール]♂
表記:Noel Silver
年齢:15
詳細:シルヴェール家の正統後継者で、あどけないパティシエの少年。
   年齢の割には背が低い上に身体の線が細く、いつもゴスロリ服を着ている。
   綺麗でカッコいい人が好き。

[マーナガルム(マナ)]♂
表記:Managarmr
年齢:(外見)20代半ば
詳細:魔楯『スヴェル』の担い手で、ノエルの契約者。
   北欧神話における最強の狼「マーナガルム」の人格をインストールしている人間。
   ノエルの兄であるかのように世話を焼いているが、戦闘になると好戦的になる。
魔剣の能力:太陽と月に帰属する武器の力を封じる(代償:対象は2人まで)
   氷を生成し、操る(代償:氷を生成する際、呼吸を止める必要がある)

[コレット・ディオール]
表記:Colette Dior
年齢:(享年)17歳
詳細:シルヴェール家に通うパティシエ見習いで、ノエルの友人。
   1年前までマーナガルムの隠れ蓑として契約していたため、戦闘経験はほぼ皆無。
   やや男勝りな口調だが年相応の少女らしい一面を持ち合わせている。

[ロザリー・ゴダン]
表記:Rosalie Gaudin
年齢:(享年)17歳
詳細:一般的な倫理や世間体などを崇拝する生真面目な少女。
   悪しきを滅するが天命と信じて疑わず、全ての魔剣に敵対心を持つ。
   ノエルたちの格好及び振る舞いを快く思っておらず、人の話をあまり聞かない。

[ジェラール・ド・ヌヴェール]
表記:Gerard de Nevers
年齢:(外見)30代前半
詳細:聖剣『ファン・ゲール』の担い手で、ロザリーの契約者。
   やや天才肌で、担い手に対しては見下しているような口振りをする。
   余裕の笑みと優雅な振る舞いをするが、想定外の事態には硬直しやすい。
聖剣の能力:花を生成し、操作する






!━━━≡≡≡⊂´⌒⊃゜Д゜)⊃━━━ここから本編━━━⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡━━━!



マナM「俺の最初の契約者は、ちょっと男勝りで、年相応に可愛い女だった。
   ザックリ事情を話したら、隠れ蓑になら自分でもなれるって言ってくれた。
   だから俺は、そいつに戦わせないことを条件に、契約を申し入れた。
   アイツも、快く承諾してくれた。」


[過去のフランス、シルヴェール邸。ロザリーがコレットとノエルを糾弾している。]

ロザリー「なんて恰好をしているんですか2人共!」

コレット「何って、動きやすい格好だけど?」

ノエル「僕は似合うと思う服を着てるだけだよ~?」

ロザリー「っ、あなたたち、性別をわきまえなさい!
   女であるコレットはお淑やかな格好をすべきですし、
   男であるノエルは殿方らしい格好をすべきです!
   特にノエル!あなた、それでもシルヴェールの一人息子ですか!?」

ノエル「む~、別にそうなりたくてそう生まれたわけじゃないし!
   僕がどんな格好したって、ロザリーには関係ないじゃん!」

コレット「そうだよな。それに、女の服って結構高いんだぞ?
   私みたいな親もいない庶民が、そうホイホイ買えるような服なんてないよ。」

ロザリー「それはあなたの努力が足りないからです。
   お金がないなら稼げばいい、パティシエとして働いた賃金はあるんでしょう?」

コレット「んなもん、お菓子の材料費で全部飛んじゃうよ。
   女らしい豪奢な服を買うのに使うぐらいなら、お菓子のために使いたいね。」

ロザリー「コレット、あなたって人は・・・!」

マナ「(割って入るように)まぁまぁ、そうピリピリしなさんなって。」

ノエル「あ、マナ!」

ロザリー「(マナを睨みつける)・・・・・またあなたですか。」

マナ「コレットはこの通りお菓子作り一筋って感じだし、ノエルなんてまだ子供だし?
   どっちも可愛いんだから、服装なんていちいち気にしたってしゃあねぇだろ」

ロザリー「今のうちに直しておかないと、世間で不利になるから言っているんです。」

マナ「不利、ねぇ。それなら、『私の言うことが全部正しい』って言い方されて、
   全員が『はいその通りですね』なんて言うと思うなよ。」

ロザリー「・・・・・!」

マナM「シュヴァイツァーに来る前はいつもこんな感じだった。
   ロザリーって女が煩くて、コレットもマナもうんざりしていた。
   それに俺が割り込んで硬直状態を発生させて、そんでもって・・・」

ジェラール「ロザリー、お父さんが呼んでいるよ。」

ロザリー「父様(とうさま)が?」

ジェラール「明日の舞踏会に着ていくドレスのことで話があるって。」

ロザリー「大変!すぐ行かなくちゃ!・・・今日のところは失礼します。
   コレット、今度会う時までにその服装と振る舞い、直しておいてくださいね?」

コレット「(小声)・・・・ケッ、誰がお前のためになんざ直すかっつーの。」

マナM「ジェラールという男がロザリーを迎えに来て、やっと落ち着けた。
   俺は鼻がいいから、向こうが聖剣の担い手であることぐらい容易に理解できた。
   ノエルにも見えているってことは、たぶんロザリーが契約者だろう。
   けど、向こうから手を出してこない以上、こちらが戦う理由はない。
   だから、コレットには黙っていた。
   思えばこの時、さっさと相手を潰しておけばよかったと、何度も後悔した。」



間。



[過去のフランス、シルヴェール邸・ノエルの部屋。3人でお菓子を食べている。]

ノエル「ん~♪コレットのお菓子、美味しい!」

コレット「喜んでもらえて嬉しいよ。でも、まだノエルのお菓子には程遠いなぁ。」

マナ「他人と比べるもんなのか?お菓子の良さって」

コレット「なんていうか、私なりの目標だよ。
   いずれシルヴェールに認めてもらわないとさ、
   このあたりでパティシエなんて名乗れないんだよ。」

ノエル「僕のお父さんが、ぜんっぜんコレットのこと認めてくれないんだよね!
   こんなに美味しくて可愛いお菓子作ってくれるのに・・・」

コレット「あはは、ノエルに気に入ってもらえてるのが救いだよ。ありがと。」

ノエル「だって僕、コレットのお菓子大好きだもん!」

マナM「ノエルはパティシエの家系に生まれた跡取り息子で、
   コレットはパティシエ見習いとして住み込みで修業中。
   いつか自分の店を開くことが夢なんだって、語られた。
   あ、ちなみにその時俺は、ノエル専属の使用人って形で雇われてた。
   だから、聖剣だの魔剣だのって話はしてなかったし、
   ノエルも全く知らなかった。」

コレット「それにしても、ロザリーは相変わらず世間体がどうのこうのと・・・」

ノエル「ホントね~。自分がちょっとした資産家の娘だからって威張ってるけど、
   シルヴェールにそんなこと言っても意味ないのにね♪」

コレット「ふふっ、言えてる。それに、可愛げのない私にドレスなんて必要ないし。」

ノエル「え~!?コレットは可愛いよ!ドレス着てみたいとか思ったことないの!?」

コレット「い、いや、なくはないけど、さ。その・・・・・
   元々、パティシエやショコラティエってのは男の人がなれるもので、
   そんな世界で活躍するには、女性らしく振る舞ってる暇なんてないし。
   だったらいっそ、男らしくしてた方がいいかな~って思ってたから、さ。
   あんまり、その、着てみたいとかって願望は、強くないんだ。」

ノエル「コレット・・・」

コレット「可愛い服は、ノエルが着ればいいんだよ!
   すっごく似合ってるし・・・・なんか、妹みたいな弟が出来た感じ♪」

ノエル「!クスッ、なんだよそれ!じゃあ今度、コレットにもお揃いの服用意する!」

コレット「え!?」

ノエル「ほら、来週には品評会があるでしょ?その時くらい可愛い服着ようよ!ね?」

コレット「いやでもそんな服は・・・・・ぁ、マナも黙ってないで何か言えよ!」

マナ「ん?あぁ、たまにはコレットも、女の子らしい格好してみればいいだろ♪」

コレット「は、はぁ!?おまっ、なんで!?」

マナ「ノエルとお揃いの服着て、シルヴェールの一人息子と仲良し~ってアピールすりゃ、
   女だろうがなんだろうが真っ当な評価をもらえると思うぜ?
   それに、元が可愛いのにもったいない。な、ノエル?」

ノエル「ね~♪」

コレット「(困ったように)お前らぁ・・・」

マナM「平和だった。俺ら3人の時間だけは、本当に平和だった。
   けど、それを崩してしまったのは、どうにもこうにも俺の存在で。
   狼は狼らしく、一匹狼を気取っているべきだったのかもしれない。」



間。



[過去のフランス、シルヴェール邸近く。コレットとロザリーが対峙している。]

ノエル「(走ってくる)はぁっ、はぁ、はぁ・・・・・コレット!マナ!」

コレット「なっ、ノエル!?こっちに来るな!下がってろ!」

ノエル「なんで・・・何が起こって・・・・」

ロザリー「コレットは魔に魅入られました。魔なる者は悪、聖なる者は正義。
   私は正義を以て、悪を断罪します。」

マナ「だぁから!俺に戦う意志はねぇっつってんだろ!」

ジェラール「口先だけなら何とでも言える、だが・・・
   この聖剣とその契約者は、魔剣の存在を許してくれないみたいだよ?」

ロザリー「魔剣に属する全ての担い手を排除する。
   それが、ジェラールの聖剣がもたらす、『戦いの終わり』!」

コレット「話を聞いてくれロザリー!マナは聖剣と魔剣の戦いなんて・・・」

ジェラール「『香(かぐわ)しき愛の炎 エリュプシオン・イリス!』」

マナ「っ、『守れ氷楯(ひょうじゅん)!グレイシー・ブークリエ!』」

コレット「うわっ!?」

ノエル「コレット!マナ!」

マナ「危ねぇから二人とも前に出るな!」

ジェラール「まだ続けるよ、『誠実なる喜び アヴァランチ・ヴィオレ』!」

ノエル「な、雪崩・・・!?」

マナ「ちぃっ、『聳(そび)えろ氷壁(ひょうへき)!グレイシー・ミュー!』」

ジェラール「追い詰めたつもり、だったんだけどね」

ロザリー「一瞬で巨大な氷の壁を・・・・・」

ジェラール「アレを壊さないと、僕たちの剣は届かないわけだ」

ロザリー「地面からの攻撃は?」

ジェラール「難しいかな。さっきから視界が青いんだ。
   向こうの魔剣・・・いや、魔楯(まじゅん)の能力だと思う。
   視界が青い範囲は、彼らも氷を生成できるってことだろうね。」

ロザリー「となると、正面の壁を叩き壊すために、もっと力が必要。」

ジェラール「そうだね。一矢報いるには、君を放っておくわけにもいかない。」

ロザリー「・・・やるわ。」


[氷の壁の内側。マナが警戒しつつ呼吸を整えている。]

マナ「ぜぇ・・・ぜぇ・・・なんだよ、アイツの技。
   地面からでっけぇ花を咲かせたかと思ったら、花弁の雪崩とかマジふざけんな・・・」

コレット「大丈夫か!?」

マナ「俺は問題ねぇ。それより、こっから離れろ。こりゃ長引くわ」

ノエル「マナ?どうして、こんな・・・」

マナ「ノエル、話してる時間もねぇから手短に言う。一発で頭に入れろ。」

ノエル「!?」

マナ「俺はこの世界の人間じゃない。そんで、向こうのジェラールって男もだ。
   俺らは戦うためにこっちの世界に来て、聖剣と魔剣ってのに分かれてる。
   こっちの世界の人間と契約しないと戦えねぇから、
   ジェラールはロザリーを、俺はコレットを巻き込んだ。
   けど、戦い自体はよそ者である俺達が死ねば終わる。
   お前らは関係ねぇ、だから・・・・・逃げろ。」

ノエル「そんな・・・そんなの・・・・・!」

マナM「いきなり戦闘になって、ノエルにも目撃されて、正直キツかった。
   せっかく仲良くなった人間に面倒なこと背負わせたくなかったんだけどな。
   けど、どうも俺の契約者は、俺の考えなんてちっとも察してくれないらしい。」

コレット「マナ、私も戦う。」

マナ「はぁ!?お前、人の話聞いてたか!?」

コレット「聞いてた。だからわかった。・・・死ぬつもりなんだろ?」

マナ「!」

ノエル「やだ!マナ、死んじゃ嫌だよ!!!」

コレット「簡単に死んでもらっちゃ困るんだよ。私もノエルも」

マナ「なんで・・・」

コレット「私も戦う」

マナ「っ、それじゃ約束と違ぇ!」

コレット「確かに、マナと契約した時、私を戦わせないって約束だった。
   でも、ここで死なれたら・・・・・私のお菓子、食べてもらえなくなるだろ?」

マナ「ぁ・・・コレット・・・」

コレット「今度の最新作は、マナにも食べてもらいたいんだ。だから、絶対に死なせない。」

マナ「・・・・・・・・・後悔、すんなよ?」

コレット「あぁ。ノエルは下がってて。ケガなんてしたらお菓子抜きだぞ?」

ノエル「う、うん。」

コレット「マナ」

ロザリー「ジェラール」

マナ「『マージ』」

ジェラール「『ウェイク』!」

マナM「互いにマージ・ウェイクして、それぞれ契約者の身体と1つになる。
   契約者を気遣わなくて済む・・・・・ってわけにはいかない。
   こちとら戦闘に不慣れな女の身体だ、そう乱暴には扱えねぇしな。」

ロザリー「偉大なる正義の名の下に。聖剣『ファン・ゲール』を以て、戦いを終わらせる!」

コレット「っ、マナ!」

マナ「壁が破られた瞬間が勝負だ、気を抜くな!」

ジェラール「『愚かなる結合 エクレール・グルナディエ!』」

ノエル「うわっ!?こ、氷の壁が、崩れてく・・・!」

ロザリー「魔剣に断罪を!はぁあああ!」

コレット「よっと!その程度の攻撃なんざ、私でも!」

ロザリー「けれど、経験は何にも勝る実力になります!」

ジェラール「1つの隙で十分だ。『不信なる期待 ミラージュ・ラヴァランド』」

コレット「え・・・こ、れは・・・・っ・・・・!?」

ロザリー「フフッ、ラベンダーの香りに惑わされるは魔なる証。
   聖なる者は、この香りに惑わされない!」

ノエル「コレット、どうしたの!?何かあったの!?」

マナM「油断した。敵が花の匂いで幻覚を見せてくるとは。
   たぶんありゃ、相手を選べる技なんだろう。
   ノエルに影響が出てないのが幸いだ。なんつったって・・・・」

コレット「ノエルには、この景色、見えてないみたいだな。」

ジェラール「さぁ、魔楯『スヴェル』の担い手とその契約者。
   その目に映る僕らは、本物か偽物か。」

ロザリー「私たちが、見抜けますか?」

コレット「・・・・・気持ち悪ぃ。」

マナ「ムカつく顔がこうもたくさんいると、なぁ?」

コレット「マナ、私の身体は大丈夫。好きなようにやっちまえ!」

マナ「お、言ったな?んじゃ、数潰していくぞ!」

コレット「おうよ!」

マナM「俺らの目だけに映る、偽物のロザリーたち。
   鉤爪で切り裂いてみればなんでもない、ただの背の高い花だった。
   だが、鼻がやられちまった以上、とにかく相手を潰していくしかなかった。」

ロザリー「何を狙っているのです?私たちはここですよ?」

マナ「ハッ、こんなもん、数打ちゃ当たる!『飛べよ氷雨(ひさめ)!プリー・グレイシー!』」

ジェラール「あの盾、厄介だね。てっきり守るだけのものかと思っていたけど」

ロザリー「氷の生成能力に加えて、兵装の鉤爪による近接攻撃。
   でも、あんな動きを続けていたら、契約者の身体がもたないでしょうね。」

ジェラール「そんなに弱いのかい?彼女は」

ロザリー「クスッ、えぇ。強がっているだけの、可憐なお嬢さんでしかないもの。」

コレット「はぁ・・・はぁ・・・っぁ・・・・・」

マナ「コレット、大丈夫か?」

コレット「大丈夫、まだ、いける!」

ロザリー「残念ですが、もうおしまいです。」

ノエル「っ、コレット!逃げて!」

ジェラール「『悲愴(ひそう)の寄り添い エスクラヴァージ・ジェンティアネ』」

コレット「何っ、ぁ、いつの間に足を、くっ!」

ロザリー「担い手と共に、ここで朽ち果てなさい!はあああああ!」

マナ「くそっ、『守れ氷楯(ひょうじゅん)・・・』」

コレット「(食い気味に)マージ・ウェイク解除!」

マナ「ばか、コレットよせ!」

コレット「ぐぁっ!?ぅぐ・・・くっ・・・・・!」

ノエル「コレット!!!」

マナM「気が付いた時にゃ、もう遅かった。
   コレットの意志でマージ・ウェイクを解除された俺は、無理やりコレットの外へ。
   そんで、目の前には、腹を貫かれたコレットが、真っ赤な血を流していた。」

ロザリー「さよならコレット。悪は滅びなさい。」

コレット「ハハッ、笑える冗談。悪は、どっちだ、か・・・・・(その場に倒れこむ)」

マナ「コレット!てめぇ・・・『這い寄れ氷鮫(ひょうこう)!ルカン・グレイシー!』」

ロザリー「っ!小賢しい真似を!!!」

ノエル「コレット、コレット!コレットってば、ねぇ!コレットぉ!」

マナM「俺の攻撃でロザリーを遠ざけると、ノエルがコレットの方へ駆け寄ってきた。
   腕が震える、少しずつ冷たくなっていくのが分かる、何かが離れていく感覚がする。
   あぁ、もうダメなんだ。」

コレット「ノエル・・・下がって、ないと・・・・・」

ノエル「すぐ病院に行かないと!コレットが!」

コレット「無理、だって。おなか、剣が、刺さって、ははは・・・」

ノエル「コレット・・・」

コレット「なぁ、ノエル・・・私の、お菓子、の、レシピ・・・・ゲホ、ゴホ!(吐血する)」

ロザリー「ジェラール、コレットにトドメを!」

ジェラール「(独り言)担い手を逃がした?どうして・・・彼らは、悪のはず・・・・・」

ロザリー「ジェラール?聞いているんですか!?」

ジェラール「(独り言)魔剣を倒すことが、聖剣の役割。聖剣は正義。魔剣は、でも・・・!」

コレット「っは、ぁ、はぁ・・・・・お菓子、いっぱい、作って、ね・・・?」

ノエル「(涙を堪えながら)っ、ぅん・・・うん・・・!」

マナ「コレット・・・・・!」

コレット「マ、ナ・・・お前・・・・・」

ロザリー「ジェラール!」

ジェラール「っ!すまない、すぐに追撃する」

マナ「『プリー・グレイシー!』」

ロザリー「ぐ!?また氷柱が、っ!」

マナM「俺が敵に構ってる間に、背後ではコレットが事切れちまってた。
   最後に何か言おうとしてたのにな。
   本当は、ゆっくり聞いてやりたかったよ。
   約束破るし、コレットを守ってやれねぇし、ホント散々。
   契約も切れたってことは、何もかもとお別れってことで。
   コレットとも、ノエルとも・・・・・この世界とも。」

ノエル「・・・・・マナ。」

マナ「ん?って、ノエルまさか、今の俺が見えるのか?」

ノエル「見えるよ。だって、マナはそこにいるじゃん。」

マナ「!」

ロザリー「ノエルも適合者?だったら、彼を再契約させるわけには、っ!?」

ジェラール「ロザリー!マージ・ウェイクを続けすぎだ。一度解除しよう。」

ロザリー「りょう、かい・・・」

ノエル「コレットね、さっき、マナに向かって、言ってたんだよ。」

マナ「・・・・・なんつってた?」

ノエル「・・・『生きろ』。」

マナ「!?」

ノエル「『マナ。お前は、生きろ。』そう言ってたよ。」

マナ「・・・・・・そうか。」

ノエル「ねぇ、マナには力があるんだよね?あいつらを、倒せるだけの力が。」

マナ「ノエル?」

ノエル「もう少し、もう少しだったんだ。コレットの夢が叶うまで、もう少しで・・・!」

マナM「ノエルが零した涙から、いろんな感情が読み取れた。
   コレットを失った悲しみ、コレットの夢を叶えられない悔しさ、己の無力さ。
   なんとなく、ノエルがどうしたいかはわかってた。
   それを止めようとしなかったのは、俺もそうしたかったから。」

ノエル「僕は、僕はどうなったっていい!コレットの夢を奪った、
   コレットの未来を奪ったあいつらを、殺してよ!!!!!」

マナM「泣き叫ぶ声は、まるで悲鳴だった。
   召喚していた魔楯(まじゅん)に触れ、何もわからないまま契約を済ませたノエル。
   本当にバカだ、このガキは。
   でも、悪くねぇなって、思った。」

ジェラール「ロザリーは休んでいて。あとは片づけておく」

ロザリー「えぇ、お願いします。」

マナ「どうなったっていいんだよな?後悔しても遅ぇぞ?」

ノエル「いいよ、それが僕の願いだから。叶えてよ、マナぁ・・・!」

マナ「・・・・・あぁ、わかった。『マージ・ウェイク』!」

ノエル「っ!?」

マナM「今だからこそぶっちゃけて言える。
   1日に2度もマージ・ウェイクするのは本当にキツかった。
   けど、その時はそれどころじゃなくて、俺もノエルも気持ちは同じだった。」

ジェラール「2度目のマージ・ウェイクか。でも、どれだけ続けられるかな!」

マナ「遠慮はいらねぇ、さっさとやってやる。そぅらあ!」

ジェラール「速いっ・・・!」

マナ「どこ見てやがる!?」

ジェラール「しま、がぁっ!」

マナ「まだ終わりじゃねぇんだよ!はぁあっ!」

ジェラール「がはっ!?」

マナ「どうしたよ?さっきまでの余裕っぷりは。あぁ!?」

ロザリー「何あれ、コレットの時と全然違う・・・・・一体何が・・・・・」


[マージ・ウェイクのノエルは、悲しみのあまり精神崩壊を起こし、放心状態。]

ノエル「僕はどうなったっていい。僕に気を遣うことなく、マナは戦って。」

マナ「あぁ、俺は俺の契約者の言うとおりにする。
   ノエルの身体がボロボロになろうと、てめぇらをぶっ殺す!!!」

ジェラール「マズいね。『不信なる期待 ミラージュ・ラヴァランド』!」

ノエル「これは・・・コレットが、いっぱい・・・・・?」

ロザリー「ジェラールの花は惑わしの香りを放つ。
   見える幻覚は、私たちだけではありません。」

ジェラール「今の契約者には、ちょっと刺激が強すぎたかもね」

マナ「くっ、ノエル!」

ノエル「違う」

ロザリー「え?」

ノエル「違うよ、マナ。これ、コレットじゃない。気持ち悪い。」

ロザリー「幻覚が、見えていない?」

ジェラール「いいや、そのはずは・・・!」

ノエル「マナぁ、気持ち悪いよ、アレ。全部、燃えちゃえばいいのに。」

マナ「OKノエル。燃やしちまうから、ちょっと待ってろ。
   『開け陽(ひ)の花!冷たき楯は退(しりぞ)き かの地に大輪を咲かせん!
    フリュー・デュ・ソレイル!』」

ジェラール「うぐっ、な、なんだ、急に視界が・・・・・」

マナ「黄昏時の太陽は、それはそれは燃えるような光を発する。
   気持ちわりぃ花なんざ、全部燃えちまえ!!!」

ロザリー「ジェラール、回避を!」

ジェラール「ぼ、僕の花が・・・あれだけの数を・・・!?」

マナ「油断したな」

ジェラール「え?ぐあぁっ!?」

ロザリー「ジェラール!」

マナM「太陽に照らされた偽物のコレットが燃えていく。
   偽物なんてどうだっていい、どうせならこいつらも燃えればよかったのに、
   ギリギリで逃げられちまった。」

ジェラール「ううう腕が、僕の、僕の腕がああああああ!!!」

ロザリー「火傷、じゃない・・・焦げて、炭になってる・・・・・!?」

ノエル「あはははは、真っ黒。植物みたい。」

マナ「けど、あれだけじゃ足りないんだろ?」

ノエル「うん。」

ロザリー「あ・・・あ・・・悪魔!」

マナ「あぁ?正義という名を振り回しただけのお前に言われたくはねぇな。」

ジェラール「貴様ァ!『香しき愛の炎!』」

マナ「(食い気味に)『捉えよ氷枷(ひょうか)!ピエッジ・グレイシー!』」

ジェラール「ぅあああああああああああああ!!!」

ノエル「あ~、痛そうだね。」

マナ「キツめの枷を嵌めてやったからな。てか、耳障りだから、アレ、もういいだろ?」

ノエル「うん。もう、聞きたくない。うるさいの、やだ。」

マナ「あぁ。」

ロザリー「ジェラール、ジェラール!」

マナ「ロザリー、お前はやりすぎたんだよ。
   そんでもって、人の話をちゃんと聞くべきだったな。
   ・・・・・絶対に許さねぇ。」

ロザリー「私はっ、私は正義、聖剣の契約者、悪魔なんかに、殺されるはず・・・!?」

マナ「『包め冷華(れいか) 冷たき楯は太陽を喰らい
   かの者に氷蕾(ひょうらい)の棺(ひつぎ)を!
   セルクイユ・ラ・グレイス!』

ロザリー「いや、何、なんで、氷が、いやぁ、いやあああああああああああ!!!!!」

マナM「ジェラールを捉えた氷が、やがてロザリーを巻き込んで巨大化していく。
   全てを飲み込んで、大きな棺と化したその時、
   1つの聖剣が折れる音がした。」



間。



[現在の日本のシュヴァイツァー邸。マナが昼寝をしている。]

ノエル「・・・・・ナ、マナ、マナってば!」

マナ「んぉ、と。ノエルか。」

ノエル「『ノエルか』じゃないよ!まったくもー。何度も呼んでるのにっ!」

マナ「わりぃわりぃ、ついうっかり寝ちまってたわ。」

ノエル「?・・・何か夢でも見てた?」

マナ「え?あぁ、昔の夢だよ。・・・・・ノエルと契約した時の。」

ノエル「!」

マナ「あん時はホント無理させちまったなぁ~って。
   いくら男だからって、慣れてもいねぇのに動き回って。
   おかげでノエルの親父さんにこっぴどく叱られてよぉ、ははは!」

ノエル「そうそう、ロザリーが氷漬けになって発見されたもんだから、
   品評会だって中止になっちゃったしね!」

マナ「ははははは、ホントに、な・・・。」

ノエル「マ~ナ、お菓子食べよう?今日はコレットのレシピで作ったんだよ!」

マナ「え、コレットの?」

ノエル「うん!コレットが書いてた日記に書いてあったんだ♪」

マナ「そう、か。」

ノエル「コレットはね、自分の作るお菓子で、みんなを笑顔にしたかったんだよ。」

マナ「・・・・・アイツらしいな。けど、死んじまったらもう、できねぇじゃねぇか。」

ノエル「だから!僕が代わりにやるの!コレットができなかったこと!」

マナ「!?」

ノエル「お菓子をい~っぱい作るのも、可愛いお洋服着るのも、いっぱい遊ぶのも!
   コレットが出来なかった分、するはずだった分、僕がするの!
   それが・・・・・僕たちの、平和でしょ?」


[マナが、コレットがかつて言っていた言葉を思い出す。]

コレット「パンがなければ、お菓子を食べればいい。
   空腹を満たすものがパンである必要なんてどこにもない。
   それに、お菓子を食べるのは大人も子供も一緒で、みんな笑ってくれる。
   美味しいお菓子を食べている時は、揃って平和なんだ。
   私は、そんな一握りの平和が欲しい。
   パティシエになって、自分のお店を開いて、みんなを平和にするんだ!」

マナM「『平和な世界。それを求めて、俺はこの世界にやってきた。
   それがどうしてか、俺は世界を侵略する側に所属しているとか言われて、
   襲われて、戦って、何人も傷つけて、倒して、失って。
   そうだ、平和だ。
   俺もノエルも、そしてコレットも、望んでいたのは、ただ1つ。
   今守りたいのは、ノエルと俺の平和。
   気が付きゃ当たり前のようになっていて、忘れかけてた。
   ・・・・・お前が手に入れたかったもの、俺は守るよ、コレット。」



To be continued.
		



こちらの台本は、コンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちらへ


   
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